センタースタビライザー
昔々、木製ワンピースボウの時代に弓を安定させ、発射時に動きを止めようと、弓本体に「ツノ」のような形状を取り込みました。その後、ツノと併せて「オモリ」を取り付けるようになります。この時はまだ「棒」の先に付いたオモリは発明されていませんが、これらはすべて「スタビライザー」(安定装置)と呼ばれました。
現在では棒のスタビライザーはロッドスタビライザーと呼ばれ、オモリだけのウエイトとは区別されることが一般的です。そこでこのようなロッドスタビライザーがいつから登場したかというと、1965年ヴェステロース世界選手権のころから、数えるほどの選手が使っています。
この大会で女子個人15位だったのが、アメリカのビクトリア・クックです。彼女は1961年オスロ世界選手権で個人7位。1963年ヘルシンキ世界選手権では個人優勝。1967年アメルスフォールト世界選手権14位。そして1971年ヨーク世界選手権8位の時の彼女がこれです。
彼女はずっと Black Widow の弓を愛用し、ウィルソン兄弟は彼女や彼女のコーチでもあったアレン・ミュラーのために特別の弓を作りました。1971年は Black Widow ワンピースボウ最後の大会であり、次回グルノーブル世界選手権では、最初で最後のテイクダウンボウをデビューさせます。Black Widow は、Hoyt、Wing、Bearなどと並ぶ最高のブランドであり、レコードホルダーです。
ロッドが弓の中心、矢の近くに取り付けられている理由は、振動や不良振動は根元から解消するのがベストだからです。ロッドが曲げてあるのは、サイトの視線や矢の弾道の邪魔にならないためです。しかし、何よりもアーチャーに分かりやすい効果は「キックバック」です。グリップからセンターロッドが離れれば、発射時に弓が跳ね上がることは知っているはずです。それも離れるほど、真っ直ぐには跳ね上がりません。エイミング時の振動だけでなく、発射時の的中精度が低下します。
なぜこのグッドアイデア、当たり前のことをメーカーは具現化しないのでしょうか?
あなたの弓のセンタースタビライザーの位置を見てください。ハンドルに付いている黒いグリップより離れているはずです。多分はるか下にセンターロッドを取り付けることになっています。なぜそんな離れたところにスタビライザーを取り付けるのか? 木製ワンピースボウの頃から、メーカーはグリップの近くに穴を開けることを恐れていました。ハンドルが折れることを警戒したのです。それはハンドルが金属に変わってからは、なおさらのことでした。性能よりクレーム回避を優先したのです。
ロッドを3度下に向けるのはヤマハの特許でした。では、50年前のBlack Widow のこのアイデアを、あなたはどう思いますか。
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