クラス分け
助手席から降りてきた小田凱人は、車いすに頼らず杖を片手に歩き出す。左足には人工関節が入っており、長い距離の歩行は難しいというが、足取りは軽やかだ。歩行時にそれなりの不自由さは確認できるが、誰の手も借りずに階段を上って2階にあるメイクルームに向かった時には驚いた。「筋力の低下を防ぐためにも、普段は立って生活するようにしています」と、本人はリハビリを理由にあげるが、通底しているのはカッコいい自分でありたいという想い。とにかく、見え方、見られ方を強く意識している(ように見える)。
「GQに出たいということはマネージャーにも相談していたんです。動画の『10 Essentials』はいつも見ていて、10のアイテムはどれを紹介するか、イメトレはできています(笑)」
「無理をさせないように」と、どうしても遠慮がちになってしまう撮影スタッフに対して、自ら立ち方を提案する場面もあった。車いすにもたれかかるように佇む構図は、彼のアイデアだ。
アーチェリー競技では、障害の種類・程度によって3つのクラスに分けられています。
・W1クラス(車いす使用の四肢麻痺(頸髄損傷)など)
・W2クラス(車いす使用の対麻痺(胸・腰髄損傷)など)
・STクラス(立位もしくは、スツールに座って競技する)。
競技種目は、「リカーブオープン」「コンパウンドオープン」「W1オープン」の3つで、障害の程度が重いW1を除いて、障害によるクラスではなく使用する弓によって種目が分けられています。
(公益社団法人 東京都障害者スポーツ協会)
ベッドの端に座る姿勢を「端座位」といいます。手を付かず、背もたれもなく、何にも触れずに座ることです。ところが「頚髄損傷」の方は、柳の枝のように崩れさります。「脊髄損傷」はかろうじて座れても、指一本で押されてバランスが崩れれば、倒れてしまいます。頚損も脊損も手を使わずに起き上がることはできません。
床にまっずぐ上を向いて寝た状態を、仰臥位といいます。ここから、頚損も脊損も肘をつかず、手を使わずに起き上がることはできません。
体幹を効かすには、胴体と脚がつながっていないとできないのです。それをつなぐ唯一の筋肉が「チョウヨウキン」です。
頚損も脊損もほとんどの場合、腸腰筋が使えません。切れていると考えてください。だから起き上がることも、脚を上げることも、踏ん張ることも、歩くこともできないのです。脊損で端座位で座れるのは、かろうじて残った腹筋や背筋でバランスを取って、寄りかかっているだけです。胴体と脚はつながっていません。
もし、端座位で背もたれも肘置きもない状態で弓を射つとすれば、それは不可能です。脚が動けば別ですが。
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