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レスト

言葉の通り、その上で矢が休みます。そこに求められるのは、安定性と正確性です。レストは発射台、単に安定と正確さだけなら昔あったように、クギが1本ウインドウに打ち付けてあっても、歯ブラシの先を切って取り付けてあっても、矢が毎回同じ位置にしっかりと乗っていれば問題はないはずです。ところが、それだけですまなくなったのは、鳥羽根がプラスチック製のハードベインに進化したことが最大の原因でした。ハネがレスト部分を通過する時、レストやウインドウに当たりトラブルが起こり、矢飛びや方向性に悪影響を及ぼすようになったのです。そして近年、いくらソフトベインやフィルムベインが使われたとしてもカーボンアローの使用はレストでのトラブルを増加させ、的中性への影響を致命的なものにしました。
トラブル増加の原因はカーボンアローの特性として、アーチャーズパラドックスからの復元の際のストロークの短さと幅の狭さがあります。矢がレストのギリギリのところを通過していくようになったのです。そして矢の軽さも影響しています。
そこで、いくらウインドウ部分の形状を工夫し、レストを遠ざけても、プランジャーチップとレストのツメはなくすことはできません。となれば、チップはともかくとして、レストのツメにおいては何らかの性能を求める必要があります。

そこで現在のレストを見ると、「プラスチックレスト」と「金属レスト」に大別できます。ところが昔は競技用においてもプラスチックレストがほとんどを占めていたのですが、近年は競技用は金属レスト、練習初心者用はプラスチックレストになってしまいました。
理由は、「NCハンドル」が主流になったからです。このハンドルはアルミの塊をコンピュータ制御された切削マシンで削るのですが、これによってウインドウの深さを昔より深くすることができ、メーカーもレスト部分でのトラブル回避のために、ハンドルの「アロークリアランス」を深く、広くとるようになったのです。
その結果、レストのツメを長くする必要が生じますが、物理的に長いツメはプラスチックでは曲がってしまいます。そのため、金属レストが使われるようになったのです。

ではどんなレストが良いのか? それを考えるうえで、プラスチックレストと金属レストを比較して考えてみましょう。

       プラスチックレスト  金属レスト
1. ツメの長さ    △        ◎
2. 価格       〇        △
3. 扱いやすさ    ◎        △
4. 潰れやすさ    〇        △        
5. 長持ち度     〇        ◎
6. 再使用      △        ◎
7. テンション    〇        ◎
8. 調整性      △        〇

どうでしょうか。現実問題としての「1.ツメの長さ」から、「2.価格」の高さはあきらめて金属レストを選択するアーチャーが多いでしょうが、本当にそれだけの価格に対してのメリットや性能を、あなたのレストは有しているでしょうか?

現在の金属レストを見ると、ほとんどがマグネット(磁石)での可動方式を採用しています。「7.テンション」はツメの可動の硬さを指していますが、非常に小さい圧でツメが折りたたまれ、雨などの状況でもそれは変わりません。これはレストとして、最大限評価できることで非常に重要です。
ではそれ以外に金属レストにメリットがあるのかですが、多くのアーチャーは「8.調整性」を挙げるでしょう。ツメの角度を変えることで、シャフトから出た不要な部分をなくせる。そしてツメの上下も動かすことでシャフトの中心点をプランジャーチップの真ん中に合わせられる、という個々のアーチャーにあったチューニングです。
それ以外にはプラスチックレストのように、擦り減る「5.長持ち度」や、両面テープを替えての「6.再使用」可は金属レストのメリットです。

ARCO Spiga2 Rest

そこで、ここからは54年アーチェリーをやっていて、いろいろなレストを数えられないくらい使ってきた経験からの、個人的感想です。
すでに経験しているアーチャーもいるでしょうが、どんな高価な、あるいは安い金属レストであったとしても、ツメの調整(固定)のためにネジが使われている金属レストなら、絶対に使いません。あんな小さな1ミリにも満たないイモネジに、自分の努力やシューティングを委ねるほど自信はありません。実際、試合でネジが緩むことで勝利をなくした経験もあります。練習でも何度か起こりました。レストに求められるのは「安定」と「正確」です。それは一度得られれば、頻繁に調整するものでもなく、ツメがすり減るまで変更することはないかもしれません。それに「4.潰れやすさ」です。射たなくても、持ち運び時にツメをひっかければ終わりです。

そこで近年長く使っているのが、写真のレストです。レストに求める性能は、「質実剛健」です。どれほどの振動とシャフトがそこを通り抜けているかを考えれば、分かるはずです。最初に一度だけシャフトをレストに乗せて、不要に長いツメの先をペンチで切り落とします。そしてシャフトが真ん中に来るように、ほんの少しツメを曲げてやることもあります。もし失敗しても¥1500もしない、壊れることのない、いつも安心して気にすることなく使える金属レストです。

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