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「原点を忘れないために」

このリムを知っているアーチャーは、少ないでしょう。というより、もう忘れてしまったでしょう。
PRO Select の「YK2002」というモデルです。2002年に作りました。

ヤマハ以外のヤマハにだけ装着できるリムです。

 YKはヤマハ-カメイ、そして2002年を表しています。この年は、ヤマハがアーチェリーの世界から完全撤退した年で、それを忘れないために作ったリムです。あれから22年が過ぎ、日本のアーチェリーも変わってしまいました。日本に弓を作るメーカーがなくなっただけではありません。ヤマハが消えたことで、ヤマハ と Hoyt が築き上げてきたスタンダードもプライドも、一気に崩れ去ったのです。今では、崇高な思いや精緻な技術は見当たりません。
例えば、このリムがそうですが、当時はまだハンドルとリムには、「互換性」という言葉はありませんでした。ヤマハのハンドルに、他のメーカーのリムが付くことはなかったのです。ところが今では、HOYTのハンドルに他社のリムが取り付けられることは、当たり前です。そんな当たり前にメーカーの論理や性能、理想を見出すことはできません。だからこそ、ヤマハのハンドルに取り付けられる、ヤマハにしか取り付けられないリムを作り、「日本のアーチェリーの原点を忘れないために」と記したのです。

 もう一つ、2000年に作ったリムがあります。当時はまだ、「アマチュアリズム」という言葉が厳然と存在した時代でした。そんな時に、リムに KAMEI という名前があることで、全ア連は亀井をプロとみなし「ヤマハカップアーチェリー大会」への参加権を剥奪してきたのです。それに対し、調停を求める申し立てを起こした時のリムです。

このリムには名前以外に、「日本人が日本の弓で世界の頂点を目指す。この日本のアーチェリーの原点に立ち、アーチェリーを愛するすべての人に贈る。」と書いています。どちらのリムも、日本語でメッセージを書きたくて作ったリムです。

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