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スイカとメロンと手紙(まよなかめがや#18)

自分にできないことは
自分にもできるようになりたいと思う。

人からしてもらって嬉しいことは
自分からもしてあげたいと思う。

ずいぶんと昔に付き合っていた彼女と
クリスマスには毎年レストランに
スペシャルディナーを食べに行ったことを
ふと思い出す。

毎年というくらいだから
それなりの歳月を彼女と過ごしたのは
お察しのとおりである。

2人とも若かったから
ぼくは背伸びをしていたんだと思う。
カッコつけてクリスマスの
大人ばっかりのレストランに
不相応・ふそうおう
な2人がいるなと
周りの大人は思ったに違いない。

喜んでくれたらいいなを
広げた両手ギリギリ届くところで
表現したかったんだと思う。

ふとしたときに
彼女が両親の結婚記念日に
ディナーをプレゼントしたことを
話してくれた。

ぼくと行ったことのある
レストランに彼女が予約を入れ
事前に支払いまで済ませたらしかった。

そのとき彼女は
ぼくがこういう気持ちで予約をして
こういう緊張感で吐きそうになりながら
お金を払っていたということに
気づいたと当時話していた。

お金の支払いで吐きそうになったことは
手が震えてたくらいが
正確なところだったに違いない。


毎年親戚からスイカが届く。
遠くにいる大好きな人からは
今年メロンが届いた。

そして祖母からは手紙が届いた。


一人暮らしの祖母は
スイカとメロンを食べるのが大変だろう。

返事の手紙を書こうと思う。
新しく買ったレターセットを使って。


受け取る感情の持ち主が変われば
余計でおせっかいで身勝手だと
感じられるかもしれない。


それでもしてもらって嬉しいことは
自分もしたいと思う。

きっと想っていることは
届けたいその人に届くはずだから。

かめがや ひろしです。いつも読んでいただきありがとうございます。いただいたサポートは、インプットのための小説やうどん、noteを書くときのコーヒーと甘いものにたいせつに使わせていただきます。