彼女はすでにブラを外していた。(超短編小説#22)
時計を外して
顔を上げる。
そのまま90度の角度に
左向け左をすると
彼女はすでにブラを外していた。
「縛られるの好きじゃないんだ。」
そう口にした彼女の左手には
外したばかりの
黒いブラジャーが握られていた。
狩人に捕らえられた動物のように
だらりと精気を失っている
黒いブラ。
薄暗くて狭いその空間で
二人が居直るときにだけ
音が空気に触れる。
その革張りソファーの鈍い音が
二人がここにいることを
唯一証明している。
彼女の唇がまたぼくの唇に触れる。
その