夏の始まり。(超短編小説#3)
体を起こすとすでに開け放たれた窓から、夏の蒸し暑い香りが入りこんでいた。
隣に寝ていた陽子の姿はなく、かけていたタオルケットも彼女がいたことを忘れさせるくらい、ベッドに力なく寝そべっていた。
昨日は花火を観に行った。
海上から観える花火を近くで観るために、開放された港にシートを広げて花火が打ち上がるのを待った。
風がなかったせいで、花火は曇った空に隠され、どんっ!という大きな音とは裏腹に赤や青に光る空しか観えなかった。
目の前の浴衣を着た若者たちは、始まって10分も