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シンデレラのあなたにガラスの靴を履かせたいぼく #超短編小説

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かめがやひろしの超短編小説マガジンです。
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2016年7月の記事一覧

夏の始まり。(超短編小説#3)

体を起こすとすでに開け放たれた窓から、夏の蒸し暑い香りが入りこんでいた。 隣に寝ていた陽子の姿はなく、かけていたタオルケットも彼女がいたことを忘れさせるくらい、ベッドに力なく寝そべっていた。 昨日は花火を観に行った。 海上から観える花火を近くで観るために、開放された港にシートを広げて花火が打ち上がるのを待った。 風がなかったせいで、花火は曇った空に隠され、どんっ!という大きな音とは裏腹に赤や青に光る空しか観えなかった。 目の前の浴衣を着た若者たちは、始まって10分も

ティヤーティヤーティヤー。(超短編小説#2)

フラれた。 突然だった。一昨日からLINEの返事がなくて、今日のお昼にやっと来たと思ってから、すでに今10時間が経っていた。 たったの10時間、時計の秒針が数字の1から12の間を600周しただけなのに、世界がガラリと変わってしまった。 秒針が600周もすれば世界は変わるかもしれない。 いや、きっと世界は変わっていない。変わったのは自分の世界だけだ。 智は揺られる東急東横線の中で、見慣れた車内を異国のローカル線のように感じていた。 『なにがいけなかったのだろう。』