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ここでは赤蜻蛉は 飛べない ずっと一人の誰かどこ 刹那的秋の夕暮れと 代わりに人々の群れ 空に光の乱反射 地にはアートが ひしめきタップダンス 朝日が僕らの恋人だ 冬になると イルミネーション 生き物のように 静かに泣いて三角座り 携帯電話が星に煌めく
天使のような 青いシャツを まっすぐな物干し竿で 光ごと差した 感触をしっかり 確かめたかったから けど光はバブル崩壊 のように迷子と化した ぱたぱたと ぱたぱたと 廃線の駅のレールの 先の終わりなき終点で 青いシャツが はためいている
トマトが嫌いな人に トマトを百個贈らせて いただきます ありがとうございます え?違うって?問題は そこじゃない? たしかにそうなのかも しれない けれど僕はトマトを 嫌いな人に百個 贈りたいだけなん だけど違うのかな トマトってそんなに 危ないものだったの?
パンにソーセージを 挟んで食べるつもりが ケチャップがない マスタードがない 怒りの炎が朝の暁 仕方がないそのままで 食べるむしろこのまま の方が素の味でいいの かもしれない 食べたけどなんとも 言えず悲しさが光を 帯びた食器を片付ける ブラックホール 発動せよ
まな板で玉ねぎを 切る音 夜中に アコースティックを 鳴らす音 満月に映える花瓶と 虫の栄華 木の鉛筆の 粉が一冊のノートに 降り落ちる時 世界を奏でているのは 震え渡る旋律 秋の山のアンサンブル オルゴールのように
墓参りに行く道は 険しく果てしない ように思われた 杖を地面に叩き付ける 音のような 鈴のような 登っていくその姿を 子どもはどんな眼で 見つめていたのか 朝日に洗濯物が 洗われるように 干されるように その人は深くこうべを 垂れていた