<練習問題⑦>視点(POV)
問二:遠隔型の語り手
遠隔型の語り手、〈壁にとまったハエ〉のPOVを用いて、同じ物語(※1)を綴ること。(四〇〇〜七〇〇字)
問三:傍観の語り手
元のものに、そこにいながら関係者ではない、単なる傍観者・見物人になる登場人物がいない場合は、ここでそうした登場人物を追加してもいい。その人物の声で、一人称か三人称を用い、同じ物語(※1)を綴ること。(四〇〇〜七〇〇字)
ここまでに使っていた短い情景・状況・物語がもう出涸らしになってしまったというなら、次の練習問題に進むにあたって、同じ方向性で別のものをこしらえてもいい。だが元々のものを掘り下げて、まだほかの声で語れる余地がありそうなら、そのまま最後まで語り続けよう。そうすれば、練習問題に取り組む際の利便性や教育効果がいちばん高くなる。
問2は完全中立の知性あるハエのPOVで描く、という登場人物の内面に触れられない縛りがあり、読んだことも書いた経験もないような文章を書くもので最初は戸惑っていたが、映像作品における『セリフなし、役者の演技とカメラワーク、演出のみで物語る』シーンが大好きなので、そういったシーンを想定し、さらにカップリング語りをする際のミームでよくある『カプのいる空間の床や壁になって二人を観察したい』を徹底することで出力することができた。特に登場人物らの名前の出し方は会心の出来である。
問3は傍観者の視点となる。前の問で記録係が生まれたので、名もなき記録係ちゃんにご登場願った。高湿度感情百合が楽しすぎて筆が乗ってしまい文字数を実はオーバーしている。問3は傍観者からの視点でこれまでの物語を振り返ることが出来るので、比較的設定語りやシチュエーションを披露しやすい場となりやすい。そのため記録係ちゃんには三角関係の一端を担ってもらい、物語へ深みを与える役どころが与えられた。弓道のアクションを見せるパートでもあり、視点のフォーカスの差異を出すための役どころでもある。
講評覚書
問2
・中立の視点としてコントロールしきれている。
・名前の出し方がスムーズ、工夫が感じられる、アプローチの仕方で勝っている→このままでも良いが初回以降は苗字表記でも良かったのではないか?→床や壁に徹したかった。
・同時に動かないのでフォーカスの切り替えがわかりやすい。→創作に混ぜた嘘。実際の競射は順番に射る必要性はないです。
・知識はないが状況把握に優れているハエ、内面に立ち入らず副詞によって感情のコントロールがなされている。
問3
・新たな人物の登場によりドラマが深まる、三角関係の構図の強さ、人称の選び方もマッチしている。視点の落差が面白い。
・感情が重くて良い。
・呼吸、動作、身体等への言及、百合描写とアクション描写に連動、手や姿勢、所作に視点が向く『百合のトポス』
・弓道という前提上、登場人物が同じ動きをして、その動きを描写することで物語が進行していく。片方を描きつつ片方を描かなくても成立するというテクニックを感じられた。描かなくてもいい必然性。
百合に挟まらないハエ。
床や壁やハエになって百合を観察したい。