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NEW EDUCATION EXPO2024参加記(2)

1)我が国の教育改革の現状と課題~PISA2022調査結果等を踏まえ~
東京大学教授/慶應義塾大学SFC特任教授 鈴木寛氏


毎年、鈴木寛先生のご講演を聞いておりますが、国際的にみて日本は15歳までの科学・数学の能力が優れているという話を聴いて「へえ、そうなんだ」と感銘を受けたものでした。
今回、OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2022の最新結果を聞くことができましたが、日本は科学、数学が1位で、前回下がった読解力もまた上がったとのこと。我が国の15歳までの数学・科学が優れていることは、もっと知られても良いことだと思います。

講演では、今後の課題がいくつか挙げられていました。
例えば、受験合格で燃え尽きないような、学びに対する内発的動機づけの重要さ。スピードが遅くても出来ている子は多いので、あまり急かさず、無用な苦手意識を持たせないことの重要性。
また、日本の子には、家族からのサポート感の弱さや自律学修への自信のなさがみられたとのこと。
ソーシャルサポートに関しては、小学生や中学生を夕食の時間には帰さないといけないということばが印象に残ります。

勉強はちゃんとできているのに、学校生活の不安の多い昨今。不登校の増加にも触れ、公正な個別最適化の学習法についても話がありました。20世紀の教育は教科書主体でしたが、パンデミックをきっかけにオーディオブックや動画などさまざまな教材が出ましたので、視覚処理が弱い子にはそのような教材を使うことのメリットが語られました。
動画、通信、オンライン・・・偏見なく、その子なりの学びを応援できたら、いいですね。

鈴木先生の講演を聞くたびに、教育が本当に変わったのだということを実感いたします。

2)大学のICTを活用した新しい取組~学生の多様化を踏まえた学修環境やサービスの改善~
青山学院大学教育人間学部長、教授 野末俊比古氏、ほか


大学でのICTを用いた新しい取組について、図書館の活用という話題を軸に、新しい教室の例を知ることが出来ました。

学生の大きな目標は「学びの達成」であり、その観点から、どんなリソースを、どのような場所に配置するか・・・
やはり、場づくり・教室づくりの大事さを実感する講演で、最近、大きな教室空間が増えたという話も納得です。

デジタルネイティブの今の学生はYouTubeで何かの動画を探すとき、検索でなく「おすすめ」で探すということや、学生はネタバレが好き(タイパが良いので)といった情報が、昭和生まれにはとても参考になりました。


3)今後の学びの在り方~変化の激しい時代に何をどう「学ぶ」か~
(公財)東京財団政策研究所 所長 安西祐一郎氏


安西先生のご講演は、学びそのものというよりは、学びの根底にあるものや、学びのその先にあるもの重要性を教えてくれます。

例えば、いま重要視されている「学びの当事者意識」は、自分の学生時代を思い返してみれば、なかなか持ちえない意識でした。かつての、いわゆるマスプロ授業において、学びはとても受け身なものであり、そうして得た知識も試験が終わればすぐに忘れてしまうものでした。のちに、知識というのは社会を理解するうえで重要なものであると気づくのですが・・・。学びには能動性が必要であり、能動性を持つためには大学や講師がそのつもりで工夫する必要があるのでしょう。

社会に開かれた学び、という観点から、技術家庭、体育、芸術などがより浮上してくる可能性があるというお話も興味深かったです。確かに身体を伴う技術の習得はAIには難しいことでもあり、この時代を生きてゆくのに必須のスキルでもあります。

教育に求められることや、教育のあり方の変化を実感した講演でした。

安西先生の本、読んでみようと思います。



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