見出し画像

「解約阻止」という概念のないカスタマーサクセスチームを作りたい

皆さんこんにちは。
ギャプライズ鎌田(@kamatec)です。

2022年5月現在、私はCXO事業部というところでカスタマーサクセスチームのマネージャーをやっています。

カスタマーサクセスマネージャーになる前は、お金を頂いて活用促進するプロフェッショナルサービスを提供するコンサルティング部の部長をしていました。

今はCXO事業部と統合したので部としては存在しないのですが、参考までに当時のインタビューも貼っておきます。

統合したのが2020年の10月だったので、約1年半ほどカスタマーサクセスをやってきたことになるのですが、その中で感じたことと今後どうしていきたいかってのを、今日は書いておこうと思います。

CSはチャーンレート中心の世界

自社の目線から見たカスタマーサクセスの存在価値はチャーンレート(解約率)を下げることにあります。

下記noteでも書かれていますが、SaaSにおけるチャーンレートは成長の上限を決める言っても過言ではありません。

  • 継続率の高いSaaSは良いSaaS

  • 継続率の高いCSは良いCS

基本的にこう考えられているのがカスタマーサクセスの世界だし実際そうだと思います。

僕自身、主にGRR(利用継続率)とNRR(売上維持率)の2つを最重要指標にして、この1年必死に追っていました。

経営的な側面から見てこれらは至極当たり前のことなんですが、実際にカスタマーサクセスの前線に立ってみたとき、この継続率メインの考え方に対して、違和感を持つシーンがありました。

「解約阻止」という言葉に対する違和感

カスタマーサクセスの方であれば一度は聞いたことはある言葉、そしてできれば聞きたくない言葉、それが「解約阻止」ではないでしょうか。

僕自身、この1年半で何度か顧客から解約の意向を頂き、いわゆる「解約阻止」の動きをしたことがあります。

ただこの「解約阻止」という発想が個人的には違和感の塊でした。

さきに書いたカスタマーサクセスの存在意義という観点から見れば解約阻止は当然の行動なのですが、ある顧客の解約阻止に動いた際、実際に顧客の状況だったり市場の変化を聞いたときに

「自分が逆の立場だったら解約するな」

と正直に思ったのです。

そもそも「阻止」という言葉自体にもめちゃくちゃ違和感があります。

阻止という言葉をググってみると

そ‐し【阻止/×沮止】
[名](スル)妨げること。くいとめること。はばむこと。「反対派の入場を—する」

https://www.weblio.jp/content/%E9%98%BB%E6%AD%A2

とあります。

解約率を下げるというのはあくまで自社目線からの価値であって、顧客から見たカスタマーサクセスの意義は「顧客のやりたいことを実現する」ために存在しているわけです。

にも関わらずなぜカスタマーサクセスが顧客のやりたいことを妨げないといけないんでしょうか。

ビジネスとして見るSaaSのいいところは継続率から成長予測を立てやすいところにあるのはわかるのですが、顧客サイドから見たSaaSのいいところって、導入環境に依存せず、すぐにやめたり最新のものを使えるところにあるのではないでしょうか?

要はすべての解約において「阻止」するだけが選択肢ではないんじゃない? ってのが違和感の正体です。

もちろん解約の中にも避けるべき解約はあります。

僕は勝手に「和解」と「解約」の2つに分けて考えていました。

「和解」というのは、会社や市場の状況を踏まえ前に進むために、選択肢の一つとして解約という選択肢をとるケースです。

では「和解」ではない「解約」は何かというと、詰まるところ、「投資対効果を感じない」と一方的に思われた状態と捉えています。

投資対効果を語れないCSは嫌だ

解約時に解約理由を聞けば色々な理由が出てきます。

「予算がない」「担当者が変わって使える人がいない」「使う時間がない」etc..

これってどの理由であってもとどのつまり、「投資対効果がない/少ない」と判断されたってことでしかないのかなと考えています。

人もカネも時間も無限にある会社なんて存在しません。どこかに投資すればその分何かを削るという原理が基本的には発生します。

だからこそ投資対効果が出てないのであれば解約になるし、在庫を抱えずに解約できるのはSaaSのフェアで良いところです。

僕が避けたい解約というのは、投資対効果に対する会話が一切されないままに、解約になってしまうケースです。

「投資対効果に関する会話をする」なんて出てるか出てないか聞くだけでしょ?と思う方もいるかもしれません。

しかしこれが実際言うは易し、行うは難しで、実際カスタマーサクセス活動をしてみると、投資対効果を定義すること自体がかなり難易度の高いことだと実感しました。

ただ結局最後に求められる所は投資対効果であるというのも、1年半CSをやってみて体感した結果です。

僕らのチームも完璧に顧客とROIを定義出来ているかというとまだまだなんですが、ここは逃げずに向き合っていきたいと考えています。

僕が考える「解約阻止」をしないというのも、ただ解約と言われたら諦めるという話しではありません。

このROIに関する議論を顧客とした上で、両者納得し解約という選択肢になるのであれば、それ以上「解約阻止」に時間を使わないというのが、僕が考える「解約阻止という概念のないカスタマーサクセス」の世界感です。

投資対効果で語る。その上で解約を結果ではなく選択肢の一つとして考える

解約というものと自分なりに真剣に向き合って思ったことなんですが

解約は結果ではなく選択肢ではないか

ということです。そもそもツールを解約したからって事業の課題がなくなるわけじゃありません。

タイミングによって事業課題も解決方法も変わってきます。

例えば、ピーチ・ジョンさんは過去に一度解約になりましたが、再導入を頂いています。

ほかにもここ1年で以前解約になった後に、再導入をして頂いたお客様が何社さんかいらっしゃるのですが、いずれも市場の変化や組織の成熟度に合わせてお声がけをいただきました。

いずれも解約=終了と捉えていたら、生まれていなかったお取引かもしれません。

顧客側の課題もその都度変わりますし、我々が提供しているサービスも変わっています。

仮に一度解約になったとしても、また必要なタイミングお声がけいただけるように、ROIで顧客と語り、最新の情報を届け続けるカスタマーサクセス。

理想論かもしれませんが、今目指しているのはそんなカスタマーサクセスのあり方です。

一つの市場に対して複数のソリューションを扱うチャレンジ

このようなカスタマーサクセス像を目指す上で、変化の激しい市場に対して単一のソリューションを提供しているだけでは、日々変わる顧客ニーズに対応出来ないという機会が増えました。

僕らはあくまで特定のツールベンダーではなく、最先端の海外ソリューションを日本で提供・定着支援まで行う総合商社のような立ち位置です。

そんな立場を踏まえて、今までとはちょっと違う、下記のような切り口の取り組みも始めました。

今まで僕らが提供しているABテストツールは、「Optimizely」というツールだけでした。

過去様々なツールを試した上で最も良かったツールがOptimizelyだったのですが、最近では後発で登場したクオリティの高いツールや無料で使えるツールなど企業のシチュエーションや環境によって最適なものが違うというケースが増えてきました。

そこで我々は主要ABテストツール全てのパートナーとなり、ベストなものを提案・定着支援するという方法で横断的なカスタマーサクセスを提供し始めました。

まだ初めて半年程度ではありますが、手応えとして、今まで以上に必要なモノを必要な人に提供できている感覚はあります。

一方で複数ツールを横断的に扱うカスタマーサクセスは、常に新しい知識を求めることになりますし、ツール毎に微妙に仕様も違うため仕組み化が難しいという課題も出てきています。

まあどうせやるなら、うちだからこそできるカスタマーサクセスの形、そして「解約阻止という概念のない世界」を目指してもうちょっと踏ん張ってみようかと思います。

ということでちょっとでも興味を持った方がいればぜひ一緒に目指しましょう。

それではまた次回。
ギャプライズ鎌田(@kamatec)がお届けしました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?