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天気の子|感想

ストーリー

全世界待望の新海誠監督最新作『天気の子』、監督みずから執筆した原作小説

高校1年の夏、帆高(ほだか)は離島から家出し、東京にやってきた。連日降り続ける雨の中、雑踏ひしめく都会の片隅で、帆高は不思議な能力を持つ少女・陽菜(ひな)に出会う。「ねぇ、今から晴れるよ」。それは祈るだけで、空を晴れに出来る力だった――。天候の調和が狂っていく時代に、運命に翻弄される少年と少女が自らの生き方を「選択」する物語。長編アニメーション映画『天気の子』の、新海誠監督自身が執筆した原作小説。

✨感想✨

「君の名は」は結構好きだったけど、正直「天気」なんて身近すぎて興味もないテーマに、あんまり食指が動かない。CMはめっちゃやってるけどタイアップが多すぎて商業臭い。
そういう方も多いと思うし、事実自分もそうだった。

信頼する人に、この小説版を勧められたので買ってみたら、耐え切れず映画もすぐに見に行ってしまった。

これはよくある映画ノベライズ作品ではない。
原作小説でもない。
相互補完的な不思議な関係だと思った。

本を読んでから見ると、映画の演出にはっとさせられる。例えば主人公・帆高がなぜ家出をしたのかがフェルメールの絵画のように寓意されている。これは小説で言葉で説明されるとシラケるようなことを画面から発見する喜びがあった。

逆に先に映画を見た人は、小説の方では個々人の背景や一人称の来歴と思考の機微が説明してもらえる。例えば夏美(登場人物)がどんな環境で育って、どんな状況にいるかそれを知ることで映画の中の彼女の行動や言動を納得感を持って追憶できるはずだ。

誰もが今、あるいはかつて、帆高のように、不自然で、欺瞞に満ちた曇った大人達が作った息苦しい家庭・学校・社会から抜け出すために足掻いたことがことがあると思う。
だが、「大人になる」、この作品のテーマでもあることだが、と換気扇のフィルターのように、たまにチェックしないと自分のココロの汚れに気づくなってしまう。
この作品は、都会の煤にまみれた自分には恵みの雨のようだった。

反抗期の少年が家出して、ボーイミーツガールして世界の形を変える? しょうもないジュブナイル小説だという人もいると思う。
だけど、この物語で心を動かされて涙できる大人になりきれない自分に安堵に似た感情も感じることができるはず。
晴れ間の見えない今の東京と作中の世界観も重なり、今このタイミングでこの作品に出会えて良かった。

映画制作の激務の傍らで小説という形でも作品を届けてくれた新海さんと、この珍しい映画と小説という相補的な作品形態を企画してくれた版元さんに心から感謝申し上げます。


君の名は。が好きで、映画館に5回観に行きました。天気の子は、映画を観てからこの小説を読んでます。

小説は映画と違ってまた良いですね。心理描写が好きです。
あの時何故、須賀さんは泣いていたのか?私には本当の理由がわかりませんでしたが、小説でわかりました。帆高を心配していたり、陽菜を哀れんでいた、んじゃなかったんですね。
須賀さんは、本当に好きなキャラクターです。より好きになりました。

小説のほうが、何故か私には台詞が脳内にガツンと飛び込んできました。文字で読むと、改めて強い台詞が多い映画だなと。
名言が多い映画だと思いました。

天気の子は、世界のための自己犠牲を選ばずに、守りたい人のために世界を犠牲にした、そんなお話です。
日本人には、脈々と受け継がれる「自己犠牲の精神」というのがあります。その鉄則から外れたこの作品は、日本人にどう受け入れられるのか?きっと、けしかん!なんて、言葉も聞こえて来ると思います。

しかし。この先の日本は。
少子高齢化、そして人口の減少。今までとは全く違う世界が紡がれていくと想像しています。

そして、ここが恐らく転換点です。
日本人の奥底にある「自己犠牲の精神」。これから、解き放たれる時が来たのかもしれないと、私は思わされました。それは、この小説の「あとがき」を読んでる時でした。

言われてみればそう、私は何があっても我慢して、自己を犠牲にして、うまくやってきました。
まるでそうしろと社会が言うようです。
しかし、それはこの先の未来では違うのでは?と。そう思ってたりもしました。
そこでこの作品です。ワガママで自分勝手な、彼らの気持ちが、清々しいまでのストレートさで、胸の中に飛び込んできた気がします。

映画を観て、これを読んだあとも「いや間違ってる、世界を犠牲にしちゃダメだって」なんて、1ミリも思いませんでした。羨ましかった。帆高が羨ましかった。
私も少しだけ、ほんの少しだけで良いので、自己犠牲の精神から解放されてみたい。そんな人と出会ってみたいと思いました。

さて、しかし残念ながら、この小説でも陽菜さんの過去は分からずじまいです。アナザーストーリーの小説を望みます!!頼むよ新海さん。

本の詳細はこちら↓






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