私はマグロだと思っていた話
マグロは死ぬまで止まることがない。
寝ている時も泳ぎ続けるマグロ。
マグロは止まると死んでしまう。
私も止まったらジ・エンド。
そう勘違いしていた。
でも、気が付いた。
私にはマグロほどの体力がなかったのだ。
マグロほど、身体を動かし続ける筋力もない。
寝る時は身体を止めて休ませないと回復できない。
私はマグロにはなれない体質だった。
私はマグロじゃない。
この事実を受け入れるのには時間がかかった。
私自身、マグロだと思い込んでいることにすら気付いていなかったのだから当然だ。
無意識とはなんと恐ろしいものだろう。
しかし、マグロになれないと気がついた瞬間、
私は安堵した。
なぜなら、
私は止まっても死なないことが分かったからだ。
立ち止まって休むことが必要であると肯定された。
そんな気分だった。
マグロは私の憧れの存在。
だから私はマグロを食べる。