見出し画像

13歳の壁を乗り越えろ 第8話

【第8話】

 スペシャル企画のロケ一週間前。
 レギュラー放送の収録後、テレビ局のカフェテリアでミライさんを交えて打ち合わせが行われた。トモちゃんは別件の仕事があって欠席だ。
 カフェテリアは、レジで注文して先に支払いを済ませるタイプ。僕はそれとなく夢叶ちゃんの後ろに並んだ。
 先頭の小池さんが注文を促してくる。
「一緒に払うので、みんな注文しちゃってください」
 夢叶ちゃんがカフェオレを注文したのを聞いて、僕も同じものを頼んだ。
 まただ。またやってしまった。本当はメロンソーダにしたいけど、ついつい背伸びをしてしまう。
 すると、後ろにいたミライさんが「わたしは、コレー!」と無邪気にメニュー表のメロンソーダの写真を指さした。こんなふうに自然体で振る舞えたら、どれほど気がラクか。悪い癖を早く治したい。
 僕らが参加するロケは2日間。原宿と千葉県の船橋で行う街頭インタビューだ。
 ただ、2日間で100人を撮るというのはスケジュール的にかなり難しい。たりないぶんは、小池さんが追加で撮影する。カメラを持って一人で取材に出るという。
 テーブルに着くなり、小池さんがロケ台本をみんなに配った。
「撮影自体はシンプルです。中学生に声をかけて恋の悩みを聞きます。で、悩みを抱える彼らがその後どうなるのか。それをミライさんに占ってもらえればと思ってます」
「はーい。スケスケフューチャーしまくりまぁす!」
 小池さんの説明にミライさんが敬礼ポーズで応える。
 それと同時に、まわりのテーブルがザワつきはじめた。僕らのグループに一斉に視線が注がれたのが気配でわかる。芸能人を見慣れているテレビ局の人たちにとっても、オネエ占い師のミライさんは別格のようだ。
「正樹と夢叶ちゃんには、同年代の代表として突っ込んでもらうからヨロシクです。わからないこと、気になったことは、その場でどんどん聞いちゃってください。ただ、くれぐれも背伸びしたコメントはしないように。番組では二人の発言が大事になってくるから、中学生の視点を忘れずに」
 まるで僕への忠告のようだ。「背伸びはしない」心の中で自分に言い聞かせた。
 台本を手にしていた夢叶ちゃんが、小池さんに質問を投げかける。
「どうせならもっとロケに出たいんですけど、ダメですか」
「正直、俺もそうしてほしい。けど」
 言いながら、右手の親指と人差し指で丸を作って「こっちの問題で」と顔をしかめた。こっちとはお金、つまり番組制作費のことだ。
 そう言われると何も言えない。本心では、ギャラ度外視で貢献したいとこだけど、事務所の台所事情を知っている身として、勝手な真似はできない。
 とはいえ、これは僕らの番組だ。なにかしたい。それに、ここで踏ん張らなければ13歳の壁は越えられない。
 スケジュールを説明する小池さんの声を聞き流しながら、僕は頭をフル回転させていた。
 例えば自分だったら、どんな悩みをあげるだろう。簡単だ。目下の悩みは、他でもない子役の壁を乗り越えられるかどうか。じゃあ、その悩みを解消するには、どうしたらいい? 決まっている。一歩を踏み出すしかない。 でもどこに? いっそオネエになってみる? それは極端すぎる。そもそもそんな勇気もないくせに……あ、そうか!
 向かうべき場所が定まっていないから、肝心の一歩が踏み出せないのだ。僕は子役から脱皮して何になりたいんだ? 俳優、それともマルチタレントか。音痴だから歌手は無理だろう。待て待て……そういえば憧れている仕事があったじゃないか。
「キャスターだ」
 思わず口から出てしまう。
 その場にいた全員がキョトンとしていた。
「キャスターって、なに?」
 小池さんにすかさず突っ込まれた。
 アクションを起こすなら今しかない。ちょっとだけ迷って腹をくくった。
「実は僕、いま悩みを抱えているんです」
 そこまで言ったら、あとは絡まった糸がほどけるようにスルスル言葉が出てきた。
「ありがたいことに子役で少し人気が出て、その流れでズバ解をやらせてもらうことになりました。ただ中学生になってから、ハッキリ言って目立った活躍はありません。それで、目の前にある壁を、どう乗り越えたらいいか悩んでるんです」
 悩みをカミングアウトしたところで、それが番組に役立つかどうかはわからない。それでも、言わずにはいられなかった。自分をさらけだすことで、変わりたかった。
 みんな真剣な表情で聞いている。空気も張り詰めてきた。その雰囲気に耐えきれず、僕は下を向いてしまった。
「正樹君、それってもしかして、小学校を卒業した子役の前に立ちはだかる13歳の壁ってやつ?」
 夢叶ちゃんが、僕の顔を覗きこんできた。
 質問に黙って頷き、僕は、夢叶ちゃん、小池さん、トモちゃん、ミライさんを順番に見ながら思いのたけを語った。
「13歳の壁を乗り超えれば、この先も芸能界でやっていけそうな気がするんです。それで、その壁を乗り越えて何をやりたいかって考えたとき、頭に浮かんだのがキャスターなんです。ニュースでもワイドショーでも、キャスターは自分が感じたことを自分の言葉で……」
 パチンと指を弾く音が辺りに響いた。
「その先は言うな!」
 小池さんの声はやたらと大きく、周囲の視線が再び僕らのテーブルに集まった。
「それ、いただき。キャスターをめざして子役から脱皮しようとする正樹が、中学生の悩みを聞いていく。そこでお前の成長を描く。そんな短期間で成長できるかどうかはわからないけど。だから、さっきの意気込みの続きはカメラの前で喋ってもらう」
 驚いた。最後まで説明していないのに、小池さんは僕の気持ちを掬い取ってくれていた。それがなんだか嬉しくもあり、恥ずかしくもあった。
 ミライさんは意に介さずというふうで、夢叶ちゃんも「良かったね」と素っ気ない反応。だけど、帰り際に僕の耳元で囁いた一言は、きっと本音だったに違いない。
「正樹君が壁を越えられたら、あたしも越えられるかも。ゴタゴタした家庭の壁」

 僕が成長できるかどうかを番組で描くため、街頭インタビューに先立ち、僕の日常も撮影することになった。
 自宅の撮影では、父さんと母さんもインタビューを受けることになっている。父さんは最初渋っていたけど、花林社長つまり義理の兄の一言が決めてとなり、引き受けてくれた。「正樹のステップアップだと思って、ここはひとつ頼むよ。うまくいったら、正樹のばあちゃんも草葉の陰で喜ぶから」と。
 逆に母さんのほうはやる気満々、家にカメラが入る2日前に美容院に行ってきたほどだ。

「正樹君の悩みはなんですか?」
「少し先の将来についてです。このまま、子役を続けていけるか、真剣に悩んでいます」
「カット! ダメだろ、それじゃ。表情も喋り方もカタすぎ」
 小池さんが自分で回していたカメラを止める。リラックスできる自分の部屋でのインタビューなのに、どうにもこうにも落ち着かない。
「もっと普通に話して。あと、真剣って言葉、言えば言うほどウソくさく聞こえるから使わないように」
「だったら僕だけじゃなくて、小池さんもいつも通りやって下さいよ」
「それもそうだな。相手がタレントとはいえ、年下に敬語はやっぱり変だよな」
 話し方を変えたら、そこからは自分でも驚くほどスムーズに受け答えができた。
「キャスターになりたい理由は、ふたつあります。ひとつは、前に子役ブームがニュースの特集コーナーで取り上げられたとき、生出演したスタジオで受け答えが上手くできなかったんです。そのとき、メインキャスターが僕の気持ちをちゃんと汲み取って喋ってくれて、カッコよく見えたんです」
「そのキャスターは?」
「権藤キャスターです」
 権藤キャスターは、NHKを退社して民放のニュース番組の顔になった人だ。フリーになって、もうだいぶ経つはず。
 その権藤キャスターのニュース番組は、ズバ解と同じ放送局でやっている。しかし、放送は月曜から金曜の夕方。日曜に収録で局を訪れる僕が、権藤キャスターと顔を合わせる機会はない。
 それ以前に、もし見かけたとしても、自分から話しかけるなんて、おそれ多くてとてもできない。忘れられているかもしれないという不安もある。
「キャスターになりたい、もうひとつの理由は?」
「もうひとつの理由は、もうひとつの理由はですね」
 そこで言い淀んでしまった。察した小池さんが水を向けてくる。
「オウム返しほどつまらないインタビューはないからな。言いにくいこと?」
「僕がこんなこと口にしていいのかなって考えちゃって」
「じゃ、やめとく?」
 そうしてもらえますか……と出かかった言葉を飲み込んだ。いけない。弱気の虫がまた顔を出すところだった。
「よし!」気合いを入れてカメラに向き直る。
「二つ目の理由は、テレビを見ている人たちに情報を正確に伝えたいんです。週刊誌のゴシップ記事みたいにクエスチョンマークなんかつけないで」
 小池さんがカメラのファインダーから目を離して僕を見た。けれど僕の真剣さに気づき、すぐに「続けて」と口だけ動かしファインダーに目を戻す。
「具体的にいうと、週刊誌に書かれたことは間違ってますと言いたいんです」
 根性焼きのマコト君の記事のこと。
「ウソは書いてなかったけど、事実が捻じ曲げられていたんです。一生懸命やったことが、あんなふうに伝えられると悲しくなります。一方的に書いてばっかりで」
 自分でも気づかないうちに、怒りの導火線に火がついてしまったようだ。 そこから、腹に据えかねていたことが堰を切ったように溢れ出てた。
「夢叶ちゃんだって、悲しい思いをしているはずです。ありもしないことを次から次へとネットに書かれて。僕は小学生のときから一緒で知ってるけど、夢叶ちゃんは、いばったり、人を傷つけたりする子じゃありません」
 一気に吐き出したあと、沈黙が続いた。その間、なぜかとても心地よかった。
「オッケー」という小池さんの合図で撮影は終わった。
 階段を途中までおりたところで、リビングから父さんと母さんの言い争いが聞こえてきた。すでに撮影を終えたインタビューのことでもめているようだ。
「もっとハキハキ喋ってよ、父親なんだから」と母さんが声を荒らげている。小さい声で喋っているつもりのようだけど、丸聞こえだ。
 小池さんがカメラを掲げて「撮っとく?」といたずらっぽく目で訴えてきた。それに笑顔で応え、僕はいま部屋を出てきたふうを装い「小池さん帰るよ!」とリビングに向かって大きめの声で叫んだ。

 1日目の街頭インタビューのロケは原宿だった。午前11時からあたりが暗くなった午後5時まで粘って、30人に話を聞くことができた。中学生カップルが3組もいたのは、小池さんも想定外だったようだ。
 そもそも6時間で30人というのは、通常の街頭インタビューではあり得ない数らしい。それもすべてミライさんのおかげと言っていい。「スケスケフューチャ~」の声が響くたび、若者が集まってきたのだから。
 それともう一人、ロケの成功に一役買った人がいる。トモちゃんだ。いつものパンツルックをやめて、この日はデニムのスカートにピンクのモコモコセーター。まさかのイメチェンを図ってきたのだ。
 ミライさんには「トモちゃん女子力アップップ~。さては彼氏でもできたぁ?」とからかわれ、取材相手の女子たちからも「カワイイ」を連発されていた。
 僕も率直にカワイイと感じた。夢叶ちゃんがいる手前、口には出していないけど。
 服装が変わると内面も変わるのだろう。取材中のトモちゃんには、以前のようなカタさやオドオドした感じは見受けられなかった。喋りも自然体。相手の中学生が心を開いているのが、会話のやりとりでわかった。
 そうやって聞き出した悩みはというと、中学生らしいピュアなものからドロドロしたものまで、いろいろだった。トモちゃんが言うには「大人女子の悩みと殆ど変わらない」そうだ。
「別れた彼女とヨリを戻したい」
「キスを拒んで彼に嫌われないだろうか」
「LINEで告白しても大丈夫か」
「友達から恋人関係に踏み出せない」
「10回同じ男子に告白されて、根負けして付き合っちゃいそう」
「好きな人ができない」
 ざっとあげるとこんな感じ。
 際立っていたのは、中3カップルの悩みだった。
 卒業後、別々の高校に通うことになっているが、3年後同じ大学に入る約束をしたという。二人で書いた誓約書をロケットペンダントに入れて肌身離さず持っていると、女の子は自慢げだった。その話の最中、彼氏が浮かない顔をした。その一瞬の表情の変化を夢叶ちゃんは見逃さなかった。
「心配ですか?」と切り込むと、彼氏は不安な気持ちをこぼし始めた。
「僕は男子校で、彼女は共学の高校に行くんです。3年て過ぎちゃえば、たぶんあっという間ですけど、実際に過ごしているときは長く感じるじゃないですか。365日が3回あって1000日以上。その間なかなか会えなくて、彼女が別の人を好きになっちゃうんじゃないかと心配なんです。僕は男子校だから、そんなことないって言いきれますけど」
 愛おしそうに彼氏を見ていた女の子の表情が曇りだす。
「まるで私が浮気するみたいじゃん」
「いや、そういう可能性も無きにしもあらずでしょ」
「絶対ないもん!」
 怒った彼女をどうなだめようか困っている様子の彼氏に助言したのは、トモちゃんだ。
「そうなったらそうなったで、二人の恋はそれまでってことでいいんじゃないかな。そのかわり3年の壁を乗り越えられたら、きっと明るい未来があると思うよ。てなわけでミライさん、占っちゃってください!」
「了解でーす! それじゃ、二人の未来を覗いちゃいます」
 中学生カップルは、気づけばガッチリと手をつないでいた。5本の指を絡める恋人つなぎ。息をのんでミライさんの言葉を待っている。
「見えました!」ミライさんが叫んだ。目を閉じたまま、あやとりをするように空中で両手を動かしながら鑑定結果を伝える。
「これは大学の講堂かしら。二人と一緒に別の女の子がいて、楽しそうに何か話してる。女性は恐らく二人の共通のお友達で、このあと三角関係に発展しそうな予感」
 女の子が、彼氏をキッと睨む。
「あ、でも大丈夫そう。二人にはハートの形をしたオーラ、ラブマークがしっかり浮かび上がってる。ということで、大学まではうまくいくでしょう! な~んてなんてスケスケフューチャ~」
 女の子に笑顔が戻り、不安を口にした彼氏もホッとしている。
 二人が腕を組んで原宿の雑踏に消えたあと、ミライさんが真顔になった。
「三角関係、ホントはやばそうだった。まぁでも、そこは自分たちで乗り越えてほしいって期待を込めて、ちょっと強引にまとめちゃった。未来なんて気持ち次第で変えられるんだから、いいわよね」
 それでいいと誰も肯定しなかった。かといって否定もしなかった。
 取材では、僕も同年代の相手にどんどん突っ込んだ。
「チューは何回目のデートが理想?」「告白されたときの気持ちは?」自分で言うのもなんだけど、インタビュアーとしては満点に近かったのではないだろうか。夢叶ちゃんに「チューじゃなくて、キスって言いなよ」と注意されたことを除けば。

 翌日の船橋ロケも、撮れ高が予想を大きく上回った。
 2日目ということもあり、僕らも突っ込みどころがわかってきて、中学生の胸の奥にある悩みをヒョイヒョイ引き出すことができた。
 不思議だったのは、取材を受けた大概の人がご機嫌で帰っていくことだ。ミライさんの占いの結果は、もちろん良いものばかりではない。それなのに、仕方ないかとか、頑張ろうとか、気持ちを切り替えるように顔をあげて立ち去っていくのだ。
 ひょっとするとミライさんの占いは、元気を与える不思議なパワーを秘めているのかもしれない。
 ロケが終わって陽も落ちた帰り際。トイレに寄ってからロケバスに向かうと、ドアのところで小池さんとトモちゃんが話していた。僕は反射的にバスの影に身を隠した。
「仕事でこんなに楽しく喋れたのは初めてです。カジュアルな服装にしたらってアドバイスしてくれた小池さんのおかげ。喋ってるうちにどんどん楽しくなってきちゃいました」
「でしょ? デニムのスカート、中学生からも好評だったじゃん」
「小池さんは、どう思います」
 両手を広げてトモちゃんがポーズをとる。
「どう思うって、だから似合ってていいんじゃない?」
「いいって、どんなふうに?」
「親近感がわく感じかな」
「……もう、ドンカンなんだから」トモちゃんは口をとがらせ、クルリと背中を向けてバスに乗り込んでいった。
 積極的ともいえるその姿を見て、僕は思った。
 トモちゃんは、壁を乗り越えたのかもしれない。

 原宿と船橋のロケが終わってからも、小池さんはカメラを持ってひとりで取材に出ていた。僕らのロケ分と合わせて120人にインタビューしたという。
 学校や家庭の事情、或いは、あとになってやっぱりテレビに出たくないと申し出てくる人数を見越して、多めに話を聞いたそうだ。
 レギュラー放送のズバ解の視聴率は、ミライさん効果もあって2週続けて1.4%。夏のスペシャルに迫っていた。数字がいいと、現場の風通しも良くなってくる。
 プロデューサーもご機嫌で、収録日、久しぶりに差し入れをしてきたほどだ。差し入れの品は、油揚げが裏返しになったお稲荷さん。「裏番組を食う」というゲン担ぎの意味もあり、ギョーカイでは定番の差し入れとなっている。味のほうも文句なしの美味しさだ。
 ミライさんも番組にすっかり溶け込み、ズバ解チームの立派な一員になっていた。泉さんなんか収録の度に運勢をみてもらっているほど。残念ながら、当分彼女はできそうにないようだけど。
 夢叶ちゃんも、お母さんのいない日常に慣れたようで、カメラの前で膨れっ面をしなくなっていた。
 トモちゃんはあのロケ以来、弾けまくっている。もちろん、いい意味で。
 中でも一番変わったのが、小池さん曰く、僕らしい。
 思い当たる節はある。ちょっと前まで眩しくて苦手だったスタジオのライトが、いまは全然イヤじゃない。それどころか、もっと照らしてほしいとさえ思ってしまう。
 オープニングで夢叶ちゃんが悩みに触れるお約束も、臨機応変に返せるようになっていた。
「ダメダメダメ~。夢叶ちゃん、それ言っちゃダメ。って止めたいとこだけど、たまには言っちゃってください!」なんてアドリブをかましたり。
 そのときは、夢叶ちゃんも一瞬キョトンとしたけど、そこは流石の天才子役。「それじゃこのまま行っちゃいましょう! きょう一つ目の悩みをズバッと解決!」と台本を無視して一緒に突っ走ってくれた。
 反省会で「正樹、今日の良かったじゃん」とプロデューサーに褒められるというオマケもついた。
 目の前に立ちはだかる13歳の壁。その一番上に、指先が引っ掛かっている感触が、確かにある。
 
 視聴率も上り調子で現場の雰囲気もこのうえない。その状況に水を差す出来事が起きたのは、冬のスペシャルの放送を10日後に控えたときだった。
 僕が元不良少年をそそのかしたと書き立てた週刊新風が、また記事を載せたのだ。
 今度は僕と夢叶ちゃんのロマンスだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?