ニコニコ動画や超会議を立ち上げ続けた参謀 水曜企画 note対談 横澤 大輔さん vol.1
さて、水曜日ということで、今週もやってきました、対談企画です。
ちなみに過去3回の記事はこちら。
結局ずっとエンタメの方との対談が続いて、今回こそは!って思ってましたが(思ってたけど、ぼくのまわりにはエンタメの人しか居ない気がする、、)としてドワンゴの横澤さんと対談させて頂きました!
横澤 大輔
株式会社ドワンゴ 専務取締役CCO
京都芸術大学 客員教授
社団法人 日本ネットクリエーター協会 代表理事
株式会社ドワンゴのコンテンツ戦略担当として、2001年よりドワンゴの携帯コンテンツ制作を始め、ニコニコ動画公式生放送や様々なイベント、新規事業を立ち上げる。ニコニコ超会議では統括プロデューサーとして16万人超規模のイベントを手がけ、伝統芸能の歌舞伎とデジタルを融合させたオリジナル新作超歌舞伎「超歌舞伎」の総合プロデューサーを務めている。2020年のニコニコ超会議(春、夏)はオンラインで開催、「ネット総来場者数」は1,773万8,806人となり日本最大級のオンライン参加型イベントを手がけた。
それでは、あまり聞けない横澤さんのお話、スタートです!!!
自販機になったように感じてしまった「着うた」
鎌田:横澤さんとこうやってお会いするのも・・・
横澤:久々ですよね。 連絡は取ってますけどね(笑)
鎌田:ですよね(笑)ちょっとしたことで連絡させてもらったり。
横澤:近いのに、なかなかゆっくりお話させて頂く機会なかったですよね。
鎌田:そうなんですよ!だから最近、横澤さんがどんなことを考えたりしているのか知りたくて。
横澤:最近ですね? そのまえに、ちょっと過去の話に遡りますが・・・
19の時から「着メロ」の制作会社をやっていたわけですよね。(鎌田メモ:ご存知の方も多いと思いますが、当時、ドワンゴさんの着メロを横澤さんの会社CELLで制作していました)
鎌田:CELLですね。
横澤:で、「着メロ」って、どちらかと言うとクオリティを追求できるものだったんですよ。自分達が込めた「愛」がちゃんとお客さんに通じるような商売だったんですね。でも「着うた」になったら「権利取りビジネス」になっちゃって。
鎌田:(笑)
横澤:結局何を出しても、感動は変わらないって感じるようになるんです。
鎌田:なるほど。
横澤:「着ボイス」は、僕らが作ったコンテンツで遊んで頂いてるんだ!っていう感覚があったんですけど、「着うた」になったときに、お客さんとのコミュニケーションがまったく無くなって。もう「僕ら自動販売機じゃね?!」みたいな(笑)
鎌田:(笑笑)
怒られるときに 真逆な言葉を言わざるを得ない名前
横澤:権利取りで殺伐とするコンテンツ業界・・・みたいになるのが嫌でした。で、i-modeのサブスクビジネスの中で僕らが享受していたものを、何とかPCの世界で再現できないかなと考えるようになるんですね。
鎌田:うんうん。
横澤:っていうところからビジネスモデルを考えて、じゃ今PCで戦えるのは何かなっていった時に、動画共有サイトをやってみようよと。 ただサーバを持ってやるのも超リスキーだから、なんか動画借りてきてサラサラって作ってみようよ!っていって作ったのがニコ動なんですよ。
鎌田:なるほど。
横澤:でも、絶対これ怒られるよねって話になって、どうせ怒られるんだったらカッコイイ名前つけるともっと怒られそうじゃないですか(笑)
怒られる時に真逆な言葉を言わざるを得ない名前にしようよっていうことで「ニコニコ動画」ですね。
鎌田:(笑笑) たぶん、それを知らないまま使っている人がほとんどですよね。
横澤:そうですね!それで「いつかカッコイイ名前に変えようね」ってことで当初(仮)が付いたんですよね。
鎌田:なるほど。
横澤:最初、オタク的・サブカルチャー的な動画が多かったので、マーケティング的に“2ちゃんねる”をターゲティングしようっていうことで、ひろゆき(鎌田メモ:2ちゃんねるを創設した西村博之さん)と組むんですよ。
鎌田:ふーん(笑)
横澤:そうすると、2ちゃんノリみたいなものが、がーっと入ってきて、新しい遊び方の文化みたいなのがどんどん形成されていって。
で、YouTubeのランキングが一気にニコ動のランキングになっちゃって。
鎌田:(笑笑)
横澤:で、そろそろまずいかなって時に、ついにYouTubeにAPI強制切断されるんです。
鎌田:(笑)
横澤:それでうちは2週間ぐらいサービスが止まったんですけど、その2週間でサーバ立ち上げて自社サーバに投稿してもらうっていうのが始まるんですよね。
鎌田:それって何年前くらいですか?
横澤:12、3年前くらいですね。それで、同時にストリーミングの生放送を始めて。
鎌田:うん。
横澤:で、僕はそこから、生放送立ち上げの方を担うことになりました。
超巨大な胡蝶蘭を贈り続ける日々
横澤:で、生放送に、芸能人やアーティストが出てくれないんです。「どーする?」みたいな(笑)
鎌田:川上さん(鎌田メモ:ドワンゴ創立者の川上量生さん)も言ってました。著名人は難しいって。
横澤:「私の顔の前に、コメントが流れるってどういうこと?!」とかもありました。
鎌田:(笑)
横澤:すごく昭和みたいなことを言われながら戦っていくみたいな。もちろん、誹謗中傷を受けるんじゃないかと気にしていらっしゃった方もいっぱいいたんですけど。
ただ、それ以前に、ネットでのリアルタイムコミュニケーションへの恐怖みたいな。
鎌田:うーん。
横澤:で、僕は、どうやったら著名人が出てくれるのかっていう戦略を立ててました。
やっぱり有名な方々が出てくれると、数字は伸びるんです。ただ、この数字がどーしてもプロモーションアウトしていかない。
それで、まず業界に広めたいなって思って。お花を贈ったんですよ、僕。事務所やレーベルに。超巨大な胡蝶蘭とか。
鎌田:何も無い時ですか、それは。
横澤:そう「祝ご出演 50万人視聴おめでとうございます」みたいなのですね。
鎌田:なるほど。
横澤:で、お花が目立つところに置いてあると「え?なになに50万人って?!」って問い合わせが増えていくっていう。
鎌田:へー。
横澤:あと、楽屋のお弁当を高いものにして「なんかあそこ行くと美味いもん食べれるらしいよ!」とかも(笑)
鎌田:(笑)
横澤:もう本当にそういう細かい"ちりつも"で、なんとなくニコ動の現場に行くと楽しいみたいなことになって。
そういったブランディングをしていきながら、より著名な方々に出てもらおうとか、ちょっとTVには出られない方々をフィーチャーして支援していくとか。
鎌田:なるほど。
横澤:それでその辺りから、ちょっと斜め上的なブランディングをしていくことになるんですよね。「このままだとなんとなく危ないサイト、サブカルチャーの権化みたいなことになるよね・・・」って事で、政治方面のコンテンツをやることになるんです。 真逆の極みというか。
鎌田:(笑)
横澤:で、政治カテゴリを僕と川上で立ち上げて、それこそ小沢一郎さんに出てもらうとか「ネット党首討論」を実現させるとかに奔走して僕は3年くらいやるんですね。自民・民主政権交代のど真ん中で、なぜか、官邸、民主党、自民党本部を伝書鳩のように調整したりとか。
鎌田:へー。
横澤:いま考えたら、すごい経験もいっぱいさせてもらいました。
民主党政権になって記者クラブがオープン化された時「G8」がカナダであったんですけど、その時最初のネットメディアの特派員が僕だったりとか(笑)
鎌田:(笑) さすがすぎますね。
ネット民の次の居場所「リアル2.0」を作らなければ
鎌田:そして、過去の流れをふまえた上で、横澤さんが今、考えていることとは・・・
横澤:歌い手さんとかボカロPとか彼らの社会的な居場所をずっと作ってきたので、ユーザーさんと直でコミュニケーションをとることも多くて、悩みとかも聞くことも多いんですね。
ネットに居場所を求めた人たちがニコ動を居場所として楽しんでもらっていて、そこに精神的安心とか安全ってものが生まれた。そして、やっぱりもう一度リアルで会いたいってこの人たちは思ってくれるんだなって。
鎌田:うーん。
横澤:彼らの好きなことを思いっきり好きって言えるリアルな場所を限定的にでも作ってあげたいなーと思って作ったのが「超会議」です。で、ここ10年、超会議をずーっとやってきて・・・コロナの世の中になって、そのイベントっていう手段が使えなくなって。
鎌田:そうですね。
横澤:ネットの居場所を見つけたにも関わらず、マスがみんなネットに来てオンラインが主になってきて。
結果、昔のリアルがネットになってしまって、 ネットに居場所がなくなった。
鎌田:なるほどね。
横澤:で、ネットに精神的な安全が担保されなくなってしまった今、自分達はどうしたらいいんだろうっていう悩み、特に、こだわりを持ったオタクといわれる人たちに悩みがあるんじゃないかなって、今僕は足元のこととして思っていて。
鎌田:へーーー。
横澤:じゃ、次は何かって言ったら「リアル2.0」っていうのを作らなきゃいけないんだろうなっていうのを最近考えてる感じです。
鎌田:今までの流れがあって。
横澤:流れ的に。ずっと彼らの居場所を作ってきたからこそ、新しい安全な居場所をリアルでもう一回作ってあげたいなと。
コミューン構想というか、もうひとりの本当の自分が安心して生活・表現できる場所っていうのを作ってあげたいなと今、漠然と思っている感じですかね。
鎌田:うーん。そこはリアルなんですね?ネット上で安心は作れないですか?
横澤:それはまた次かなって思うんですよ。
鎌田:なるほどね。
横澤:リアル→ネット→リアル→ネットって交互に来るんだれども、結局ネットとリアルの役割って変わらないと思うんですよ。でも、これがハイブリッドであるべきで。
安心・安全っていうのは、ある程度行き来するんじゃないかなと。どちらかの良さや悪さを知った時に、両方を使えるハイブリッド。
鎌田:なるほど。
横澤:なんか、逃げていくと結局、前の次元に戻っちゃうっていうか。
鎌田:なるほどね。踏み出してね!新しく。
横澤:そう、一歩踏み出して、リアルを自分達のものにして欲しいと願ってますね。
コロナでできた時間で自分と向き合う
鎌田: 横澤さんの仕事周りで、コロナによるポジティブな影響、ネガティブな影響はありますか?
横澤:まず、ポジティブな影響としては、自分の時間ができたっていうのは、大きいと思うんですよね。
鎌田:うんうん
横澤:人に会うにしても、何か行動するにしても、なんかそこがバンって遮断された瞬間に、自分の意思だけしか残らないわけじゃないですか。
その時に「あーこんなに他人に流されて動いていることって多かったんだな」ってすごく感じましたね。同時にコミュニケーションの大事さもわかりました。
鎌田:じゃ、人間関係ちょっと断捨離したんですか?
横澤:それは、意図的にこの人と会わないとかじゃなくて、会いたい人には会うし、惰性的には会わないというか。
「こういうことを伝えたい」とか「こういうことをしたい」とかがあったとき、初めてそれが実現するというか。
それから「内観」に向かうようになりましたね。他人からどう見えるのかというエンジンよりは自分がどうするかっていうエンジンを、ちゃんと見るようになった時間をいただけたなって思いました。
鎌田:強制的に止められましたもんね、本当に。
横澤:そう!だから僕はこれから人類はふたつに分かれるんだろうなって思っていて。
コロナの前に戻したいっていうベクトルと、このコロナを使って大きな変化を作りたいっていうベクトル、ふたつのベクトルにおそらく人類が分かれるんだろうなと。
鎌田:完全、後者ですよね?
横澤:うーん。そうありたい・・・というのもやっぱり、そこから時間をもらえたから、引きで見ることができるし、その選択ができてるっていうのは凄く大きいことですね。
鎌田:超会議などリアルイベントができない状況で悲しいとは思いますけど、ただ、昔ほど、アホみたいにみんなで会って騒いで飯食いたいかっていうと・・・なんか変わりましたよね。
横澤:うーん、変わりましたよね。
鎌田:それは別にもうよくない?みたいな。だから正直「昔に戻りたい」って言う言葉を聞くとちょっと違和感を感じてしまう。
横澤:うーん、「あの時は」みたいなね。
鎌田:そうそうそう。踏み出してそれを使って次っていうのはわかりますけど。
横澤:たぶん、仕組みに乗ってきた人って、やっぱり仕組みに乗っかりたいわけじゃないですか。でも、鎌田さんや僕とかって、仕組みを作ってきた側だから。
鎌田:常識とか前例とかを守ってこなかったタイプ。
横澤:そうそう。だから、その変化を使ってどうするかって思考にいけるじゃないですか。 作ってきた実績もあるし。
鎌田:思考停止ですもんね、戻ったら結局。
横澤:このコロナっていう時にどういう社会になって、どういう課題が生まれて、その課題が見えてくると、結果それを解決しようという方向にしか行かないじゃないですか。
僕は貴重な時間をもらえてるなと思いますね。鎌田さんも後者派ですよね。
鎌田:はい。言い方誤解を招くかもしれないですが2020年を経験してよかった、って思っちゃいますし。
横澤:そうですよね。
鎌田:価値観が変わりましたね。
横澤:うん。
鎌田:「内観」ておっしゃったのはごもっともで、今まで誰にたいして仕事してたんだろうなって。
横澤:そう(笑)
鎌田:これやったからってどうなんだろうとか、目線も10年20年とかって考えになったし。そうするとこの数字って何の価値がある数字だったのかとか。全部ひっくり返すようになって。その話が通用しない人とは逆に話さなくなったなっていうのはありますね。
横澤:確かに!話が通じなくなった人いますよね(笑)仲良かったけど、、ん??みたいな。
鎌田:「まだそれ言っちゃうの」みたいなことですね。
逆に、川上さんはもともと長い目線だし、これは完全に褒め言葉なんですけど「人類とはまた違った目線」を持ってたりりとか(笑)
横澤:(笑)そうですね。
鎌田:ああいった方が言われていることがちょっとは理解できそうなところにまで、考え方としては来たのかなって気はしてて。
横澤:なんか、スコープが広がりますよね。
-以下、対談vol.2(3月24日公開予定)に続く-
最後に。
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