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好きなアートで生きていく! 水曜企画 note対談 山口歴さん vol.1

水曜日は対談企画です。
前回の高須光聖さんとのnoteをまだ読んでいないという方はぜひご一読ください。


そして今回はまた一味違ったエンタメとして、現代アーティストである 山口歴(めぐる) さんとの対談をさせて頂きました。めちゃくちゃアートについてお話頂いてるし、僕自身は全然無知な状態からのインタビューでしたので、まだアート知らないって方でも楽しいと思います!


山口歴/YAMAGUCHI MEGURU
1984年生まれ。東京都渋谷区出身。2007年に渡米し、現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動している現代アーティスト。
絵画表現における基本的要素「筆跡/ブラシストローク」の持つ可能性を追究した様々な作品群を展開。代表的作品群"OUT OF BOUNDS"では「固定概念・ルール・国境・境界線の越境、絵画の拡張」というコンセプトのもと、筆跡範囲を制限してしまうキャンバスの使用を止め、筆跡の形状自体をそのまま実体化する独自の手法によって、ダイナミックで立体的な作品を制作し続けている。

90年代から2000年代初頭の東京ストリートカルチャーの変遷を経験して育ち、渡米後は、ALIFE、BILLIONAIRE BOYS CLUB、FTC、NIKE等アメリカのストリートカルチャーを代表するブランドの他、ISSEI MIYAKE MEN、LEVI’S、OAKLEY、UNIQLOといった企業とのコラボレーションも行なっている。

Instagram
https://www.instagram.com/meguruyamaguchi/ 




アートが売れた2020年

鎌田:めぐるさん(鎌田メモ:この対談では「めぐるさん」と書かせていただきます)は、年末年始はニューヨークだったんですよね?

山口:そうですね、11月の終わりくらいに帰って、ニューヨークで年越しでした。

鎌田: 今朝ニュース見てたら、バイデンさんが新しく大統領に就任したということと、40万人くらいコロナの死者が出て…とか出ていましたが、ニューヨークにいるめぐるさんから見てどうですか?

山口:うーーん……(鎌田メモ:けっこう答え方に迷われた感じでした)

鎌田:アメリカって失業保険が出るじゃないですか。だから「むしろごく普通に生活できちゃって…」とか現地にいる方に聞いたりすることもあって。日本で地方にいる方が「東京ってコロナどうなの?すごいんでしょ?」って話すのと同じように、僕ら日本で「アメリカってコロナどうなの?すごいんでしょ?」って言っている感じかな?と。

山口:はい、僕自身の生活は変わらないです。元からスタジオと家の往復なのでほぼ人と会わないですし。
ただ、音楽とかMVとか、ファッションデザイナーの人とか写真家とか、そういう人たちと話してると、かなりコロナの影響を受けてますね。例えば音楽家だったらライブができなくて、ツアーもキャンセルだし。ファッションフォトグラファーの友達もヘアーやってる友達とかも、みんな、もうファッションが機能してないみたいな感じで…
それが僕の場合は、ステイホームの影響かわからないんですが、絵を買ってくれる人がめちゃくちゃ増えたんですよ。2倍、3倍くらいになって。

鎌田:へえー2020年って爆発的にアートが売れるようになった…?

山口:そうですね、もちろん、以前からコンスタントには売れていたんですけど。
渋谷西武で展示があったり、鎌田さんにも見ていただいた(鎌田メモ:サイバーエージェント執行役員の谷口さんに誘ってもらって行ったんです)パルコの展示とか。あとユニクロとコラボしたりとか色々やったので。有難いことに仕事が増えてるという感じなので、こんなこと言っていいのか分かりませんけど、テンションが違うんですよ…  オーダーは毎日各国から来ますし。

鎌田:なるほど、周りに言いにくいエピソードなんですね。

山口:そうなんですよ、言いにくいです。

鎌田:他の人とのテンションの差が…

山口:そうなんですよ。(テンションの差が)激しくなると言うか。現代アート全般に当てはまるかどうかはわからないんですけど。

鎌田:僕、noteにも書いたんですけど、車会社の社長に「コロナの影響で車売れなかったですか?」って聞いたら、逆で、海外旅行とかが減った分お金が余ってて「この機会に車を乗り換えよう」みたいな。しかも同じブランドで買い換える人が多いから、試乗もせずに「次これで」みたいに買っていくと。

山口:まじっすか

鎌田:思ったほどは下がってないんだよね、みたいな。

山口:へえーーー潤ってるところは潤ってるってことなんですね。

鎌田:そうですね。




数百の「ホールド」の中、手に入れる

山口:鎌田さん、僕の作品を買っていただいたじゃないですか、それもコロナの影響とかあったんですか?  家にいる時間が長くなったから「絵でも買ってみるか」みたいな気持ちになったとか…

鎌田:コロナは会社にはもちろんインパクトはしてるんですけど、僕自身の行動は、会社にいくことも多いのと、個別の車で家と会社の往復なんであんまりその影響がないんですね。会食が減ったのはありますが。
めぐるさんの作品は、谷口君(鎌田メモ:サイバーエージェントの、ですね)がインスタでシェアしてたとこから「カッコいいね、これ」って言って。

山口:ありがとうございます。

鎌田:なんか僕、超軽い気持ちでパルコの始まる前日あたりに「行きたかったらいけるよ」って聞いて、あーそうなんだって。「ちょっと見てそのあと飯でも食おうよ」って飯の予約とかも全部してたんですよ。

山口:(笑)

鎌田:パルコに長居するの?とか話してたんですけど、谷口君が「これ欲しいな、本当に欲しいな」とか言ってるから「え?これ買えるの?」と、そこからですかね。
これ本当の話なんですけど、アートを買う人ってなんか胡散臭いとか思ってたんですね。自分がその世界にいなかったから分かってなかったんですけど。でも、めぐるさんの見たときの躍動感というか。

山口:嬉しいですね。

鎌田:アートも色々あると思ってて、例えば、ゴッホの絵とか、わからないですけど、歴史を感じるアートってあるじゃないですか。でも、僕は普通にカッコいいと思うものが好きなので…と思ってた時にドンピシャだったので。

山口:それは本当に嬉しいですね。

鎌田:もうひとつ、あのガラスの鏡の方がすごい気になってましたけどね(笑)

山口:そうですよね(笑)

鎌田:だから、あれスマホの壁紙にさせてもらってます(笑)

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(鎌田が気になったガラスの絵)

山口:まじですか、嬉しいです。ありがとうございます。
僕もアートってそういうものだと思っているんですよ。説明ももちろん重要だし、歴史も重要なんですけど、なんていうか、アートにあまりゆかりのない人とかにも届くものというか。僕もアートの歴史、もちろん勉強しましたけど、関係なしにパッと見て人に届くものがアートなんじゃないかなって。そういうものを創りたくてやっているので、まさに鎌田さんのように言っていただいて、初めて買っていただくとか、すごい嬉しいんですよね。

鎌田:こちらこそ、申し込みはしましたが最後に自分に当選して買えると思ってなかったので嬉しいです。

山口:ありがとうございます。

鎌田:あの作品って売り物じゃなかったんですよね?最初は。

山口:僕は基本的には作品は全部売る方なんですけど、家族とかもすごく気に入ってて、気に入った作品は後々とっておいた方がいいみたいな。例えば、大きい美術館で個展する時とかに個人所蔵ですぐに出せるし、記念になるような作品は自分の手元において見返したりした方がいいみたいなことも言われていたんですよ。
で、あれはそういう作品にしようと思っていたんですよ。

鎌田:へえー!買えてしまった、嬉しい。めぐるさんの手元から奪ってしまった(笑)

山口:いやいや、でも鎌田さんで本当に嬉しいです。

鎌田:めっちゃ嬉しいです。(鎌田メモ:ずっと嬉しがるふたり)

山口:よかったです。ありがたいですよね。ただなんか、怖さもありますよね。今バッてなってますけどブームが終わった時にどうなのか、これがずっと続くのかって考えたら。

鎌田:うーん。

山口:それを続かせるためにやっぱり努力しないといけないし、動き方・見せ方もそうですし、どんなものを創るかも。

鎌田:めぐるさんが今度日本に来られるタイミングで、また展示をやりたいってなった時に、もしかして僕が買ったものを「じゃあちょっとの期間貸します」みたいな日が来るかもしれないんですか。

山口:いつか、はい。大きい美術館とかで。

鎌田:すごー!

山口:大きい美術館、例えば、県立美術館とか東京都美術館とかになった時はもしかしたら貸していただくことになるかもしれないです。よろしくお願いします。

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(鎌田が購入させてもらったアート)




アートで生計をたてるということ

鎌田:今めぐるさんが言ってた、人気を保たないといけないということについて、もう少し深掘りしていいですか。

山口:はい。

鎌田:聞いていいのかわからないんですけど…。
現代アートというもので食べていくって、例えば1000万のものを買いましたって時に、もちろん仲介手数料もあるかもしれないし、使った画材もあるかもしれないですけど、それ以外ってご自身に入って来るって考えていいんですか?

山口:そうですね。ただ、自分はスタジオも構えていますし、スタッフも10人くらいいて月給も払ってますから、そのお金になりますね。基本的に。

鎌田:最初って一人から始めるわけですよね。

山口:一人ですね、はい。

鎌田:以前にどなたかの弟子だったって仰ってたじゃないですか。

山口:はい、そうですそうです。松山智一さん(鎌田メモ:調べました。ニューヨークを拠点に活動するアーティストで、最近だと新宿駅東口駅前広場の巨大パブリック・アートが話題を集めた方ですね)の弟子を5年くらいやらせて頂いて独立したって感じですかね。

鎌田:独立した時の年齢っておいくつなんですか?

山口:えーっと、28ぐらいですかね、まずオフィス構えられるお金がないので、その時はバイトしながら家で描いてましたね。ベッドで。僕、絵の具をたくさん使うんですけど、置く場所なくて、もうベッドの下に入れて乾かしたりして(笑)

鎌田:ははは(笑)

山口:そういう感じで色んなものを駆使してやってましたね。

鎌田:それで最初の作品が出来上がる訳じゃないですか。できたらやっぱり誰かに買ってもらいたいってことになるんですか?

山口:買ってもらいたいというよりは認められたいって気持ちの方が大きくて。Facebookに投稿してたんですよ。当時Instagramが無かったので。で、Facebookに投稿して「あ、30いいねついた!」とか。

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(一番最初に作られてFacebookに投稿された作品)

鎌田:なんかクリエイターですよね。食っていかなきゃいけない、これを売って生活費を稼がなきゃいけない、じゃなくて、まず認められたいから入るんですね。

山口:そうですね、もちろん食っていきたいってのもあるんですけど。鎌田さんと一緒で、カッコいいものが見たいだけというか、カッコいいことがしたいというか。

鎌田:最初の作品はFacebookにアップして、それはその時すぐには売れてないんですか?

山口:その時は売れてないですね。でも実は、独立したきっかけみたいにはなって。日本のとあるギャラリーで展示しないかっていう話がきて、それで自分のwebサイトを作ったんですよ。そしたら、そのサイトを見たギャラリーの方から連絡あって、そこで展示したんですけどその初日に完売したんですよ。7作品くらい出してたんですけど。

鎌田:えー!

山口:1枚8万円とか、10万円とかで、結構でっかいのとかだったんですけど。それで独立したんですけど、そこからまた売れなくなる時代になっちゃって。安心しちゃったのか、調子に乗っちゃったのか…  売れなくなった時代、バイトしながらやってたのが3-4年あったのかな。
1年に1回くらい、70万とか80万の絵が売れたりして、それが2枚売れたらギリバイト週3で食えるみたいな、感じなのが2017年までですかね。

鎌田:つい最近じゃないですか。

山口:はい、そうですね(笑)2012年に独立して2017年に食えるようになったので、最近ですね。

鎌田気が緩んだというか、そういう時の作品は売れなかったと言いますけど、やっぱり今の自分が見てもそうなんですか?

山口:今の自分が見てもそうですね。ただ迷って、常に新しいことがやりたいので、新しいこととか見たことがないものってなんなんだろう?ということを追求してました。
今は自分が完全に新しいことをやってるっていう自信はあるんですけど、その前の段階というか、殻を破る前というような時で、その時期の作品はやっぱりクオリティに関してもやってることに関しても「これは違うだろう」みたいな。今考えると(笑)その時は全力でやってるんですけど。

鎌田:全然売れない時期、2017年までのバイトしながらの時期も腐らなかったんですか?

山口:いや、腐ってた時もありましたよ(笑)

鎌田:(笑)ちなみに何のバイトしてたんですか?その時って。

山口:古着屋とあと肉屋やってたんですよ。

鎌田:肉屋。

山口はい、ブッチャーですね、ニューヨークの。肉を切ったり運んだり、日本のスーパーとかに卸す仕事ですね。ひたすた切り落としをスライスするとか、ステーキをカットするとか(笑)

鎌田:でも、そこでつらいからアート描くのをやめようとかじゃなくって、絶対いつか認められてやるっていう気持ち一心って感じですか?

山口そうですね、絶対認められてやるって思ってますし、いつか何とかなるって確信はあって。心のどこかで「いや絶対大丈夫でしょ」「じゃあがんばろう」と。

鎌田:なるほどね。

山口「絶対こうなる」って思ってたような未来に実際になって、不思議な感覚というか。一回体験してる?じゃないですけどデジャヴみたいな。

鎌田:願えば叶うんですね。

山口:そうなんですかね。

鎌田「2017年に」って出てきたのは、2017年に絵がたくさん売れたとかですか?

山口イッセイミヤケさんとコラボさせてもらったんですよ、2017年の1月に。


山口:そこからオーダーが止まらなくなって今もずっと止まらない状況なんです。絵って、誰かが価値をつけないと解らなかったりもするじゃないですか。例えばこういうメディアに載ったから売れるとか、この人がいいって言ってるから買うとかと同じ感じで、そういうわかりやすい世界的なブランドとコラボできたのはきっかけになったかなと思います。

鎌田:今もオーダーが止まらないってのは、めぐるさんがまだ創ってないけど創ったら買うよってことですか?もしくはこういうのを創ってくれ、みたいな。

山口:こういうのを創ってくれってのがたくさんありますね。基本的には展覧会で買ってください、というスタイルなんですけど、オーダーも受け付けてはいますね今は。で、そういう方はたくさん待ってくれてるというか…

鎌田:へえーーーイッセイミヤケさんがきっかけなんですね。

山口それも、僕の予備校時代の友だちが僕のことフックアップしてくれたんです。僕、東京藝大4浪したんですけど、同じ予備校にいた彼がイッセイミヤケに就職して、10年経ってすごい動かせるポジションになって。で「めぐるまだバイトしながらやってるよ」みたいな感じでバイト中にその電話もらったんですよ。肉屋の肉を運んでる時に朝。

鎌田:ははは(笑)

山口:もう寒い冬に(笑)ダウンジャケット来ながら、もうそれで涙出そうになりました。「決まったから今日!」みたいな。

鎌田:すごい!めっちゃいい話じゃないですか

山口:もちろん自分でも頑張ってたというところは嘘はないんですけど、友達が助けてくれたりとか、やっぱり自分だけの力じゃないってところで物事が動いて行くんだなっていうのは、節目節目に感じますね。

鎌田:やっぱり誰もが成功するストーリーってちゃんとあるんですね。


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(昨年渋谷PARCOで行われた展示会より)

PHOTO: https://instagram.com/rintaro0014?igshid=1guw1jgxhxnmz

 


-以下、対談vol.2(2月24日公開予定)に続く-




最後に。
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