蒲池明弘

読売新聞社勤務を経て、歴史関係のライターに。列島各地の風土と歴史のむすびつきを手がかり…

蒲池明弘

読売新聞社勤務を経て、歴史関係のライターに。列島各地の風土と歴史のむすびつきを手がかりに、古代史をめぐるさまざまな謎に挑戦中。著書に『火山で読み解く古事記の謎』(文春新書)『邪馬台国は「朱の王国」だった』(同)『聖地の条件──神社のはじまりと日本列島10万年史』(双葉社)など。

最近の記事

香港映画『Blue Island』は、深い思考と詩情が響きあう驚異の哲学的歴史映画だ。

 「歴史とは過去との間の尽きることを知らぬ対話」という名言を残したのは、イギリス人歴史学者エドワード・H・カー(1892年~1982年)ですが、香港の民主化運動の挫折を描いた映画『Blue Island(憂鬱之島)』は、驚くべき密度と熱量で、「過去との対話」を映像化しています。一応はドキュメンタリー映画というジャンルに入るのでしょうが、その枠をはるかに超えた実験映画であり、チャン・ジーウン監督の深い思考に導かれた「哲学的な歴史映画」という一面ももっていると感じました。 しぶ

    • ちょっと変だぞ、『日本沈没』。とくに女性記者・椎名実梨

      地質学めいたお話しも、昭和のSFも興味の対象なので、TBS「日曜劇場」の『日本沈没―希望のひと』、楽しく見ていますが、いくつか疑問を感じるところがあります。とくに変だと思うのは、週刊誌の女性記者の描かれ方。私は若いころ、読売新聞社に勤務していたのですが、新聞社OBからみた素朴な疑問と感想ということで、書かせてもらいます。 現実なら新聞協会賞杏の演じるところの「サンデー毎朝」の記者、椎名実梨は、関東沈没への備えを進め政府の極秘行動を、「毎朝新聞」の一面でスクープ、報道を受けて

      • 雑誌『ムー』に書評を載せていただきました

        「世界の謎と不思議に挑戦する」を看板に掲げる雑誌『ムー』(2021年11月号)に、私、蒲池明弘が執筆した『聖地の条件──神社のはじまりと日本列島10万年史』の書評が掲載されました。 著者は神社の始まりとして、それらよりもさらに大きな「日本列島の大地の歴史」を措定する。そしてそのためのタイムスケールとして、とりあえず「10万年前」という超古代史が提示されているから驚く。(中略) それにしても10万年とは、いささかハッタリの効かせすぎと思われるかもしれぬ。何しろ10万年前とい

        • テスカトリポカ──「黒曜石の神」をめぐる縄文的な関心

          佐藤究氏の小説『テスカトリポカ』が2021年上半期直木賞を受賞したことで、アステカ帝国の神、テスカトリポカは、日本での知名度を飛躍的にアップさせました。アステカ帝国の支配圏だったメキシコなど中米と日本には、共通点があります。このふたつの地域は、ともに環太平洋火山帯のなかに位置し、火山由来の鉱物である黒曜石の世界有数の産出地であることです。 テスカトリポカには、「黒曜石の神」という一面があるのですが、小説『テスカトリポカ』を読みながら、黒曜石と神の関係を考えてみます。 諏訪

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          7000万年前の巨大カルデラの跡に鎮座する琵琶湖東岸の神社

          近江商人の歴史を取材する必要があって、滋賀県の近江鉄道沿線を歩きまわったばかりです。余った時間を利用して、近江商人の大量輩出地として知られる東近江市に鎮座する太郎坊・阿賀(あが)神社に参詣してきました。阿賀神社の鎮座する山は、日本列島の誕生よりはるかに古い7000万年前にカルデラを出現させた超巨大噴火の痕跡地なのです。   蒲生野に屹立する死火山の痕跡東近江市の周辺の平野部は、古来、蒲生野と呼ばれた草原地帯で、皇族、貴族の狩猟地でもありました。 万葉集のなかでも有名な 「あ

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          諏訪大社、伊勢神宮が中央構造線の上にある謎についての「縄文古道説」

          中央構造線の真上に諏訪大社、伊勢神宮など、歴史のある有名な神社が鎮座しているという話はずいぶん前からあって、古代史マニアのあいだでは、半ば常識化していると思います。 ただ、「なぜ、中央構造線に有名な神社があるのか」という問題については、諸説紛々としています。①パワースポット説②地震(断層活動)を鎮めるため──というふたつの説が有名ですが、私が支持したいのは③縄文古道説とでも呼ぶべき「第三の説」です。 中央構造線は、縄文時代の人びとが行き交うメインロードだった。古道に沿って

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          なぜ、10万年前を視野に入れて、「出雲」について考える必要があるのか?

          最近、『聖地の条件──神社のはじまりと日本列島10万年史』(双葉社)という本を出したのですが、私がいちばん訴えたかったのは、 出雲が日本最古の聖地である謎は、出雲の10万年の歴史のなかで考える必要がある というテーマです。 友人や知り合いにできたての本を郵送したり、手渡したりしているのですが、中身を読んでもらう前に、タイトルに疑問が集まってしまいました。 歴史に関心のない同居人には、「10万年前の世界に人類はいたの?」なんて言われて、絶句ですが、それはそれで結構です。

          なぜ、10万年前を視野に入れて、「出雲」について考える必要があるのか?

          はじめての投稿──自己紹介とここで書きたいこと

          ツイッターとか、はてなブログとか、ネット上の活動は、始めては開店休業状態のくりかえしなのですが、「閲覧数とかフォロワー数などをあまり気にしなくていいらしい」というnoteに関する記事を見て、やってみようかな、と思いました。 初めての投稿のときには、自己紹介やこれからやりたいことを書くよう推奨されているので、そうさせていただきます。 蒲池明弘(かまち・あきひろ)と申します。 福岡県生まれですが、幼少期から高校生までは長崎県にいました。大学卒業後、読売新聞社で新聞記者の仕事

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