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お札事情

インドのお札事情は、なかなかハードな経緯がある。日本のお札について、これほど多様なエピソードがあるものだろうか。「幻の2000円札」くらいか。

15〜20年前、インドのお札はボロッボロだった。ホチキス穴がいくつも開けられ、書き込みがあり、セロハンテープで全面補修されてテカテカしていることもあった。ボロボロのお札は、みんな受け取りたがらないので、ババ抜き状態だった。(現行のお札は、ホチキスをやめたらしく、穴が空いていることはない)

2017年、500ルピー札廃止事件が起きた。事件、と言っていいと思う。
「今から4時間後の深夜12時をもって、現行の500ルピー札は無効ね!」と政府のお達しがあった。阿鼻叫喚。私はその数日後にムンバイに到着する予定があった。前回の旅行から持ち帰っていたルピーは、すべて500ルピー札だった。空港でもホテルでもATMでもすべてのお札が在庫切れで、両替できない、ルピーを入手できない事態となっていた。今のようなペイ系アプリもなく、インド中が大パニック。それでもまぁなんとかなったのは楽しい思い出。

ペイ系アプリが普及した今、「小銭のお釣りがない。アプリ使え」が、最大の難関。まさか路上のチャイ屋に20ルピー札を出して、10ルピーのお釣りがないと言われるとは。
インドのペイ系アプリは、海外のクレジットカードでチャージすることができないので、インドの銀行口座が必須。旅行者や、渡航間もない学生等には難しい。なんとかするしかない。

お釣りのない紙幣に次いで嫌われるのがコイン。一度に出して受け取ってもらえるのは、せいぜい10ルピーコイン2枚、5ルピーコイン1枚くらい。1, 2ルピーコインは端数調整以外では受け取ってもらえない。なお、「パイサ」は、いまや存在しないに等しい。しばらく前までは、飴ちゃんなどでパイサ処理をしていたけれど、現在はレジで切り捨て(だか切り上げだか)処理がされている。

そして今日、新しい問題に直面した。なんと、近ごろの若者は、旧札を認識できないらしい…。ファストフードのカウンターで旧100ルピー札を出したところ、「これ、インドのお金? 初めて見る」と言われた。えぇ…。不安そうで気の毒なので、500ルピー札で支払った。商店やスーパーみたいなところであれば、旧札で何か言われることはないのだけれど。

そのうち、「現金見たことない」世代がやってくるんだろうか。そう遠い将来でもないのかも。

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