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君の話がしたい。

 僕たちはお互いのことを知っているけど、それって知り合いってことかな。ネットで知り合った人と待ち合わせをしている。マッチングアプリじゃないよ。こんなのは今回が初めて。頭が心臓になったみたいにドキドキしたけど、それでも今まで19年生きてきて初めて出会った自分と話が合う人に会えることに分かりやすく言うと浮かれていた。結論から言うと待ち人は来なかった。3時間が過ぎたところで私は家路についた。日はすっかり沈んでしまって、月を探したが見つけられなかった。今日が新月の夜ではないことはチェック済みだ。月にだってそんな日もあるだろうと自分を納得させて、今日も落ち葉をよけながら踊るように歩く。今日待っていた相手は実在するのだろうか。私が小学生のころあたりから気の合う友達が欲しいと無意識に願い続けたせいで怨念が生まれてSNSのアカウントとして表れてしまったのだろうか。それもあり得ない話ではない。それほどまでにあの子と私は好きな作家からニュースに対する意見、さらには体を洗う順番まで一緒なのだ。初めは鳥肌が立った。だが価値観の限りなく近い他人との会話は、私がいまだかつて経験したことがないほどに楽しく私はたちまち夢中になった。それって仕方のないことではないの

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