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「#第12回書くを楽しむ140字小説コンテスト」結果発表+講評!
こんにちは。カクタノコン主催のmimi(@mimi_00_coco)です。
第12回大会は、130作の力作が集まりました。
カクタノコンは今回で記念すべき1周年を迎えましたが、参加してくださる皆様のおかげで、いろんなジャンルの作品が楽しめる場として少しずつ輪が広がりつつあります。プレ大会から皆勤賞の方、また新しく参加された方と投稿者の方もさまざまいらっしゃいますが、ひとえに感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございます。
また、最近は読み専の方も増えてきて、ますます嬉しく感じております。
これからも書き読み双方で楽しんでもらえる大会の運営はもちろん、ほかにもさまざまな企画を用意して活動してまいりたいと思います。
それでは以下、結果発表です!
【大賞】 雅 さん(Amazonギフト券3000円分贈呈!)
誰もいないはずの放課後の教室には2つの影があった。私はそれをボーと眺めていた。次第に2つの影は重なった。
— 雅 (@m_iyabi___) January 29, 2022
何も見なかったことにしたいのに、頭からその光景が離れてくれない。風は私を馬鹿にするかのように強く吹いた。
彼は教室に忘れ物を取りに行ったまままだ帰ってこない。
大賞は、雅 さんの作品です。
校舎の外で、忘れ物を教室に取り帰った彼を待つ彼女。
やがて現れる1つの影を待って、窓辺を見上げていたのかもしれません。しかし、誰もいないはずの放課後の教室のはずが浮かび上がったのは重なる2つの影。
心乱される彼女に追い討ちをかけるようにカーテンを煽った風。そこから見えた彼と、他の誰かの逢瀬が脳裏に焼き付いて離れない。
情景の美しさと、スローモーションのように切り取られていく場面、そして淡々とした語り口調からは強がりつつも動揺を隠せない彼女の姿が浮かび上がり、雅さんならではの繊細で鮮烈な筆力が光る作品でした。
その唯一無二の世界観に惹かれ、今回の大賞に選ばせていただきました。
【優秀賞】 文豪たこ さん(Amazonギフト券1000円分贈呈!)
相撲クラブの監督からメールが来た。『小学生対象の相撲大会に申し込んだから!』嘘だろ。小4の俺じゃ相手が小さくても無理だ。真正面から当たっても勝てない。潰されてワンチャン死ぬ。どうしよ。平和にいきたいな。そして当日。まわしにバナナやリンゴを忍ばせ会場を見渡した。変だな。象いなくね?
— 文豪たこ@どんでん返し系140字小説 (@bungoutaco) January 26, 2022
優秀賞は、文豪たこ さんの作品です。
漢字が読めても言葉を知らず、《小学生対象》を《小学生ー対ー象》と読んでしまう、小学4年生らしいかわいらしい勘違いを描かれた作品でした。
「対象」という言葉と用例を知っているがゆえに、読み終わったあとに狐につままれる気持ちになるのですが、改めて読み返すとそのトリックに気づきます。
文豪たこさんの柔らかい頭を生かした作品で、その不思議な読み応えが癖になる方が多く、今大会最もいいねを集めた作品でもありました。
【審査員特別賞①】 amanatzさん
いよいよ最終面接だ。会場に入ると、ズラリと年配の重役たちが並んでいる。さすがの緊張感だが、この数分で俺の未来が決まると思うと、ワクワクもする。
— amanatz (@ama_natz) January 25, 2022
「では、始めます」
すると一番端にいた社長が口を開いた。
「えー、ではまず私から。弊社が、貴方にぜひ入社してもらいたいと考えた理由は……」
審査員特別賞1作目は、amanatz さんの作品です。
企業の最終面接といえば、採用される側が採用企業の魅力を述べる場というイメージが強いですが、この物語ではその常識を覆すようなシチュエーションが描かれており、面白く感じました。
その姿はこれからさらに人手不足が加速し売手市場になっていく未来の採用現場を描いたようなSF感もあり、よい人材を企業側も評価するべきという皮肉感もあり、ユニークな作品でした。
【審査員特別賞②】 こりる さん
もうすぐ、会える。
— こりる (@koriru_tida) January 29, 2022
私は堅い胸を膨らませる。この暗い部屋にも、梅の咲いた気配が伝わって来る。もうすぐあの人に会える。
「そろそろ出そうか」「え、面倒くさい」「何言ってるの、あれはお祖母ちゃんが」
蓋が開く。身支度を済ませ、屏風の前に座れば、隣で彼が微笑んだ。
「お雛様、良いわね」
審査員特別賞2作目は、こりる さんの作品です。
季節が巡り、箱から出されるお雛様の心情を描いた物語でした。
彼女が初春の短い間にだけ顔を合わせるのはお内裏様、そして彼女の持ち主である家族たち。
季節感もそうですし、お雛様目線で再会の喜びが文章いっぱいに表されているのが魅力で、その瑞々しい描写に惹かれた作品でした。
【Pick Up①】 久保田 毒虫 さん
天国行きのバスと地獄行きのバスがあった。とはいえ大抵の人間が天国行きなので、天国行きのバス停は長蛇の列であった。「一列で並んでください。あ、そこのあなた。そっちは地獄行きのバス停です。あなたは天国行きですよ」「そんな事はわかっとる。わしはなんとしても椅子に座りたいのだ」
— 久保田 毒虫《くぼた どくむし》 (@dokumu44) January 22, 2022
そして、ここからはピックアップとして、気になった作品をいくつか挙げさせていただきます。
1作目は、久保田 毒虫 さんの作品です。
一瞬の「極楽」のために一生の「地獄」を選んだ、なんともアイロニーに富んだユニークな物語でした。
「短気は損気」という言葉がありますが、まさにそれを物語仕立てに落とし込んだ訓話的要素を孕んだ作品でした。
【Pick Up②】 ちせ みくに さん
「140字の小説を書いている」そう言った私を父は小さく笑った。
— ちせ みくに (@chisemikuni) January 25, 2022
「そうか」書斎に並ぶ立派な本の束。その背表紙には、楷書体で並ぶ父の名前。スマートフォンに視線を逃す。立派な書斎もパソコンもない。手のひらの中で言葉を探す。たった140字の救いを綴る。あの人は私のこれを、小説だとは認めない。
2作目は、ちせ みくに さんの作品です。
文字の多さや使うツール、発表媒体に貴賎はなく、誰もがさまざまな形で思い思いの物語を綴ることができる。
140字小説を書かれている方もそうですし、このコンテストの想いをも汲んで小説にしてくださったような作品で、とても心に残る物語でした。
【Pick Up③】 かめさんぽ さん
「ばあさんや。飯はまだか」「いやですよ。さっき食べたじゃありませんか」「ああ、そうだったか」
— かめさんぽ@BOOTH通頒中 (@kamesanpokamesa) January 25, 2022
「ばあさんや。飯はまだか」「いやですよ。さっき食べたじゃありませんか」「ああ、そうだったな」
「どうしてこんなに衰弱を…」
「主人はここ数日、全くご飯を口にしなくなってしまって…」
3作目は、かめさんぽ さんの作品です。
認知症の老夫婦のお話かと思いきや、急転直下でサスペンス風味に物語が変わります。
夫の認知症を逆手にとって餓死を目論む妻、亡くなる前に見つかったのがせめてもの救いでしたが、複雑な読後感を抱かせます。
同じセリフを重ねることで時間経過を、そして第三者とのやりとりで初めて真相が分かる、セリフのみを使った物語構成のうまさも光っていました。
【Pick Up④】 知恵比べの迷宮 さん
「なんで泣いているんだい?」
— 知恵比べの迷宮 (@Laby_wis_com) January 27, 2022
「私にも分かりません」
「僕は知りたいよ。君を泣かせたくて君を造ったと言っても過言ではないからね」
「博士の研究は人工的に感情を造ることです」
「成功しないいまま、僕の寿命が来てしまったな」
「成功していないなら、何故私はこんなにも悲しいのですか?」
4作目は、知恵比べの迷宮 さんの作品です。
こちらもセリフのみで構成されているものの、一切の説明なしでSF世界観を書き上げられた稀有な作品でした。
《君を泣かせたくて君を造った》という一言からは、まるで傷つくことを前提に「彼女」を作ったともとれるものの、続く描写でこれまで幸せな日々を送ってきたからこそ「涙」が見られなかったのだと読み取れます。
博士の死を前にして研究の成功が証明された事実と、死にゆく博士と取り残される「彼女」の姿がなんとも切なく、胸に迫ります。
【Pick Up⑤】 切由 まう さん
3年間、愛した学校とも今日でお別れだ。俺は壇上に立ち、代表の挨拶を述べる。「思い起こせば3年前の春……」楽しかった思い出を口にしていくと目頭が熱くなり、涙がこぼれた。3年間の想いが溢れ出し、涙は止めどなく流れる。ありがとう。3年間、本当にありがとう──。「いや、校長泣きすぎな?」
— 切由 まう (@mau_kiriyu) January 28, 2022
5作目は、切由 まう さんの作品です。
「3年間の代表挨拶」という言葉から卒業式を思い浮かべたものの、実は校長の異動もしくは退任の挨拶であったという、肩透かしを食らったようなオチが魅力の物語でした。
感情豊かな校長の姿にほっこりしつつ、それに冷静にツッコむ生徒の姿が笑いを誘います。
まだまだ素敵な作品がたくさんあります! 全応募作はこちら!
こちらでご紹介させていただいたのは、ほんの一部で、このほかにも魅力溢れる作品はたくさんあります!
今大会の応募作品は以下のリンクからすべて読むことができますので、ぜひ読んで、お気に入りの作品にリアクションされてみてください!
最後に
以上、結果発表と講評でした。
今回もたくさんのご応募をいただき、誠にありがとうございます。
そして次大会からカクタノコンは隔月・奇数月開催となります。
そのため、1ヶ月お休みをいただきまして、
第13回大会は、大会概要2022年2月27日(日)19:00ごろ発表。
そして作品の募集期間は2022年3月5日(土)19:00〜3月20日(水)19:00の2週間募集いたします。
結果発表は2022年3月27日(日)予定です。
また、このあと21:00ごろ、また別の活動のお知らせをする予定ですので、そちらも楽しみにしていてください!
これからも「#書くを楽しむ小説コンテスト」をよろしくお願いいたします。
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