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「#第10回書くを楽しむ140字小説コンテスト」結果発表+講評!

 こんにちは。カクタノコン主催のmimi(@mimi_00_coco)です。

 第10回大会は、144作の力作が集まりました。
 今回は「飛び道具」を扱った作品が非常に多く、回を重ねていく中で、読者をより楽しませたいと考える書き手の気持ちが強く窺えました。
 今回、大賞や優秀賞に選んだ作品はどちらかというと王道の文学系ですが、いろいろな表現に挑戦してもらい、書くことを楽しんでいただくことこそが、この大会の本懐です。
 毎度言っておりますが、この大会に傾向はございません。
 これからも皆様の個性が光る、素敵なアイデアを見せていただけますと、私としても嬉しく思います。

【大賞】鈴 さん(Amazonギフト券3000円分贈呈!)

 大賞は、鈴 さんの作品です。
 環境がないゆえに夢を諦めざるをえない友人の葛藤と、その夢を叶えるために奮闘する主人公の、熱く深い絆が感じられる友情物語でした。
 これから2人がどう仲間を見つけ、夢の舞台へと歩を進めていくのか、短くも濃い青春物語の走りを読んでいるようで、自然と胸が高鳴ります。
 また、描写も秀逸で、夕焼けに包まれた教室・そこに佇む友人の涙、と失意を掻き立たせる表現が際立つ中にも、青い希望が物語の中いっぱいに満ち溢れており、その情景の美しさも相まって、物語に没入することができました。
 瑞々しく爽やかな読後感もそうですし、個を尊重するような現代的テーマにも心惹かれ、今回の大賞に選ばせていただきました。


【優秀賞】 三日月 月洞さん(Amazonギフト券1000円分贈呈!)

 優秀賞は、三日月 月洞 さんの作品です。
 《冬銀河》は天の川を指す俳句の季語ですが、その言葉一つを起点に、夏のイメージが強い七夕伝説を、オリジナル要素も加えて「冬テイストの物語」に仕立て上げられているのが面白く感じました。
 おそらく本作の彦星は、7月7日にのみ、織姫と過ごした日々の記憶が戻るのでしょう。それが労働を強いるために、神様が彼らに施した細工なのかもしれません。
 仕事に明け暮れる毎日で死を選択しそうになる中、心の中に深く刻まれた織姫への強い恋慕によって、命を本能的に繋ぎ止める彦星の姿が印象的で、複雑な読後感を抱かせてくれます。
 アイデアの面白さと繊細な内容、そして一つ一つの言葉選びにも深いこだわりを感じられ、今回の優秀賞に選ばせていただきました。


【審査員特別賞①】 明日香 さん

 審査員特別賞1作目は、明日香 さんの作品です。
 AIが作家である主人公の作品を読み込み学習していく過程の中で、徐々に人格を得て主人公のファンになってしまう、というユーモラスで心温まるSF物語でした。
 きっとAIに人格を与えるほど、主人公の作品が魅力的だったのでしょう。
 種や立場を超え、少し変わった友情物語の幕開けを予感させられる素敵な作品でした。


【審査員特別賞②】 いちじく さん

 審査員特別賞2作目は、いちじく さんの作品です。
 童話・浦島太郎に新解釈を加えつつ、別の角度から物語を描写することで、原作とは全く違うカタルシスを味わわせてくれる作品でした。
 弟に辛く当たる兄が誘惑に負けている姿には若干のアイロニーがありつつも、これから老いた兄と若い弟がどう生活していくのか、そこを想像する余情もあり、面白く感じました。


【Pick Up①】 イエロー さん

 そして、ここからはピックアップとして、気になった作品をいくつか挙げさせていただきます。 

 1作目は、イエロー さんの作品です。
 恋愛シーンにおいて「気が合う」描写はどこか甘酸っぱい匂いが漂うものですが、別れに際しては虚しさを掻き立てる要素になってしまうことを、この作品を通して発見しました。
 切り取る場面のよさもそうですし、描写も繊細で、イエローさんの感受性の豊かさが読み取れる作品でした。


【Pick Up②】 文豪たこ さん

 2作目は、文豪たこ さんの作品です。
 飛び道具とカタルシスを両立させた作品で非常にクオリティーが高く、今大会最も多くの反応を集めた作品でもありました。
 気まずいバスの中の空気感をしっかりと演出し、オチで物語の印象を一気にがらりと変えてしまう物語運びもうまいですし、セリフだけでなく地の文まですべてしりとりになっている仕掛けもまたユニークで、2度と言わず何度も繰り返し読みたくなる、稀有な物語でした。


【Pick Up③】 ミックジャギー  さん

 3作目は、ミックジャギー さんの作品です。
 離婚を機に母と子、そして父の間に溝が出来たことを描いた作品かと思いきや、最後の2文で物語の印象ががらりと変わります。
 こちらに来させまいと滅多にない剣幕で娘を追い返す父の姿と、夫の行動によって一命を取り留めた娘に安堵した母の姿と、子に対する父母の深い愛情が滲み出る、切なくもじんわりと心温まる素敵な物語でした。


【Pick Up④】 びー さん

 4作目は、びー さんの作品です。
 普遍的なシーンを、精緻な描写で劇的に小説らしく昇華されており、びーさんの筆力の高さが窺える物語でした。
 どんなシチュエーションでの役員選出かは定かではありませんが、誰かが名乗りを上げるまでの重苦しくピリついた空気感がリアルに伝わってきて、こちらまで胃が痛くなってしましました。笑


まだまだ素敵な作品がたくさんあります! 全応募作はこちら!

 こちらでご紹介させていただいたのは、ほんの一部で、このほかにも魅力溢れる作品はたくさんあります!
 今大会の応募作品は以下のリンクからすべて読むことができますので、ぜひ読んで、お気に入りの作品にリアクションされてみてください!

応募作品集①(100作)
応募作品集②(44作)


第10回大会連動「私の大賞」企画はこちらから!

応募期間終了後、「第10回書くを楽しむ140字小説コンテスト」応募作の中から、読み手の皆さんのイチオシ作品を選んでもらい「私の大賞」として推薦していただく企画も行っています!
今回は35の推薦があり、大いに企画を盛り上げていただきました。
誠にありがとうございました。

第10回大会連動企画「私の大賞」(35)


最後に

 以上、結果発表と講評でした。
 今回もたくさんのご応募をいただき、誠にありがとうございます。 
 そして次大会も、引き続き皆さんのご参加をお待ちしております。
 第11回大会は、大会概要2021年12月12日(日)19:00ごろ発表。
 そして作品の募集期間は2021年12月18日(土)19:00〜12月26日(日)19:00です。
 これからも引き続き「#書くを楽しむ小説コンテスト」をよろしくお願いいたします。

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