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「#第6回書くを楽しむ140字小説コンテスト」結果発表+講評!

 こんにちは。カクタノコン主催のmimi(@mimi_00_coco)です。

 第6回大会は、128作の力作が集まりました。
 全体の講評として、今回は季節が夏を迎え、「怪談もの・ホラー」が特に盛り上がっている印象を受けました。
 また、滑らかな読後感よりも、物語の前後半で大きくギャップをつけるような、オチにこだわる物語が増えてきたようにも思います。
 どちらの展開であっても素敵であることは間違いないのですが、今回はその中でも予想外のオチに思わずにっこりとさせられた、そんな作品を大賞に選ばせていただきました。

【大賞】  まちこ さん (Amazonギフト券3000円分贈呈!)

 大賞は、まちこさんの作品です。
 「あちらの方からです」と告げられドリンクを渡される、とバーでの一幕をイメージさせるところから物語が始まり、慣れない状況に戸惑う主人公にほっこりとさせられます。しかし、最後のセリフで一変。このやりとりが、学校の教室内での子どもたちのやりとりであったことが分かり、さらに頬が緩んでしまう作品でした。
 加えて、2文目に《指さされた》とややバーテンダーらしくない案内のしかたが描くなど、ちょっとした違和感を伏線として仕込ませておくギミックのよさも光ります。
 最後まで全く読めない展開と、くすりとくる読後感に惹かれ、大賞に選ばせていただきました。

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【優秀賞】 内山 すみれ さん 

 優秀賞は、内山 すみれさんの作品です。
 お盆の風習である「精霊馬」を題材にした物語でした。
 幼いころ憧れた本物の王子様には出会えなかったけれども、生前愛する夫に出会い、白馬に乗ることはできなかったけれども、死後はキュウリの馬に乗って、お盆に子孫たちに会いに行く。
 主人公が幼少期から成年期、そして死後に至るまでの長い人生を140字にギュッとまとめてありながらカタルシスは十分、そしてこの季節ならではの味わいもあり…と、ひとえに手腕の高さが窺えます。
 このあと、ナスの牛に乗ってゆっくりと帰っていく夫婦を想像するのもまた乙ですし、死後を題材に扱った作品は多くありましたが、明るい読後感が珍しく一際目立っていたこともあり、優秀賞に選ばせていただきました。

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【審査員特別賞①】 kuutamo さん

 審査員特別賞1作目は、kuutamoさんの作品です。
 上司の何気ない一言が、主人公の心を深くえぐってしまう「言葉の暴力」を描いた物語でした。
 上司が無神経すぎると思う方もいれば、「まだできないんです」と主人公が一言返せば上司も黙ったろうにと思う方もいるかもしれません。
 しかし、上司を気遣う「笑顔」・本音の「泣き顔」と表情の対比をしっかりとつけたことで彼女が苦しんでいることも伝わり感情移入がしやすく、難しい言葉の問題を読者に真剣に考えてもらうような工夫がなされていました。
 140字の中で社会派小説らしい深い描写が施された、稀有な作品だったように感じます。

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【審査員特別賞②】 桃乃はな さん

 審査員特別賞2作目は、桃乃はなさんの作品です。
 コロナの流行で人と疎遠になり、失うものも多く、歩みを止めてしまいそうになる主人公と、スマートフォンを買って孫に電話するという新しいことを始めた祖母。そんな祖母の姿を見て、停滞感と孤独を強く感じていた主人公がどれだけ励まされたことか、想像に難くありません。
 「人との繋がり」、そして「逆境にめげずチャレンジする精神」を人生の先輩に見せつけられる、とてもハートフルな作品でした。

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【Pick Up①】 深月凛音 さん

 そして、ここからはピックアップとして、気になった作品をいくつか挙げさせていただきます。 

 1作目は、深月凛音さんの作品です。
 なぜ主人公が音声会話ソフトの作成を幼馴染に頼んだのか、意図は不明ですが、主人公が「好き」といえば「ボクモ」と返すようプログラミングされていた幼馴染、そしてその言葉をピンポイントで発した主人公、最初にある《いつも通り》という言葉から常に一緒にいることが窺え、そんな2人だからこそ通じ合える部分があったのかもしれません。
 機械音声に紛れるように、最後主人公の「好き」に呼応して、幼馴染が「好き」と発する部分も微笑ましい、素敵な作品でした。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                     
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【Pick Up②】 群鳥安民 さん

 2作目は、群鳥安民さんの作品です。
 こちらは猫と人間、異なる種で20年添い遂げたカップルの愛を描いた作品でした。
 物語を当事者視点ではなく、人間側の友人である第三者の視点から書くことで、読者に無理にその奇妙な設定を飲み込ませて感情移入させることもなく、あえて一つ壁を隔てて違和感を抱きながら読み進めさせることで、最後に現れる2人の「真の姿」には「驚き」を優先することができ、卓越した読ませ方が光ります。
 設定のよさもそうですが、きちんと恋愛ものとしてのカタルシスもあり、純粋に書き手の高度なテクニックがよく現れた作品だったように感じました。

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【Pick Up③】 八木寅 さん

 3作目は、八木寅さんの作品です。
 「思い込み(偏見)」を題材にしたユニークな物語でした。
 私自身、文章を読み進めていく中で、主人公が《雪男》と発言したことに特段の違和感も抱かず、その「思い込み」に主人公同様ハッとさせられました。
 そういったバイアスをファンタジーの世界に落とし込んで、読者に追体験させていくような仕掛けが面白く、「体験型小説」としても効果的に機能していた作品でした。

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【Pick Up④】 泥からす さん

 4作目は、泥からすさんの作品です。
 母親にプレゼントをしたい子どもが出した、かわいらしい仕事の募集広告かと思えば、実は仕事を求めているのは子どもの父親のほうであるという、なんとも言えない切実さが漂う作品でした。
 母親とも仕事の件で喧嘩をしたのかもしれませんし、息子に仲直りがしたいと素直に本音を打ち明けるさまも頼りなさを感じる父親ではあるのですが、子どもにとってはそんな彼でも「強く」映っており、どこか憎めない父親像が浮かび上がってきます。
 今はつらい時間かもしれませんが、きっとこの家族は後々幸せになっていくのかも…?という期待も垣間見える、魅力的な作品でした。

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まだまだ素敵な作品がたくさんあります! 全応募作はこちら!

 こちらでご紹介させていただいたのは、ほんの一部で、このほかにも魅力溢れる作品はたくさんあります!
 今大会の応募作品は以下のリンクからすべて読むことができますので、ぜひ読んで、お気に入りの作品にリアクションされてみてください!

応募作品集①(100作)
応募作品集②(28作)

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第6回大会連動「私の大賞」企画はこちらから!

応募期間終了後、「第6回書くを楽しむ140字小説コンテスト」応募作の中から、読み手の皆さんのイチオシ作品を選んでもらい「私の大賞」として推薦していただく企画も行っています!
今回は14の推薦があり、大いに企画を盛り上げていただきました。
誠にありがとうございました。

第6回大会連動企画「私の大賞」(14)

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最後に

 以上、結果発表と講評でした。
 今回もたくさんのご応募をいただき、誠にありがとうございます。 
 そして次大会も、引き続き皆さんのご参加をお待ちしております。
 大会概要は2021年8月15日(日)19:00ごろ発表。
 そして作品の募集期間は2021年8月21日(土)19:00〜8月29日(日)19:00となっていますので、お気をつけください。
 これからも引き続き「#書くを楽しむ小説コンテスト」をよろしくお願いいたします。

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