「#第2回書くを楽しむ140字小説コンテスト」結果発表+講評!
こんにちは。カクタノコン主催のmimi(@mimi_00_coco)です。
第2回大会は160作の力作が集まり、今回も季節を感じながら大いに楽しませていただきました。
全体の講評として、今大会は「青春もの」がひときわ多く集まった印象です。
卒業シーズンの開催だったこともあり、街なかやご近所で卒業証書を持った学生さんや華やかな袴姿の大学生を見かけて、思いをはせる方も多かったのかなと。
中には自身が、あるいはお子さんがそうだったという方もいらっしゃるかもしれません。
春は出会いと別れの季節とはよく言いますが、学生時代は特にそういった場面に一喜一憂することが多かったと思います。
そんな多感な青春時代を独自の目線でみずみずしく切り取った2作を、今回は大賞と優秀賞に選ばせていただきました。
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【大賞】 市川 摂 さん (Amazonギフト券3000円分贈呈!)
大賞は、市川 摂さんの作品です。
ある少年が同級生の少女の意外な一面を知り、恋に落ちてしまう瞬間を瑞々しく、そしてちょっぴり艶やかに切り取った作品です。
きっと彼は、深い意味もなく彼女をぼんやりと眺めていただけなのでしょう。
しかし、髪を耳にかける仕草、そしてその耳には無数のピアスの穴、それを隠すでもなく少年が気づいたことを知って笑う彼女。小説ですが、まるで映像作品を見ているかのような視点誘導のしかたが巧みで、非常に読ませ方がうまいです。
また、少年が少女の一つ一つの動作にドギマギすると同時に、「何気ない存在」だった彼女が「意識する存在」になったことを、最後の《生唾を飲み込んだ》という表現に凝縮されています。
このあと2人はどうなってしまうのか、先が気になるような内容だったのもよく、何か長編小説の触りを読んだような心地になる青春物語でした。
まさに「小説」のタイトルを冠したコンテストにふさわしい作品です。
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【優秀賞】 kota さん (Amazonギフト券1000円分贈呈!)
優秀賞は、kotaさんの作品です。
前大会で申し上げましたように、「いい作品をいい」というのが、本コンテストのモットーですので、今回も引き続き受賞作の1つに選ばせていただきました。
「ボタンをもらえた!告白成功!」と主人公が舞い上がった次の瞬間、実は先輩の想い人は友人のほうだったと知る、まさかの展開。「青春!」「切ない!」、そんな声が思わず飛び出してしまうような甘酸っぱい物語でした。
第二ボタンは心臓に近い場所にあるため、「自分の心を差し上げます」という意味で大切な人に贈るようになったとの説もありますが、「紹介の報酬」となってしまったボタンに意中の彼の心はなく、ガラクタ同然に成り下がってしまうのも、さらなる虚しさを掻き立てます。
そのリアクションの多さからも、多くの読み手の感情を揺さぶる作品だったことは間違いありません。
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【審査員特別賞①】 うさぎのしっぽ さん
審査員特別賞1作目は、うさぎのしっぽさんの作品です。
春休み・夏休み・冬休み、この期間に誕生日という人は、なかなか学校の友人から誕生日を祝ってもらえない過酷な運命を背負います。
余談ですが、私もその1人でした。笑
誰しも誕生日は少しだけ、特別な日であるはずです。
特に子供時代は学校の友人たちに祝われることなど、小さなコミュニティー内での自分を意識しがちですが、大人になって見える世界が広がり、主人公の誕生日に対する価値観は変わったのでしょう。
自分が生まれた日という「特別感」を、同じく春に生まれた多くの命たちが後押ししてくれるような描写が美しく、印象的な作品でした。
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【審査員特別賞②】 どろろ さん
審査員特別賞2作目は、どろろさんの作品です。 穴があったら入りたい状況とは、まさにこのことでしょう。笑
夏目漱石が「I Love You」を「月が綺麗ですね」と意訳したという逸話から、この言葉が恋心を伝えるものとして使われるようになりました。
好きな子と2人きりのシチュエーションに舞い上がってしまった主人公は、告白だと早とちりしてしまい、「死んでもいいわ」と告白を了承したことを意味する定番の返し文句を言ってしまいます。
しかし、何も知らず純粋な気持ちで月の美しさをたたえた彼女からスルーされてしまう始末。さらには突然「死んでもいい」と過激な表現をしたことで、もしかすると「変な人」というレッテルを貼られてしまったかもしれません。
美しい情景の中で繰り広げられる、すれ違いコメディーというギャップの付け方もよく、少年のかわいらしい勘違いにこちらまで笑顔になってしまうお話でした。
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【Pick Up①】 いちじく さん
そして、ここからはピックアップとして、気になった作品をいくつか挙げさせていただきます。
まず1作目は、いちじくさんの作品です。
「大切な女性=恋人」と序盤でミスリードさせながら、物語後半でその女性とは主人公の祖母だったと分かります。
おそらく手動の車椅子を使われていたのだと思いますが、自身の体力もあまりなく、かといって他者に頼るのも申し訳なさがあり、続く坂道の先にある桜を見るのはもちろんのこと、家の外に出ることさえ億劫になっていたのでしょう。
しかし、甲斐甲斐しい孫の助けと、丘のインフラが整ったことにより、祖母も花見を楽しむことができます。
きっとこの経験が契機になって外に出ようという意識が高まり、彼女の生活はより豊かなものになっていくことと思います。
言葉にこそ書かれていないものの、おばあちゃんの笑顔が浮かんできて、こちらも心がほっこりしてしまう温かな物語でした。
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【Pick Up②】 color/fabric さん
2作目は、color/fabricさんの作品です。
「チョコの数字=カカオの含有率」ということで、高いほど好きな相手へ想いが届くという、若者ならではのジンクスがあったのでしょう。
しかし、ご存知のとおり、ハイカカオチョコレートはパーセンテージが高いほど苦くなっていきます。
主人公は誰よりもカカオ含有量が多いものを選んで、「私があなたのことを一番好き」という格別の甘い気持ちを込めて相手に渡すものの、チョコレート自体は全く甘くない。
渡した相手の《苦い顔》というのはチョコレートによるものだけなのか、それとも告白の結果にも関わるものなのか。
そこを読者に想像させるのも面白く、color/fabricさんのユーモアセンスが光るものとなっていました。
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【Pick Up③】 水沢ながる さん
3作目は、水沢ながるさんの作品です。
捨てても捨てても戻ってくる《呪いの人形》の習性を逆手にとって、お金稼ぎに利用してしまうという設定がユニークでした。
一見ホラーかと思いきや、実はコメディーというギャップもよく、「本当に怖いのは人形ではなく人間だ」という、最後のオチもしっかりとハマっています。
珍しい商品なだけに何回も同じものを出してしまえば、いつかバレてしっぺ返しがきてしまうのが関の山ですが、そこを含めて皮肉的に書いてあるところが、この作品のにくいところでもあります。
設定の面白さや題材の生かし方のうまさが光る、魅力ある作品でした。
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【Pick Up④】 樫呂木 さん
4作目は、樫呂木さんの作品です。
ロボットに感情が生まれて…というSF作品と思いきや、最後にこれらがすべて生身の人間視点から書かれたものだと分かります。
この二段構成が素晴らしく、最初に「ロボット」というフィルターをつけることで、「人間」である読者との距離を空けつつ、のちに読者と同じ存在がこれらの仕打ちを受けていると明かすことで、より胸に迫るような演出をなされていました。
《私はロボット》というのは、「親子」という絆を守りたいと考える彼女が、本心を封印するために唱える、まじないのようなものだったのでしょう。
しかし、その堰が切れてしまったとき、何が起こるのか。
そこを想像すると余計に虚しさがこみ上げてくるような、複雑な作品でした。
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【Pick Up⑤】 夏田 さん
5作目は、夏田さんの作品です。
最後に、ガツンと頭を殴られたような衝撃の走る作品でした。
《病気でそろそろ死ぬ》という彼女の発言は、嘘なのか。
それとも吐いた嘘は叶わないという、ジンクスにのっとった願掛けなのか。
その解釈を読者に委ねるのが面白く、これから2人の間でどのようなやりとりがなされるのか、そしてその関係性がどう変化していくのかも気になるものとなっていました。
あえて全体を淡々とした語り口で紡ぎ、最後に大きなインパクトを残すといった構成面にも惹かれるものがあり、記憶に残りやすい作品だったように感じました。
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まだまだ素敵な作品がたくさんあります! 全応募作はこちら!
こちらでご紹介させていただいたのは、ほんの一部で、このほかにも魅力溢れる作品はたくさんあります!
今大会の応募作品は以下のリンクからすべて読むことができますので、ぜひ読んで、お気に入りの作品にリアクションされてみてください!
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第2回大会連動「私の大賞」企画はこちらから!
応募期間終了後、「第2回書くを楽しむ140字小説コンテスト」応募作の中から、読み手の皆さんのイチオシ作品を選んでもらい「私の大賞」として推薦していただく企画も行っています!
今回は11作の推薦があり、大いに企画を盛り上げていただきました。
誠にありがとうございました。
第3回大会連動企画「私の大賞」(11作)
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最後に
以上、結果発表と講評でした。
今回もたくさんのご応募いただき、誠にありがとうございます。
そして次大会でも、引き続き皆さんのご参加をお待ちしております。
次回、第3回目の大会概要は2021年4月11日(日)19:00ごろ発表。
そして作品の募集期間は2021年4月17日(土)19:00〜4月25日(日)19:00となっています。
また、次大会開催までの間に余裕がありましたら概要発表ののちに、「140字小説の書き方のポイント」という記事を掲載いたします(多忙のため第4回に持ち越しになるかもしれません…)。
これからも引き続き「#書くを楽しむ小説コンテスト」をよろしくお願いいたします。
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