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【感想】フリーダム/ジョナサン・フランゼン 森慎一郎・訳 早川書房

ジョナサン・フランゼンの『フリーダム』は現代アメリカにおける❝意識高い系❞中流家庭を追体験できる素晴らしい小説だった。

上から目線の大きなお世話感とリベラルの偽善。

そんなリベラルの両親を持つ息子のジョーイは共和党を支持するが、その理由が
共和党のどこがいいって、連中はリベラルな民主党のやつらと違って庶民を見下していない
理屈ではない感情的な政党支持の理由に、アメリカの“庶民”がトランプ大統領を選択したのも宜なるかなと思わずにいられない。

メガノベルといわれる長編だが、長く読み続けていると主人公家族の心象にどっぷり浸かってしまい情もうつるというもの。
家族の感情と自分の感情がところどころでカチと音をたてるようにシンクロする部分が胸を打ち、激しく情緒を揺さぶられた小説だった。
読後はしばらく他の小説が読めなくなりそう。

 家族の歩みに現代アメリカのキーワード(個々人の政治信条、宗教、人種、ドラッグ、階層意識、倫理観欠如の企業、そして郊外のコミュニティなど)が散りばめられ、一個人から見たアメリカ社会のライド感が刺激的な一冊。

パティとウォルターのバーグランド夫妻は、ミネソタ州セントポールの善き住人だった。てきぱきとして愛想がよく、理想的な母親と見えるパティ。柔和で環境保護活動に熱心なウォルター。二人の子供とともに、夫妻は幸せな世界を築き上げようとしているかのようだった。しかし、二十一世紀に入ったころ、バーグランド夫妻にはいぶかしげな眼差しが向けられていた。なぜ夫妻の息子は共和党支持の隣家に移り住んだのか?なぜウォルターは石炭業界関連の仕事に就いたのか?ウォルターの親友リチャード・カッツとは何者か?そして―なぜパティはあんなに怒りに満ちた人間になってしまったのか?現代アメリカを代表する作家ジョナサン・フランゼンが雄弁な筆で描き上げる、よりよく生きようともがく人間たちの苦しみと喜び。皮肉と感動に満ちた世界的ベストセラー。全米批評家協会賞最終候補選出。

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フリーダム
ジョナサン・フランゼン/著 森慎一郎/訳 
早川書房 税込価格 4,400円
ISBN:978-4-15-209347-9  

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