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古時計|見知らぬ人との会話の記録

 2018年7月27日 茨城県結城市

 電池切れで使ってなかった腕時計の電池交換をしようと家電量販店やホームセンターの時計売り場を巡るも、どこも時計を見た瞬間に「これはメーカーに送らないとダメですね」と言われた。

帰り道、Google mapで「時計屋」と検索すると駅の近くに小さな時計店を見つけた。駐車場がなかったが隣のシャッターが閉まった中華料理屋の軒先に車を停めて入店した。

5坪ほどの店内に入ると中央のショーケースにネックレスなど宝飾品が並び、壁一面にはたくさんの壁時計が同じ時を刻んでいた。
左奥のカウンターで先客と談笑している店主が見えた。
僕と目があったときに壁時計が一斉に4時である事を告げ、店主の「いらっしゃいませ」の声はかき消された。

カウンターに向かい、「この時計の電池交換をお願いしたいのですが」と腕時計を差し出すと、「このメーカーだと一般の電池とは違う電池使ってることがあるので、それだとウチではお預かりになりますね〜。とりあえず電池確認するので中を見てみましょう」と、主人は拡大鏡を掛けながら僕の差し出した時計を手に取った。

ご主人は「よいしょ」「よっと」とひとりで掛け声をかけながら作業をしている。
僕にはそれがたまらなく可笑しくて、笑いを堪えようと唇を噛みながら視線を壁の方に向けた。
すると一台の壁時計だけが3時12分を指していた。どうやらその時計だけは時を刻むのをやめているようだった。よく見るとかなり古そうで、振り子のところには丸めた紙が無造作に詰め込まれていた。

作業中のご主人にその時計だけ止まっているのは何故ですか?と尋ねてみた。

「ああ、これね。これはウチが創業した時からあって売れ残ったままなんですよ。特に深い意味はないんですけどね〜」と笑っていた。

時計の電池は在庫があるもので、交換できますとのことだった。

あっという間に交換が済み、時刻と日付を合わせてもらい、代金を支払った。

僕はお礼を言って店を出ると店の前は僕の車のせいで渋滞していた。

本当に申し訳ない。

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