AD24「テクサ:新しい世界で渦(UZU)をつくる」
僕は、今年の2月から株式会社テクサの社外取締役をやっています。
この会社は、ネット配信事業と、ネットで活躍するライブ配信者、ユーチューバーのマネジメントをやっている会社です。
僕がテレビの世界に四半世紀いて、今はネット配信の会社をやっている。
それってこの連載のタイトルのように「“テレビの果て”に角田はついに行ってしまったんだなー」って、きっとテレビのフレームの中で生きているテレビマンたちは思う(揶揄する)でしょう。
でも歴史を見ていても、イノベーションは、いつも文明の果て=周縁で生まれます。
それは文明の中心にいると、その文明を保守することが目的になって、その文明を更新することが難しいからなのです。
逆に周縁にいる者は、その文明の圧力から弾き飛ばされた分、その文明を外側から俯瞰して見ることができます。当然中心にいる時ほどの、お金も、権力もありませんが、その分自由です。
そこで新たなメディアが、芸能界が、広告モデルが、中心にいる時には予想だにしない形で、生まれてくると僕は思っているのです。
いや、すでに生まれていますよね。ユーチューブ、ネットフリックス、AbemaTV、SHOWROOM…そこと既存のテレビ、芸能界はどう向き合うのか?どう変化するのか?
そんな話をしてみたいと思います。
今年の決算を見ると、おしなべてテレビ局の状況はよくありません。
テレビの中心にいる人たちと話すと、その危機感は半端ないです。
あるテレビ局なんか、ドラマが好調だったりして、視聴率争いも10年前にくらべれば、だいぶ他局よりも優勢だったりするのに。営業利益がガクンと落ちているのです。
なぜか?を話すと、だいたいこういう言い分が出てきます。
「スポットCMの落ち込みがひどい」
さらに愚痴レベルになると、自分たちの業界の浮沈を他の業界と比べるのです。
「レコード会社はやばい。新聞はもっとひどい。出版社はさらにひどい」
そんな話ばかりです。
でも、その議論を聞いていると、僕はすごく違和感を感じてしまうのです。というか、そもそもその違和感を2年前に感じたから、テレビ局を辞めたわけなのですが。
というのは、なぜそうまでして、その組織体を守る必要があるのでしょうか?
あなたがその組織体の経営者というのならば、わかります。その組織体をもっともっと成長させたいと思うのが、あなた自身=経営者ですから。
でもそういう風にある組織体に所属している人たちが、自分の住んでいる業界や、自分が拠っている組織体の危機を語る時、このままでは、自分たちが沈んでしまうという論調にいつもなるのです。
僕もかつて会社という組織体に拠って生きているサラリーマンだった時、こんな話がありました。
僕が所属する部署の上長、N部長と面接がありました。その際に今の組織の問題点を挙げてみようと。
僕は具体的に意見を述べたつもりです。
するとその部長はこういうのです。
「もっと若手を活用しよう!ってことだよね。」
僕の言った具体策一つ一つを、検討しようとならないで、なんとなくの一般論でまとめるって、その知性の無さとやる気のなさに、本当に辟易しましたが、それ以上に気になった点は、
若手を活用しよう!
って点です。確かに若手にもチャンスがあり、若手がもっと活躍すれば。会社は伸びるかもしれません、スポットCMの出向量は増えるかもしれません。
でも、その若手を活用する、ということは、要するに、
N部長、あなたがいらないってことなんですよ!
ってことなのです。
そんな風に僕は思ってしまいました。
こんな知性とやる気はない人が年功序列的に部長をやっている会社に未来はないじゃないか、そんな人が部長だから、そりゃ若手は活躍できないよな。
つまり若手を活躍させようって言っている年配者が、その若手の活躍の一番の阻害になっている。
まあ、これはどんな職場でも、どんな組織体でも、どんな業界でも起こっていることなのでしょうが、つまりこれが文明の中心で起こってしまうことなのです。
でも、だからって僕は、というか僕ももはや若手ではない年齢なので、感情で言えば、なかなかチャンスが無い若手の立場より、自分の立場に固執したい部長の方にむしろ同情的です
会社に滅私奉公してきて、いざ自分が歳とったら、若手に席を譲れよ!
老兵は去れよ!
そんな若手の声が聞こえてきます。
でも言われる方になってみてください!
その人にだって人生が、あります。
明日死ぬってわけじゃない、家族だって生活だってある。
今までそれを保守するために、若い時分から自分の人生を会社に預けて、犠牲にして、その人生の担保が欲しいから、がんばってきたんじゃないか?
なのに、それを、いざ年取ったら、奪われるなんて、それは耐えられないよ!
そんな“世界の中心”にいるN部長の声が、弱々しい歳とったおっさんの内なる声が、僕には聴こえてくるのです。
だったら、どうすればいいんだろう?
僕は、自分も考えて、考えて、決めたのでした。
世界の中心を出よう!
その今ある既存のフレームから外に出て、そのフレームの中で培ったノウハウや経験やテクニックを、その中心の権力闘争に活用するのではなく、そのフレームの外側に新たなフレームを作ればいいのです。
そして時代は変わっています。
外側に新たに作るフレームとは、今までのように壁で囲まれたような閉鎖的なビジネスモデルではありません。渦(vortex)を生み出すのです。
おもしろいヒトモノコトを中心に渦を生みだして、そこにさらにいろいろなヒトモノコトを巻き込んでいくことです。
以上のことは、拙著『13の未来地図 フレームなき時代の羅針盤』で詳しく書いたので、ぜひお読みください。
そしてそんな新しい渦(vortex)を産み出すことを、今テクサでやっています。
8月28日には新木場Studio Coastで、まさに渦を生み出すライブイベント《All-Star Creators Party UZU祭り》を開催します。
テクサの社長の飯田祐基はまだ26歳。
でもその考え方、発想にはかなり先見の明があります。
彼はそんな渦を作ることをユーチューバーやネット配信者などのインフルエンサーたちと一緒にやっています。僕が彼と出会ったのは昨年末でした。
飯田社長と最初に会った時、彼は言いました。
「なぜ若い人はユーチューブを見て、テレビを見ないのか?」
僕が、答えに窮していると、彼は即座に答えたのです。
「テレビは、はじまらないから」
え?
僕は一瞬意味がわかりませんでした。
テレビははじまらない。
一体どういうことなのでしょうか?
すると飯田社長はその真意を説明しだしたのです。
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