見出し画像

AD3「プライベートな想いを、パブリックにする」

僕は長年テレビ番組を作ってきました。
入社した頃は、例えば深夜番組とかでマニアックな自分が好きな番組を作ってみたかったものです。
でもそんなことを言っていると、僕の制作現場の師匠には、若い時分よくこう諭されました。
「まずゴールデンでメジャー番組をヒットさせたら、深夜でマイナーな好きな番組やれるよ」と。
テレビ局はビジネスです。テレビ番組の存立理念で一番大事なものは、それは視聴率です。
視聴率が悪いと番組は打ち切られる。それを阻止するためにも僕らは出演者の方とどうやれば視聴率が取れるか?日々試行錯誤を繰り返し、毎週毎週戦っているのです。そのために例えばメジャーなタレントさんを出演させたり、今話題のトピックを取り上げたり、(僕は大嫌いですが)スキャンダルめいたことを話題にしたりもします。

なぜって、そうすると視聴率が上がるからです。好むと好まざるとにかかわらず、好きでも嫌いでもそういうメジャーな番組を作らなければ、番組は終わってしまうからです。

視聴率競争に奮闘しながら、テレビを作り続けて2016年、TBSを辞め、“テレビの果て”にいる身となった今、はっきりと感じたことがあります。それはずーっと続いていた“違和感”です。その違和感とは、
「ずーっとテレビの中で、メジャーとマイナーという概念の間を行ったり来たりしている」
ことです。
メジャーは、視聴率獲るけど好きくない。
マイナーは、好きだけど視聴率獲れない。

というテレビ界の傾向がどうも僕には腑に落ちなかったのです。
「何なんだ?ある人がメジャーとかマイナーとか関係ないんじゃないか?
その人が素晴らしければそれで十分じゃないか?」

ところが数日前にあるきっかけで、それがすっきり晴れたのでした。
2016年の夏は話題の映画作品が多かったです。特に『シン・ゴジラ』と『君の名は。』
いろんな人が、いろんな意見を述べています。その中で糸井重里さんが『ほぼ日』で『君の名は。』について想いを綴っていました。オリジナリティ溢れる視点とともにあの素晴らしい映画を的確に評していましたし、僕はその文章に感動しました。

でも、糸井さんが書いていることは、実は僕も思っていたこと。
僕も『君の名は。』を観て、本当に同様なことを感じたのです。
で、それをブログに書いたり、ツイッターでつぶやいたりもしました。
でも『ほぼ日』の糸井さんが書いた文章と僕の文章には明確な差があります。
一体なぜなんだろう?なぜ同じことを感じているのに、他者への伝わり方が違うのだろうか?読み比べてみてふと気づきました。

ここから先は

1,747字

¥ 200

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?