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BC44「伝え方は1割」

[水道橋博士のメルマ旬報 vol.45 2014年9月10日発行より一部改定]

突然ですが、やりたいことがあったのにできないときって、「実は○○しようと思っていたのですが・・・」って弁解することってよくあるじゃないですか?

皆さんはありませんか?

僕は結構ありました。

例えば会議中に上司から「なにか発言ありませんか?」と求められても発言しなかった(できなかった)とき、あとで「実はあのとき発言しようと思ったのですが・・・」とか弁解したりします。

でも僕は実は、"実は"って本当は無いんだと思うのです。

例えば僕らのテレビ業界で言うと、入社したての若い頃の修業期間であるアシスタントディレクター(通称AD)のときって、自分の会社の机と、担当する番組のスタッフルームが別々に離れていたりする場合があるのですが、自分の机には、当然近くに先輩がいたり上司がいたり、部長がいたりするわけです。それが居心地が悪くて、なのでついつい結構番組スタッフルームの方に長くいたりして、めったに自分の机の方には出向かないこととかよくあるのです。

そういうときには上司に注意されます。

「君の机はこっちにあるんだから顔を出しなさい」

するとAD君は答えるわけです

「すいません、本当は自分の机に顔を出したいのですが、実はいろいろシゴトが立て込んでいてなかなかスタッフルームを外せないんです」と。


ところがですね、結局それは言い訳なのです。嘘なのです。頑張れば本当は自分の机に行けるわけです、でも何かと理由を付けて、寄り付かないわけです。本当はただたんに自分の机のポジションが自分より偉い人が多くて居心地が悪いから寄り付かないだけなのです。それが真実です。

実は、って言ったあとの○○は嘘で、実は、上司がうざいから行かないことが、実は本当なのです。

なぜわかるか?って。それは僕もそうだったからです(笑)。

人は、結局おこなった行動がそのままのその人のそのままを表しているんだと思うわけです。
なので会議中の「実はあのとき発言しようと思ったのですが・・・」って言い訳は、本当にただの言い訳です。少なくともその人の中で、発言したいという意思より、恥ずかしいのか面倒くさいのか、意見が無いのか、それは分かりませんがいずれにしてもそれらの思いの方が、発言するという意思より上回っているというのが、結局のところ真実なんだと思います。

何が言いたいのかと言いますと、結局人は外見だったり言動だったりという、その人の外面の見た目だけが真実なんだと思うのです。

なので仮になにかを行うときに内心我慢していれば、その我慢はその人の外面に結局表れてしまうんだと思います。

つまらない顔をしている人は多分本当につまらないと思っているからつまらない顔をしているんでしょうし、内心怒っているなら、やっぱり怒っている表情が出てしまいますし、仮にそれを隠そうと努力しているとしても、その人の言動を細かく見ていると、結局その人の怒っているという“きざし”は結局どこかで出てしまうんじゃないかと思います。

以上は、僕が勝手に思っていることです。なので間違っているかもしれません、あくまで僕の思いなのかもしれませんが、例えばある番組のスタッフが番組を辞める場合、特にシゴトがハードな番組だとADは頻繁に辞めちゃうのですが、そのとき僕は辞める彼or彼女の辞める理由をつい考えてしまいます。

「自分がこの番組のハードさに付いていけないので辞めさせてください」という理由ならばそれはそれ仕方の無いことなのですが、中にはそれを逆恨みして、「わたしにつらい仕打ちをしたこの番組、こんな番組終わっちゃえばいいんだ」って思って恨みながら辞めて行くスタッフも中にはいるのです。それはすごく不幸なコトです。


さっきのすべては外面に出てしまうという意味では、どんなスタッフでも一人でもその番組を恨んでいる人がいれば、その番組への負の思いは結局電波に乗って、視聴する皆さんに何かしら伝わってしまうんだと思うのです。そして本当にその番組は終わってしまうモノなのです。

なので僕はいつもこんなふうに思っています。いろんなスタッフの皆さん、いろいろハードなことや嫌なことや厳しいことはあるだろうけど、少なくとも番組を恨まないでほしい。もし辞めてしまうんであっても、少なくとも番組への愛情は無くさないでいて欲しいと。

そうでないとその番組は本当に終わってしまうのですから。

思ったことが、というか思ったことだけが結局その人の外面に出てしまう・・・そのことを僕は固く信じています。

なので、結局いい結果を招きたいのであれば、いいことを本気で思わなければならないわけです。

夢を叶えたいと思うのであれば、その夢を本気で叶えたいと本気で思うしか無いのです。

というか本気で思うと、その本気の思いの“きざし”が外面ににじみ出て、結局夢を叶えようとしているんだというのがまわりの皆に伝わるわけです。そして夢が叶う“きっかけ”や“よすが”と自然と出会う確率が高くなっていくんだと思うのです。

この前、キングコングの西野亮廣さんが、Twitterで一般の方とやりとりしていました。

「自分を変えるにはどうすればいいですか?」

そう質問する方に対して西野さんの答えはシンプルです「とりあえず3キロやせなさい」。

僕はなるほど、と思いました。

3キロやせる、というのはなかなか大変です。でも3キロやせると固く決意し、それを実際に行うという気持ちを持つことで、結局いままでだらーっとしていた自分の生活が、いろいろな面で規則正しくなったり、例えば運動をするために早起きしたり、間食を止めたりと、自分を律しようとする作用が働くのです。

で、その自分を律した行動によって、実際の結果=3キロやせるという果実をゲットできたのであれば、それは“自分を律せられた”というその人の何かしらの自信につながり、結局その自信がついた瞬間にすでに何かしらその人に変化が表れているんだと思うのです。西野さんなかなかいいこと言います!

今話題のベストセラー、ダイヤモンド社から出ている『伝え方が9割』って本、皆さんは読まれましたか?

元博報堂で昨年末に独立されて今はウゴカスという会社の人気コピーライター佐々木圭一さんが書いた本です。すごく勉強になるし楽しい分かりやすい本です。すごく“伝え方”が学べるのでオススメのテクニック本です。
例えばこういうことが書いてあります。

ある女の子をデートに誘いたいとします。でも「デートしませんか?」といきなり誘うと断られてしまうでしょう。でもその女の子が例えばイタリアンが好きだとしたら、「今度新しくできたイタリアンのお店いっしょに行かない?」と誘えば、きっとOKの確率は格段に増します。そして結局2人で一緒にイタリアンを食べることができれば、それは最初に抱いた思いである“デートをしていること”と同じ結果なのではないか?

なので僕らは“伝え方”をちょっと気にするだけで、いろいろな案件の成功の確率をぐっと増すことが出来るのです。まさに伝え方が9割、その伝え方を気にしましょう!そういう本です。

僕は読んでみてなるほどと気付かされることがたくさんありましたし、実際大学で講義する機会があれば、学生の皆さんに必須の課題図書としています。若いみなさんは特に伝え方を全く気にしていないですから(笑)。

でもですね、僕はあえてここで言いたいわけです。『伝え方は1割』であると(笑)。
なんでかといいますと、たとえその女の子をデートに誘うであれ、新しいイタリアンのお店に誘うであれ、大事なことはその“伝え方”の前に、自分はその女の子を心から好きだという“本気の思い”なんじゃないでしょうか。たとえ“伝え方”を考慮して、伝え方テクニックでその女の子をデートに誘うことができても、そこに“本気の思い”がなければ、結局はその後うまくいかないんじゃないかと、僕はそう思うわけです。


なのでまず『本気の思いが9割』あって、それがあった上で、その上で、今度はその思いがどう伝わるかを真剣に“伝え方”として自分の中で検討努力する。

そうすれば、その“本気の思い”が外面ににじみ出ますし、その彼女への好意が(仮に積極的に彼女の前では隠していたとしても)なんとなく伝わって、検討努力した“伝え方”テクニックとの相乗効果で、デートできた後も、よりいい方向に2人の関係が向かうんじゃないかと思うのです。

結局“思い”しか伝わらないのです。なので『伝え方は1割』でしかない。

ちなみに佐々木圭一さんとは以前紹介した谷原章介さん主演の本の講義イベントドラマ番組『7つの習慣 読村教授の華麗なる特別講義』を昨年一緒に作りましたし、個人的にも知り合いです。なので重ねて言いますが『伝え方が9割』を否定しているわけでは全くありません(笑)。

むしろ皆さんに何かしらを叶えたい“本気の思い”があるのなら、そういう人は『伝え方が9割』を絶対読むべきです。成功するには必携の書籍です。


仮に『伝え方は1割』という本があるのならば、この『伝え方は1割』という書籍は『伝え方が9割』を読む前に読む本です。この本を読んで『伝え方が9割』読めば、絶対やりたいことが何でも叶っちゃいます。

うん!?『伝え方は1割』・・・なかなかよい本なんじゃないでしょうか?ダイヤモンド社さん、他の出版社の皆さん、本当に書籍化したらおもしろくないですか?・・・『伝え方は1割』、絶対『伝え方が9割』と相乗効果で売れちゃうと思いますし、相乗効果でますます『伝え方が9割』も売れちゃいますし、そんでもって読んだ皆さんのやりたいことも叶う!こんないいことないじゃないですか!!・・・と、“実は”僕、結構“本気”で思っております!!!

思ったことが、というか思ったことだけが結局その人の外面に出てしまう・・・この考えですが、実は僕はさらに最近はそれ以上に確信していることがあります。

それは、「イヤな奴はイヤな顔をしている」ということ。

相手の顔が、少なくとも僕の前で、僕が「イヤな奴」だと感じてしまうような顔をしているということは、相手が僕にいい印象を持っていないか、あるいは僕が相手にいい印象を持っていないから、イヤな顔に見えてしまうんだと思うのです。

だけど、顔のもともとの造形を超えて、いい顔をしている方はたくさんいらっしゃいます。「オトナの!」に出てくださるゲストの皆さんは本当に“顔の造形を超えて”いい顔をしていらっしゃいます。

僕も自分の顔の造形を超えて“いい顔”になりたいですし、皆さんにいい顔だねって思われたいです。そのためには・・・まずは3キロやせます。

[水道橋博士のメルマ旬報 vol.45 2014年9月10日発行「オトナの!キャスティング日誌」より一部改定]


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