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AD5「組織と個人の正しい距離はどれくらい?」

2016年7月末に退職届を提出して、自分のいたテレビ局という会社組織から外れて、そんな“テレビの果て”にいて、いろいろ気づいたことがあります。電通の過労自殺という不幸な事件がありましたが、特に最近は“組織”というのは何なのかよく考えています。組織とは大きく言えば国家ですし、会社や、学校や宗教法人などですよね。僕も22年間、会社という組織にいて、組織人でした。
一体“組織”ってなんなのでしょうか?

英語にtribeという単語があります。おもに部族や集団と訳されます。つまり共通した慣習・風俗・伝統などを持っている“ひとかたまり”をトライブと呼ぶのです。
それは、なんらかの共通した価値観を持ち、互いにコミュニケーションの手段があることでつながっている集団のことです。
そしてそのトライブが、かつての血縁共同体=部族と言う意味をなしているのは、つまり共通の興味やコミュニケーションを取ることの必須条件は、
『近くにいる』
ことだったからです。

『近くにいる』とはどういうことか?
一番近いのは家族だったり、血縁関係です。個人個人の仲が良い悪いというのは当然ありますが、同じ価値観とコミュニケーションを非常に深く持っています。
次に近いのが、血縁関係はないけども、同じ地域に住んでいたり、同じ宗教だったり、同じ言語だったり、同じ学校だったり、同じ組織だったり、同じ民族だったりすることです。ようするに、今までは、トライブを形成するのは、近くにいて共通認識があったり、互いに直にコミュニケーションを取れる距離に存在することが大前提だったのです。
なので、同じ地域に、自分たちが同じトライブだと認識しない集団=他民族がいるとどうなるか?
揉めます。
それが世界各地で起こる部族間の対立、宗教紛争などです。他部族が、自分たちよりマイノリティだったりするとヘイト的な排斥や差別が行われます。
そこまでキナ臭くなくても、同業の企業間の争いだってそうかもしれません。テレビ局の視聴率争いだって、テレビ界の放送局トライブ同士の紛争だとも言えます。

ところがインターネットの成立による情報革命で、そんな状況は一変しました。
今までは、地域ごとの集合体が「トライブ」だったのに対し、現代はインターネットの発達により、同じ地域どころか全世界的に人とつながることができる可能性が生まれています。

コミュニケーションに、距離が関係なくなったのです。
そしてインターネット上で交換されるものは、相手の“信用”です。
相手をこの人は誠実だと相互認識できると、取引が成立します。
それは例えばAirbnbだったりとかですね。僕らが外国で宿泊先を検索して見つけ出して、そこを借りてもいいかどうかの判断は、今まで借りた人のコメントだったりを参照してその宿泊先が信頼に足ると判断すると借ります。一方貸し手も、借りたい人が怪しそうだと貸すのを拒否します。
つまりインターネットは、人と人の“信用”を交換するツールなのです。
今までは直に会ったり、直接話さないと、確認できなかった信用を、距離を越えて交換しあえるのです。
ちなみにお金とは何なのか?
お金=信用です。
つまりインターネットがなかった時は、信用を相手に伝えるために、金銭の交換を行っていたわけです。
インターネットができてお金を交換しなくても信用の交換だけで、人が生きていけるようになった時、実はお金の意味も変わっていくのかもしれません。

僕たちは今“トライブ”を、距離に関係なく形成できるようになったのです。
逆に言えば、今まではむしろ(血縁関係がないものどうしでも)距離を近づけるために、宗教を広めたり、組織をあえて作っていたのだとも言えます。
しかしこれからは距離に関係なくトライブが作られる可能性が高まった時、僕らは組織を作る必要があるのでしょうか?(宗教を広めるかどうか?は話が遠大になってしまうので、次の拙著に譲ります(笑))

というようなことを“テレビの果て”で考えていました。
これからは一人一人の個人が、それぞれの信用を相手と交換しあって、コミュニケーションしてビジネスして生きて行く、何か大きなプロジェクトを行う時は、同じ価値観を共有する者同士がその瞬間集まって、集団を形成し、成し遂げて、やがて解散する。そんなアメーバ状のイメージを未来の社会に対して僕は持っていたのです。
「これからは組織にまとまる必要がないのではないか?」
「組織がいらないのではないか?」
「つまり、個人の時代だ」
それを確かめたい、自分を実験台にしてみよう、それが僕が組織を飛び出した理由の一つでもあるのです。

こうし自分が実験台になってみて、わかったことがありました。
結論から言うと、“距離”がやっぱり大事なのでした。それは、

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