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読書感想文「美しい国へ」安倍晋三著

安倍さんの非業の死を忘れたくない。そんな想いで安倍さんの本を書いました。お守りみたいな感覚です。正直中身には何も期待していなかったのですが、買ったからには読もうかと思って、読み出したら結構おもしろかったです。

タイトルが「美しい国へ」なので、読む前の予想としては、日本とは文化的にも歴史的にも豊かで美しい国である、だから日本は強くなくてはならない、それにはこういう政策が必要なのである、というような、日本を礼賛するような要素が入るのかな思っていましたが、そうではなかったです。かなりバランスのいい本だと思いました。

安倍さんが今の政治信条を持つに至った生い立ちに始まり、現代の日本が抱える問題と解決策の案を数字を交えて提示するというような、極めて現実的な話が多かったなと思いました。だからおもしろかったのだと思います。タイトルはミスリーディングなので、あまりよくないなと思いました。せめて副題があったほうがよかったのではないでしょうか。

バランスの取れた提言書

また本書で提言されている政策は、どれも地に足がついている印象を受けました。思想の押し付けとか、国や特定の政治家の神格化、また他国や他民族を見下すような話は一切ありません。マスメディアの「政治ニュース」は本当に断片的な情報しか国民に伝えていないんだなと改めて思いました。

例えば、人口減少問題。選挙などでは、与党も野党も「少子高齢化を解決する!」という掛け声だけ聞こえてきますが、安倍さんは本の中で、「人口が維持されるかどうかの境目は2.08」など具体的な数字を挙げながら、他の先進国同様日本も人口減少の流れを食い止めることはできないだろうと正直に認めています。ただし、それと同時に日本の発展を諦めるのではなく、人口が減少しても日本の生産性を上げることはできる。それを実現するには、女性や高齢者の労働力を活かす、労働生産性を上げるなど、具体的な施策を提言しています。

外国の事例にも精通しておられる

本書では外国の事例がよく提示されます。安倍さんはただ単にそれらの外国の事例を盲目的に猿真似するのではなく、それを日本ではどう活用できるのかを考えていたことがわかりました。

例えば、僕は「北欧は社会保障が手厚い。日本も見習うべきだ」という論調を見たことがあるような気がします。あくまで、「気がします」。
しかし本書中では、高福祉国家の代表スウェーデンと小さな政府代表のアメリカの例を挙げながら、日本との人口規模や人口ピラミッドといった構造の違いを挙げ、それらをコピーするのではなく、その中間策みたいな解決案を提示しています。

わたしの考える福祉のかたちとは、最低限度の生活はきちんと国が保障したうえで、あとは個人と民間と地方の最良でつくりあげてもらうというものである。「セーフティネット」と「自己責任」が重視される社会だ。

「美しい国へ」安倍晋三著

蛇足ですが、正直この安倍さんの提案が日本に合っているのか僕は知りません。でも一日本国民である僕には合っていると感じます。僕は一度、レールから外れて自分が心からやりたいと思ったことにチャレンジしたことがあるます。レールから降りるときはとても怖かったです。万が一、大失敗しても問題がない、立ち直れるチャンスがあることを確認してから飛び降りました。ひろゆきさんがよく「生活保護取ったら?」と口にしますが、それも心の支えになりました。完全な自己責任社会ではなく、一番底にはセーフティネットが張ってあったからこそ挑戦できたのだと思います。

安倍さんの外交手腕の原点?

安倍さんは、外交を見ていて安心感があるというイメージがありましたが、諸外国の手強そうな首脳と渡り歩いて来られたのは、アメリカ留学や神戸製鋼でのアメリが駐在の経験があったのかもと、本書を読んで思いました。神戸製鋼のニューヨーク事務所で先輩から教わったという一節を引用します。

「アメリカ人と交渉するときは、傲慢になってはいけないが、けっして卑屈になってはいけない。相手が年上であっても、位が上であっても、同じ立場だと思って、対等につきあうべし」

「美しい国へ」安倍晋三著

これは共感しますし、自分が卑屈にならないように改めて気をつけようとも思いました。

最後に(でも、これだけは「アベ許さない!」?)

一点だけ、この本に関して安倍さんを批判したいことがあるとしたら、それは映画「ALWAYS 三丁目の夕日」のネタバレぽいことを、何も断りなく書いてしまっていることです(笑)。もっともそんなところも著者の無邪気さと捉えて愛嬌に感じますが。

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