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唯だの主婦カク語リキ 001

オット語録 その1

 今朝の出勤時に扉の前で夫が発した言葉
「ちゃんと鍵かけなよ〜」
鍵を開けて出かけていく夫が、家中で家事真っ只中の妻に発した言葉である。
なぜ、鍵を開けて扉を開けた人間が扉を閉めて鍵をかけていってくれないのか。
はたまた、せめてもの「やっといて」などといった頼むという気持ちはないのか。
自分は私が出かけに鍵をかけ忘れると怒るばかりか、帰宅時に両手が塞がっているせいで施錠し忘れるとぐちぐちとうるさいくせに、だ。

 うちの夫はものの言いぐさが、なんというか上から物をいう節がある。いや、上からものを言っているというよりは、自分に都合のいいものの言い方しかしない。自分が優位に立つようなものの言い方しかしない。その結果口調が自然と上から口調になるのである。

 件の鍵をかけるかけないにしてもだ。別にかけますともカギくらい。子供達が外出した後も施錠するし、誰でなくとも鍵があいていたら自然と鍵をかける。それが夫であろうと、自分であろうと、子供であろうと。自分が施錠を忘れることだってある。
ただ。
ただ、だ。
「ちゃんと鍵をかけなよ」という言葉を受け取った瞬間に、夫が鍵をかけなくてはいけないという責任は受け取り側へと譲渡されてしまうのだ。つまり、わたしへと。
鍵をかけずに出かけていったのは夫なのに、その後鍵がかかっていないことの責任は私にある。まるでそう言っているかのような。
 おそらく夫はそこまで考えて言っているわけではないのだ。ただ、真っ向から受け取ってしまうと、そういうことになる。そして私は、真っ向から鵜呑みにしてしまう性分だ。ただ恐ろしいことに、夫は深い意味を考えずそういったものの言い方ができる人間なのである。
そんな細かいことを逐一気にする私が大変うるさい人間なのかもしれない。だがもしも私が施錠をせずに出かけるならどうするだろう?
「ごめん、鍵かけないででるね〜」
「鍵かけといて、おねがーい!」
そんな言葉をかけて出ることと思う。
ごめん、とかお願い、とか言わなくてもいい。ただせめても
鍵をかけないよ(自分が)
鍵をかけておいて(自分のやることだけど、たのむ)
なんて、殊勝なものの言い方はできないのであろうか?

 夫はとかく自分が動くのではなく、相手を動かすことに長けているように思う。それは無意識のうちに。言葉選びやものいいだけではなく。むしろ他人に責任転嫁することをごく自然におこなっているように思う。時々、自分でもびっくりするくらい夫に「使われている」ことがある。
結婚当初はそれが気にくわずに突っかかってはよく喧嘩をふっかけたものである。その度に何か物が壊され、壁に穴があき、「私をなぐれよ」と言い寄ったあたりを境にこの人にこの理論を理解させるのは無理であると、こちらがようやく理解した。(ほらね、夫は理解せず、結局理解「する」のは私でしょ)
そうなると、こんな人とは一緒にいたくないと思ってしまう。
なんでこちらにあゆみよりもしない人間と一生を共にしなくちゃいけないの?
そんな気持ちが沸々と丹田のあたりから湧き上がってくるのである。
子供を育てながらなんて、なおさらである。
だが、ここまでボロクソに言っておいてなんだが、そんな夫にもいい部分はたくさんある。それはもちろん短所でもあるけれども。だからその言葉ひとつで夫の全てを否定することはできない。

では逆に、そんな夫の他力本願を見習ったらいいのではないだろうか?
だって、頭に来るものは来るのだから。
こちらも夫を色々と使ってやろう。
単純に荷物持ちでもいい。給料を運んでくるだけと思ってもいい。時間はかかるものの洗い物をしてくれるロボットだと思ってもいい。
そう思ってからは色々なことが受け入れやすくなった。

だいたい、言葉尻のそんな細かい部分を気にしてこんな記事を書いている私のほうがもしかしたら細かいだけの面倒なババアなのかもしれない。
そんなババアが、夫に気づかせるための返答方法、それは「オウム返し」すること。
言われたことをそのまま面白おかしく言って返すのだ。
私はその言葉を受け取らない。返却します、と。
幸いなことに我が夫は、それによって自分がどんな物言いをしたかに少しだけ気がついてくれる。ほんの少しだけ。
それでもなにも言い換えなかったりもする。
こちらの意図を全く理解しなかったりもする。
でも、私はそれを受け取らない。受け取らずに、すぐに投げ返す。その言葉が、熟しすぎたみかんみたいに地面にぐちゃりと落ちていても、それは私の知るところではない。

 今朝の出勤時に扉の前で夫が発した言葉
「ちゃんと鍵かけなよ〜」
すぐさま私は答えた。
「え、ちゃんと鍵かけなよ〜」 
出かける人がね。キッチンから声を掛け返す。
私は今、絶賛洗い物の真っ最中です。
「ねぇ、かぎよろしくねっ
 おねがいねっ、もういくね!」
苦笑いしながら出かけていく夫。えぇ、えぇ、かけますともカギくらい。こうして笑って訂正してくれるだけでも、10年前よりも大きな進歩であると思いたい。
(進歩したのは私の指摘の仕方だと主張したい気もする 笑)


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