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画面の向こうのアフガニスタン/⑥鉢巻とタリバン


アフガニスタンでの鉢巻

2015年以降、タリバン運動のプロパガンダ動画や写真で戦闘員がおそろいの鉢巻をしているのがよく見られるようになります。この記事は、その背景を見ていきます。キーワードはクンドゥズの戦いとイスラム国ホラサーン州です。

第一次クンドゥズの戦い

クンドゥズ州の州都クンドゥズを巡っての戦闘で、2015年4月〜10月にかけて発生しました。タリバンによって州都主要部分が陥落、その後共和国軍が奪還しましたが、タリバンによる初の州都奪取に衝撃が走った戦いです。


2015年クンドゥズのランドマークである交差点
2015年ANAデジ着用の戦闘員


2016年クンドゥズ

観測範囲内では、タリバン側で初めて鉢巻が組織的に使用されました。
伝統衣装のタリバン戦闘員、アフガニスタン治安部隊、共和国側民兵(伝統衣装)の三者が入り乱れての戦闘。それも市街戦ということもあり、敵味方を識別する目印として鉢巻が使われたものと推測されます。
翌年の第二次クンドゥズの戦いでも鉢巻が使用されているので、実際に+の効用があったことが伺えます。一時的ですが、州都陥落はプロパガンダ効果の高い戦果であるため運動内やリクルート活動でこの戦いの様子、鉢巻しめた戦闘員たちがリピートされたことは容易に想像されます。

イスラム国ホラサーン州

2015年、アフガニスタンでもダーイッシュやISとして知られるイスラム国の支部が旗揚されます。シリアの本国からの支援もあって、従来のアフガン武装勢力とは一線を画すプロパガンダを発表します。

ホラサーン州プロパガンダ映像から

以下は、ツイッターから消えたサラフィージハード主義者に関する有識者である黄色の13氏の考察が首肯できる内容であったため、受け売りとなります。
従前のアフガン武装勢力のプロパガンダは民族衣装に不揃いの装具。規律が感じられない集合写真というのがお決まりできした。一方で、ホラサーン州は揃いの迷彩カミースにプレートキャリアに黒覆面と鉢巻。規律が感じられる待機ポーズ。動画では家屋突入訓練も行われていました。ミリタリ的には段違いの洗練さ、つまりカッコよさがあります。
国内に駐留する外国軍を追い出したい。腐敗した共和国に立ち向かいたい若者がいた際に、この動画に触れたら従前のタリバンとスタイリッシュなホラサーン州。どっちに参加したいと思うでしょうか。以上。

タリバンとホラサーン州はどちらもそれぞれのカリフを擁するので日本の南北朝のようにイデオロギー的に相容れない存在です。ホラサーン州の旗揚後にタリバンでも迷彩カミースの導入や動画の模倣が行われたので、タリバンがこの対抗組織に危機感をもったことが想像されます。この中で鉢巻も剽窃されたのではないでしょうか。

red unit

字義としては赤外線暗視スコープを装備したタリバン夜戦部隊です。この部隊は夜戦機材がない各地の国家警察の哨所を夜襲し、一方的な戦果をあげました。闇の中で右往左往する国警をFPSゲームのように射撃する様子を動画にして公開しており、装備劣悪で対抗手段がない治安部隊の士気に大打撃を与えました。

ゴツい赤外線スコープを載せたライフルを構える民族衣装の戦闘員がred unitとして紹介されていました。当初は純粋に夜戦部隊を指していました。ゴツいスコープだけではキャッチーさにかけたのか、次第に赤い鉢巻が目印になったように見受けられました。

その後、意味が拡大したのか。恐怖を煽る戦術かは不明ですが、迷彩カミースで身を包んだりしたタリバン精鋭部隊(暗視装備なし)が赤い鉢巻をしめてred unitとして紹介されるようになります。赤い鉢巻が恐怖のシンボルとして一人歩きした印象です。第二次タリバン政権の国軍でも赤鉢巻の使用例があるため、強兵のシンボルとして赤い鉢巻が生きています。

イード休戦中の画像だったと記憶



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