起業の近道7つのポイント! 起業支援プログラム「ベンチャー・ビルダー・チャレンジ」は何をやっているか
こんにちは、加古静香(@kakosiz)です。
デライト・ベンチャーズに入社して約8ヶ月。それまで事業責任者の坂東がほぼ1人で行っていたベンチャー・ビルダー事業という起業支援事業のなかでも、最初の「事業企画」「検証」のプロセスを、4ヶ月間のプログラム「ベンチャー・ビルダー・チャレンジ(通称Vチャレ)」として形作り、DeNA以外の社会人の方向けに始め昨年10月より公募を始めました。
▲ベンチャー・ビルダー・チャレンジ応募ページ。第2回は4月頃募集を開始し、6-9月に実施の予定です。
結果、81組の多種多様な起業希望の方がご応募くださり、審査の上、21組24名(共同創業者として2名でご応募くださる方々もいらっしゃいました)の方々に当プログラムにご参加いただきました。そして1ヶ月間の事業企画期間を経て、昨年末に事業案のプレゼンを行っていただき、そのうち、11名の方に現在、事業検証のフェーズに進んでいただいております。
実際に参加した方にとっての、手応えはどうだったのでしょうか?
事業企画の1ヶ月間、プログラムのNPS(おすすめ度)は平均9.2点/10点
1ヶ月の事業企画のフェイズを経てのアンケートを取ったところ、知人・友人で起業したい人へのおすすめ度は10点満点中平均9.2点という高い水準でした。
具体的には、参加者からはこのプログラムの満足の理由として、たとえば下記が挙げられていました。
では、実際にこのプログラムでは何をやっているのか。この記事では、この事業企画プロセスで、起業家の正真正銘のゼロイチに寄り添い、伴走する中で見えてきた、“起業の近道”とも言うべき、起業の初期のポイントをご紹介したいと思います。
失敗を避けるために!起業の近道7つのポイント
1. 起業のノウハウやフレームワークを知っている方が早い
Vチャレでは、起業のノウハウや読むべき書籍、読むべき記事、考え方などを多数NotionやGoogleドライブにまとめて、起業家に提供しています。
またこの事業企画の段階では、事業案を記入するフォーマットを準備しており、ここにある7つの要素を埋めていくことで、事業案を固めていくことができます。
情報といっても、一般に普及しているものが多いですが、とはいえ、起業に関する情報がまとまった場所って、なかなかないと思います。サンフランシスコ在住の弊社マネージングパートナーの渡辺大はいつも「アメリカでは、起業ノウハウなんてググれば山程転がってる。こんなのコモディティなのにね」とよく言います。ですが、日本ではまだまだ一般に浸透していないのでしょう。
できれば、デライト・ベンチャーズにジョインくださった皆さんには、必要な情報を届けたいし、また、こういったフレームワークを活用することで、少なくとも起業の初期に陥る落とし穴は、避けられる状態にしたい、という意図でご用意をしています。
実際に、初めて新規事業に取り組む方にとっては、「どこから手をつけていいかわからない」「どう考えれば、イケてる事業を見つけられるのかわからない」ということは、往々にしてあると思います。そういう方にとって考え方の筋道が整っていることは、かなりのアドバンテージになります。
結果、この事業企画の段階の終了時点で聞いたアンケートでは、参加した起業家のうち多くの方(78%)がこの「Ideationシートとその考え方のフレームワークがあってよかった」とおっしゃっており、また、サポートをする私たち支援担当側も1ヶ月間、このシートを見ながら、1on1を行うので、かなりシンプルにお手伝いをすることができました。
ということで、起業や新規事業企画が初めての方は、なるべく、起業ノウハウや考え方のフレームワークを得て、検討いただくのがオススメです。
2. 事業企画は締め切りを設けて行うべし
このプログラムを始める前にも、起業家の方のご支援を個別に進めてきましたが、今回プログラム化して企画1ヶ月+検証3ヶ月の期限を設けたことで、圧倒的に短い期間で事業案が固まっていきました。
実際、起業の準備を始めるときには、本業を持ったまま起業の方向性を探るという方が多いと思いますが、意識して時間を取らないと、意外とずるずると長引いてしまいがち。
とはいえ、起業家の皆さんの貴重なお時間を投資するわけですから、締め切りを設けつつ事業案を検討するほうが、脳も心も活性化して、アウトプットにたどり着きやすいように感じられました。
(逆に言えば、ある程度の時間を取れる時期に、起業準備を始めることもオススメです。実際に、本業が忙しすぎて、起業準備を進められなくなる方も何人かいらっしゃいました。)
3. 壁打ち相手がいることで、客観的になれる
デライト・ベンチャーズの起業支援では、起業家一人ずつに担当がつき、事業案や検証プロセスにおいて、週1程度の壁打ちのミーティングを実施しています。実際に、事業を立ち上げたりグロースさせたりといった経験の豊富なメンバーが担当につきますし、また、何よりも孤独な起業のプロセスに伴走者がいるといないでは大きな違いです。
実際に、こちらも事業企画フェイズのアンケートで全員が「支援担当との1on1ミーティングが事業を考える上で役に立った」と、89%が「支援担当が親身になってくれてよかった」と答えており、このプログラムの最も価値のある部分として起業家にも認識されていました。
4. 起業家仲間がいると刺激になるし、助け合える
Vチャレでは、支援担当との1on1とは別に、起業家全員と支援担当者の週1の定例を設けています。
起業家同士で気の合う仲間が見つかれば、その後の社長としての悩みを共有できる可能性もありますし、そうでなくても、横並びで同じフェイズにいる起業家同士、よい事例に学ぶこともでき、刺激にもなります。
またクライアントやヒアリング相手や、創業時メンバー候補を紹介し合ったりもできます。
実際に、横のつながりをもっと持ちたいという声も多く、この起業家仲間づくりの場の提供というのが、こういったプログラムの利点の1つとも言えそうです。
5. 事業案は“創る”な、ユーザーの中から“見つけ”ろ
起業のアイデアというと何かとても斬新なものを生み出すようなイメージがありますが、実際はそうではなくて、“見つける・発見する”ものだというのが、デライト・ベンチャーズでの考え方です。
というのも、「こんな画期的な斬新な事業案を考えた!」というものは往々にして市場性がなく、顧客を見つけるのに苦労します。それよりも「自分がめちゃくちゃ困ったこと」「家族や知人・友人がとても困っていたこと」「その他のユーザーが困っていること」「それを解決するために、四苦八苦していること」などすでにある課題を見つけてきて、それを解決する方法を提供するのが近道となります。
特にスタートアップが資金に余裕がない立上げ初期から顧客を獲得するためには、必要性を感じていない顧客に、魅力を説明して、買う理由を説いて、やっとこさ買ってもらう、というのではなく、“Burning needs”(=火がついている、今すぐ消さないとマズイような問題のこと)がある市場を探し、そこに解決策となる商品を投入します。
お金は払うから何とかしたい!と感じている人がいるような課題を見つけることが、最も重要な事業企画のポイントになります。
6. 自分が感じた課題とその解決方法から模索する
5の事業案の見つけ方につながる部分ですが、「課題を発見する」ために最も重要なことは、対象者を深く理解することです。そこでまず1番身近でアプローチしやすい対象ユーザーは、自分。
自分のこれまでの経験の中で、とても困ったこと、それを解決するために独自の方法を編み出したこと、などはヒントになります。
たとえば、私個人を例に上げるなら、小学生の息子が学校に行く時間(8時)になってもYoutubeばかり見てなかなか出発しないこと(「学校行く時間よ!」「遅れるよ!」とガミガミ言うのがストレスでした)と、加えて自分もリモートワークで境目もなくあっという間に時間が過ぎてしまうこと(作業に没頭しているとミーティング時間を忘れることも)が悩みでした。
そこで思いついたのが鳩時計。ポッポーと鳴く可愛い鳩時計を買って「鳩が鳴いたら出発ね」としたところ、鳩の声=出発時間、と頭に刷り込まれて朝の時間がスムーズになりました。
仮に、そこから考えるなら8時ちょうどに限らず、子どもの出発時間や寝る時間に合わせて、よき音を設定して鳴らしてくれる鳩時計アプリを、AlexaスキルやiOSアプリで作ってもよいかもしれません(既存のアラームで代替できる人は多いと思いますが、アラームより可愛い鳩の声がお気に入りでした。)…が、Appstoreで検索したら既に鳩時計アプリがありました。
実際にはこのお悩みは、代替手段が多く、かつ解決が比較的簡単なので“Burning needs”とはいえなさそうですが、事業案を考える思考プロセスの例としてご参考ください。
また、toBで考えるなら、仕事の現場に目線を向けてみましょう。
例えば、私の場合、アンケート調査・ユーザーヒアリングをこれまでよく行いましたが、いずれも高価で時間がかかるのが悩みでした(アンケートは開始から分析まで約3〜4週間、設計から分析まで依頼すると2、300万円に。ヒアリングも実施まで3週間程度。)高価で時間がかかる理由は、そこに、一定の品質を担保するための人件費とコミュニケーションコストがかかるためです。
デライト・ベンチャーズで、起業家向けに安価で偏り少なく高品質のアンケート調査を行いたかった私は、人が介している部分をなるべく仕組み化し、発注者自身が実施できる方法を考えました。具体的には、品質を担保するための調査票や対象者割付の型を作り、セルフで実施できるマニュアル等を用意することでした。
たとえばこれを、SaaSサービスとして展開することも可能かもしれません。(既に多数のアンケート会社があるのでなんともいえませんが、これも一案として参考程度に)
7. ヒアリングでは、行動とその背景の感情を理解し、課題を掘り下げる
もちろん事業アイデアは、自分以外の、対象としたいユーザーのヒアリングから理解を深め、発見していくこともできます。
ヒアリングを行うときのポイントは「仮説をぶつけない」です。自分の中に「こういう事業があればよいのでは」と思っていると、つい「こういうものがあったら使いますか?」「こういうことに困ってますよね?」というふうに自分の考えを確認したくなります。
ですが、これはかなり誘導的な質問方法で、対象者はその勢いに押されて本当はそう思っていないのに「そうですね」とつい肯定してしまう、ということが起こり、かなり歪んだ結果を得ることになり、それを事業の可否判断の材料とするにはかなり心もとないものになってしまいます。
ヒアリングにおいては、その人が、何のために、どう行動しているのか、その中で何に困り、それはなぜだったのか、を聞き出すようにします。
例えば、仮に未就学児の子育て領域でオンラインベビーシッターの事業案を考えている場合の、ヒアリングのNG例とOK例を上げてみます。(やや極端に表現しています)
ヒアリングNG例:事業案についてだけ聞いている
ヒアリングOK例:ユーザーの困りごととその理由を聞く
かなり極端な例を挙げましたが、NG例とOK例の違いは伝わったでしょうか。NG例では、こちらの案の話ばかりしていて、その答えの信憑性もよくわかりません。OK例では、その言葉の意味や背景を深堀りして、深く理解し、サービスの可能性を見極めようとしています。
ヒアリングは起業初期にも、その後事業を運営する上でも重要なポイントなため、特に具体的にご紹介しました。
というわけで、下記の7つを起業の近道のポイントとして挙げさせていただきました!
起業のノウハウやフレームワークを使う
締め切りを設けて事業案を探す
壁打ち相手を活用する
起業家仲間を創る
事業案はユーザーの課題から見つける
自分の中の課題を見つめる
ヒアリングで課題を深堀りする
前半4つは、Vチャレの仕組みで実現している点で、後半3つは、1on1のミーティングで起業家にアドバイスしている事業案検討の考え方です。
ぜひご自身の事業案検討にもご活用いただければと思います。
第2回Vチャレは4-5月に募集の予定です。起業を検討する方は、ぜひご応募の準備を!
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