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「貧血になったのは初めてだ」2023年6月5日の日記

寝違えてしまった。左の首が痛い。

普段生活していて、「左の首」とは思わないし言わない。首は1つであり、左右など考えることはない。逆に、手や腕には常に左右という意識が存在する。
首にも左右があるということを、痛みがあって始めて気がつくのは面白いなと思う。

起きた時から痛い部分がある朝は、ついどうでもいいことを考えてしまう。

ところで、「寝違える」ってどういう状況なんだろう。
「寝違え」は、無理な体勢で眠っていた時などに起こる。椅子や床などで寝落ちしてしまった時はより起こりやすいが、昨晩は普通にベッドの上で寝た。寝る時には変な体勢はとっていないから、寝ている間に、「寝違え」が起こる体勢になったと考えるのが妥当だろう。「寝違え」が起こるためには、変な体勢でしばらく寝続けなければならないが、その前に体が「やっぱこの体勢は駄目だ」と判断してくれてもいいはずだ。眠っていて意識がない状態でも、変な体勢を少し直すくらいはしてくれてもいいはずだ。でも、体はそれをしてくれなかった。なんて間抜けなんだろうと思う。

人間よりも危険な世界で生きる自然界の動物たちは、寝違えることなんてないんだろうなと思う。シマウマが、寝違えたせいで左側を向くことができないみたいな状況になったらあまりにも危険だ。

キリンが寝違えたらどうなるんだろう。キリンは首が長い分、寝違えることも多そうな気がする。というか、キリンがもし寝違えたらかなり痛いんじゃないか。人間でこの痛みだ、より首が長いキリンはもっと痛いのかもしれない。

.......脈略が全然ない日記の始まり方になってしまった。



今日は大学があったので、朝から出かけた。
野暮用を色々としてからゼミ。

ゼミで庄野潤三『プールサイド小景』を読んだ。ダラダラと感想を書いていく。あんまりまとまらなかったので、箇条書きみたいに書いていく。

・1954年に発表されて芥川賞も受賞している作品で、かなり面白かった。先生が選んできたということもあって、今の時期にぴったりとも言える小説だった。大学四年生の方は一度読んでみてはどうか。現代に通ずるところもたくさんあると思う。

・描いている要素(主題)は大きく2つあって、1つは労働者、特にサラリーマンについてである。

・この小説では、会社の中で怯えている男の姿が描かれる。何に怯えているかははっきり描かれていないものの、いつ自分が会社をクビになるかという部分に怯えの要因があることは確かだ。
会社に勤めている以上、その会社からクビだと言われたらそれで働き口を失う(今はまた昔とは全然違うと思うけど) 。椅子の描写もあったが、昨日座っていた椅子に、明日自分が座っているとは限らないという状況は実に不安だろう。そして、男は「怯えていない者はない」とまで言っている。

・実際に仕事をクビになって、世間体のために夕方頃に戻ってきて子供と遊ぶ男を見てコーチが「あれが本当に生活だな。生活らしい生活だな。」と思う描写がある。実際は、仕事をクビになった後、世間体のために昼間はスーツでどこかに出掛けているふりをして、夕方頃に戻ってきて子供達の相手をしているだけで、なかなか皮肉的だ。他所から見れば理想の生活のようだが、実際は全くもってそうではない。そして、それは読者にしか分からないという構造だ。

・作品名にも「プール」が入っているし、小説中にも何度も「プール」が出てきていた。
「プール」というものが自由を象徴的に描いたものなのかなとなんとなく考えた。
作品の中で学生がプールに入って、その外から電車で運ばれていく労働者がその様子を眺める場面がある。そして、それが労働者にとってひとときの慰めになっていると描かれていた。そう考えると、『プールサイド小景』の「小景」には、「憧憬」という意味も込められているのではないか。

・「あの頃は良かった」なんて誰もが思うことだし、私自身思ったりもするが、おそらく労働者になって思う「あの頃は良かった」という気持ちは今よりも切実なものなのだろう。
労働者の目を通して見る学生の姿は多分今よりもはるかに「自由」で、輝いて見えるだろう。それをプールという箱の中に落とし込んで描いているのが見事だなと思う。
学生は学生で、箱の中にいるのだ。その外側には大人たちがいて、守られているとも読めるが、同時に監視されているとも読める。

・プール、プールサイド、そしてさらに奥の電車という場面設定の中で、失業中という、世間的に見れば中途半端な立場にある男はおそらくプールサイドの位置にいる。だから『プールサイド小景」 』なのだろう。プールサイドにいる男を主軸とした小説だ。

・それでいて、語り手は男の妻になることが多い。男の心情も、妻との会話と男が書いた手紙から伝わることが多い。これがもう1つの主題と繋がっていると考える。そのもう1つの主題が家族についてである。

・男の奥さんはサラリーマンである男の仕事場での生活を何年も一緒にいながら全然知らない。「なんとなく見ないようにして」さえいる。そして、男が仕事をクビになってから初めて不倫や横領に気がついていくわけだが、こういった家族の要素は絶対に今にも通ずるところがある。
私自身、父親が働いている職場でどのように思われているのかや、どんな仕事をしているかなどはほとんど知らない。夜に一緒にご飯を食べることはあっても、父親の生活の多くを占める職場について、何も知らないのである。それはつまり、父親のことを何も知らないのと同義だ。だから悪いという話でもないし、家族とはそういうものだという部分はあるが、その人間の多面性みたいな部分についてもこの小説はうまく描いていたと思う。
男は不倫や横領をしていて、それを妻に隠していたが、休日には仕事で忙しい毎日の埋め合わせをするように子どもたちを連れて出かける描写もある。仕事に対する「怯え」があり、不倫や横領はそういった「怯え」から逃れるためだと言う。不倫や横領をしてしまうどうしようもないやつでありながら、子どもを愛する父親の一面もあり、描かれている人間は非常にリアリティがある。

・一通り読み終わった後の、「集団と個をちゃんと分けて考えたほうが幸せだ」という先生の話も割と面白かった。「自分が今属している大学や広く見れば日本が潰れたところで、私という個は何も変わらない。集団と自分を強く結びつけすぎると危うい」という話だった。
実際、そういう視点を持っておいたほうがいいのは確かだ。この小説における男は、横領によって会社をクビになり、「怯え」からは一度解放された形になった(また仕事を探さなければならないのであくまで一時的でしかないが)わけだが、こういった「怯え」に関しては、きっと今でも通ずるところがあるだろう。

・私はこの先、1つの会社を選び、そこで働くことになるだろうが、その勤めている会社がこの先何年も続いていく保証はない。
しかし、だからといって怯える必要もないし、確固たる「個」を自分がちゃんと認識していれば大丈夫なことって多分たくさんあると思う。少なくとも、死ぬほどではない。



ゼミが終わり、大学で色々と用事をした後、大きめの駅に行って献血をした。

採血をしていると、ちょうど右隣で採血を受けていた人が体調を悪くしたようで、看護師が一斉に駆けつけて、場が緊迫し出した。
意識を少しの間失っていて、看護師の人が3人くらい集まって声をかけていた。
私はその人の表情が見える位置にいたので、だんだんと目が虚ろになっていく様子を直に見てしまった。
そういうこともあるのか〜、ちょっと怖いな〜と思っていると、しばらくして私の体調も悪くなってきて、頭が急にぼんやりし出し、どんどんと吐き気が込み上がってきた。急いで看護師の人に言うと、すぐに採血を止めてくれ、ベッドを横にしてくれた。

横になるとみるみる吐き気も治まったので一安心だった。どうやら驚いて血圧が変化したらしい。
「ポーカーフェイスだったから大丈夫だと思った」と看護師の人からは謝られ、「よく言われます」と私も笑いながら返した。顔には出ないが私は小心者なのだ。でも、私も驚いた自覚は全然無かったのだがね。ちゃんと体には出ていたようだ。

自分でも笑っちゃうくらい分かりやすい体調の変化に、やばいやばいと思いながらちょっとウケていた自分が何より恐ろしかった。
頭がぼや〜っとすると同時に腹部からどんどんと吐き気が込み上がってきていて、吐瀉物の感覚をめちゃくちゃモロに感じた。熱が出て吐き気がした時とはまた少し違った、じんわりとした吐き気だった。

そういえば、これまで私は人生で一度も貧血を起こしたことがなかった。
朝礼の時間や卒業式の時間とかに貧血を起こしてしまう生徒がいたが、私は全くもって平気だったし、これまでの献血も、血を抜かれた前と後で何も変わらないほどピンピンしていた。
ちゃんと貧血になってみて、こんな感じかというのが分かったのは良いことだ。ちゃんと頭が真っ白になるし、視界がぼやけてくる(私の場合は早めに気付いて処置してもらったので意識はあったが)のだな。耐えるとか絶対無理だ。

少しの間横になり、また待機室みたいなところで15分間休んだ。横の人も少し休んだらすぐに良くなったみたいだった。

休憩の際にお菓子を渡されたのですぐに食べたのだが、15分経った後に担当看護師の方がきて、「お菓子も全部食べてるし大丈夫そうやね!」と笑いながら言われて、少し恥ずかしかった。食い意地の張ってるやつと思われてそうで。でも体調が悪い時は何か食べたほうがいいと思って......。



いつもよりもゆっくりとしたペースで帰宅。

家に帰る頃にようやく恐怖感が出てきて、念の為横になっておくことにした。心なしか、少し気持ち悪いような気もしてきた。

起きると8時頃で、家族は誰も晩ご飯を食べていない様子だったのでマクドナルドで軽く何かを買ってきてもらい、食べた。
一応体に気を遣ってサラダも食べ、かなり元気になった。


今日は凄い文字数になった。全部で4139文字だ。たまにこういう日がある。そういえば最近はあまりたくさん書いていなかったな。

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