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「公園でずっとくだらない話をしていた」2023年3月15日の日記

説明会を家で受けた後、大きな駅にあるテストセンターでテストを受けに行った。

webでもできたみたいだが、カンニング防止のために部屋の中を見せないといけないらしく、私には見せられる部屋がなかったため、わざわざ会場まで行くことにした。


バスに乗って少しすると、前の方にいた赤ん坊が大きな声で泣き始めた。皆の視線がなんとなくその親子に集まり、それを察したのか近くにいたおばさんがその親に話しかけていた。「大変だねぇ」的なことを言っていて、「大丈夫だよ」と赤ん坊にも話しかけていた。その「大丈夫だよ」という言葉は、親に向けられていたものでもあるのかもしれないと思った。

バスの中で池田澄子「本当は逢いたし」を読んでいた。

初めて授乳をして数日後の乳首は傷ついてひどく痛かった。触っただけで痛い乳首を思い切り吸われるときには本当に涙が出た。少し育つと乳を吸いながら手種に胸を抓む。小さな指の小さな爪は、薄くて刃物のようだった。

p59

この一文が印象に残っている。
当たり前かもしれないけれどこの感覚は私には全然分からなくて、分からないだけじゃなくて意識もしたことなかったことだったからハッとした。エッセイとかを読んでると、今まで見えていなかったものが急に見えるようになる感覚が結構ある。
経験していないと分からないようなことは多分世の中に死ぬほどありふれていて、多分真の意味で理解することはできないのだけど、こうやって人の書いたものを読んでいると、その1ミリだけでも理解できたような気持ちになる。1ミリだけ理解できることをたくさん増やすことが、視野を広げる上では大切なのだと思う。


駅から25分程度歩いて会場に行き、テストを受けた。
テストはできたのかできなかったのかよく分からない出来だった。結果は確認できないらしく(初めて知った)、そりゃあないぜと思った。受け直しはできるが、できたのかできなかったのかも分からないのでどうしようもない。とりあえず企業に出してみて、落ちたら結果が悪かったということで受け直しをするしか道はないのか。


テスト自体は40分程度で終わったので、駅前に戻って書店に入り、文芸誌などを軽く立ち読みした。

イヤホンをしたまま書店に入ったが、音楽がうるさく感じてイヤホンを外した。
普段道を歩く時には必ずイヤホンをつけるようにしているが、書店や図書館に来た時には外すようにしている。音楽を消して、自然に発生する音を聞きながら本を選んだほうが、世界に没頭できるような気がするから。
本屋や図書館というのは、本だけが立ち並ぶ異質な空間だ。そこに入り込む時、音楽は邪魔になるような気がする。うるさい街の中では音楽は静かに感じるけれど、静かな書店の中で音楽はうるさく感じる。

すばる2023年4月号には、遠野遥の「浮遊」が発売されるまでの流れみたいなものが書いてあった。「浮遊」が書かれた背景だったり、発売された「浮遊」の元となった(そもそも「浮遊」という作品は賞に応募して惜しくも落選したもの)小説の設定などにも触れられていて、そっちも読んでみたい〜!となった。

その他にも色々と立ち読みをし、気がついたら1時間が経過していた。1時間も滞在したのに何も買わない自分を恥ずかしく思いながら書店を出た。


書店を出るとすぐに広告の音や人々の話す声や足音が混じった街の音に包まれて、少し嫌になった。
人混みの音というのは不思議だ。ざわざわと確実に耳に音が届いてくるのに、その一つ一つに耳を澄まそうとしても決して聞き取れない。一人一人は何か意味のある言葉を喋っているはずなのに、それを聞き取ろうとしても決して聞き取れない。もしかしたら、みんな「ざわざわ」と言っているだけなのかもしれないと思った。ありえないけど。

前を歩いてある人の白いスニーカーからは歩くたびに変な音がしていた。蛙を踏んだ時のような奇妙な音だった。


最寄駅に戻り、髪を切ってもらった。
まだ切るには早いかもという微妙な長さだったのだが、切ってしまうことにした。面接もあるしね。
無事変な髪型になったので良かった。


そのあとは図書館に寄った。
貸し出ししてもらっている隣では5歳くらいの子供とその親が返却手続きをしている様子だった。
手続きの途中で、子供の方が「この本もう読んだからいらんねん!」と職員の人に元気いっぱいに言っていて面白かった。正直すぎる。


友人Sとご飯に行く約束をしていたので、歩いて店の前まで向かった。
自転車で通学していた時に見かけていた店でずっと行ってみたいと思っていた定食屋だ。

豚生姜焼き定食(950円)を注文。美味い!

店員は70代くらいのおばあちゃんが1人で切り盛りしている感じで、フレンドリーだけど変に会話に割り込んできたりもなく、いい店だった。雰囲気も良くて、またぜひ来たいと思った。

可愛いお菓子もくれた。優しい。

歯の話をしていたので、退店する際「歯医者さんになるの?」と聞かれたので「いやいや全然そんなことないです」と返した。


店を出たのが5時半くらいで、まだ明るかったのでブラブラと散歩しながら話をした。
Sは就職がほとんど決まったような状態らしく、大阪で一人暮らしをする可能性があるとのこと。関西圏だからまあいつでも会える距離ではあるが私はどうなるやら。

何か大学生のうちにやりたいことはないのかという話になり、色々と企画をした。
私は結構くだらない企画をたくさん考えている方だったので、私の企画発表みたいになってしまった。私が高校生くらいの時から頭の中で眠っていた企画が話せて良かったな。
結局公園で9時頃までずっと喋っていて、話も脱線に脱線を重ねて本当に色々なことを喋った。久しぶりに友人とこんなにたくさん話した気がして、いい時間だった。

私とSは幼稚園も一緒で、仲良くなったのは小学生からなのだが、価値観とか根底の部分が本当によく似ているなと思う。最近だと将来への不安感とか友人が離れていくことへの寂しさみたいな部分も共通していて、本当によく分かるよと思いながら話を聞いていた。


結構色々あって濃い1日だったな。

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