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自己調整学習とRetellingは相性がいい!

授業でretellingを何度か行いました。最近気になっている自己調整学習をretellingと組み合わせてみたら、すこぶる相性が良かったのでnoteします。

1 自己調整学習とは?

文部科学省のHPにこんな一文があります。https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/senseiouen/mext_01491.html

「個別最適な学び」について「指導の個別化」と「学習の個性化」に整理されており、児童生徒が自己調整しながら学習を進めていくことができるよう指導することの重要性が指摘されています。

一斉授業では「すべての生徒」が「一つの目標に向かって」「一つの学習方法で」学びが進みます。しかし個別最適化がされた自己調整学習では「生徒一人一人」が「様々な段階の目標」に向けて「自分に適した学習方法」で学びます。

自己調整学習で大事なエッセンスは「plan」「do」「see」と言われています。

https://career-ed-lab.mynavi.jp/career-column/2397/
自己調整学習では、学習活動の基礎として「Plan(計画)・Do(実行)・See(評価)」という学習サイクルが想定されています。研究者によってサイクルの要素を表す言葉は異なりますが、指しているものは同じです。

自分が立てた目標に向かって学習計画を立て、実行し、それがどの程度達成されたか振り返ることが大事というわけです。

2 自己調整学習とretellingを組み合わせてみた

今回New Horizon English Course 2のUnit4-4をretellingする活動にあたり、この自己調整学習を取り入れました。

(1)オリエンテーション
生徒にUnit4-4をretellingすることを事前に伝えます。生徒は一度retellingを経験しています。Retellingができるためには、音読できることが大前提となるので、生徒は音読活動に真剣に取り組みます。

そして、次のようなワークシートを配り、今回のretellingは自分で目標を決めることを伝えます。Retellingの評価基準を共有し、ある生徒はオールAを目指したり、ある生徒は発音の評価だけはAを目指したりするなど、生徒一人一人がどの評価を目指すのかを決めるのです。

生徒はこのシートを参考に学習計画を作ります。

そして、50分の授業の中の20分間自己調整学習を3回行うことを伝えます。

(2)Plan
生徒はワークシートの学習計画に、今日は何の勉強をするか計画します。もちろん最初はどんな勉強をしたらよいか生徒は分からないので、発音をよくするためにはデジタル教科書を何度も聞いてシャドウイングする、ALTの先生に聞いてアドバイスをもらうなど、学習方法をいくつか提示します。

(3)Do
学習計画を立てたら、すぐ活動開始です。席は自由です。立ってやってもかまいません。友達とやってもいいし、一人でやってもかまいません。自分が一番学びやすい方法で学ぶのです。床に座っている生徒もいました。学びが成立していればいいのです。教師は歩き回って、支援が必要な生徒をHelpするだけです。普段は質問しないような生徒が、自分の目標を達成するために、自分で考えた質問をします。自己調整学習が有効だなと感じる場面です。

(4)See
活動が終わったら学習を振り返ります。まずは今日の学習の達成度を記入します。100%で評価します。次に、なぜその達成度だったか、また100%になるためには次にどのように取り組めばいいのかを、文章表記する部分に書き込みます。活動に関係ない無駄話をしてしまったので自分は80%の達成度だったなどと書く生徒もいます。(私としてはその無駄話からいいアイデアが生まれたり、ちょっとした気分転換になったりして、学習効率がよくなるケースもあるので、まったくの無駄とは思いません。もっとも20分間ずっと無駄話ではだめでしょうが・・・)この振り返りで、次はこうやって頑張ろう、改善しようといる学びに向かう力が育つと考えます。

3 学びは成立しているか

この自己調整学習ではすべての生徒に学びが成立していたように見えました。普段英語の学習が始まると、ノートや教科書を開きもせず、寝そうになるのをこらえているような生徒が、自分が考えた目標に向かって、友達の力を借りながらも精一杯達成しようとしている姿がありました。また、できる生徒にとっても、オリジナルの文を付け加えたり、自分だったらこうする、こう考えるなどという文を足したりするなど、チャレンジングな活動だったようです。Retellingの際に使用するシートには教科書の絵がついていて、絵一枚につき5語まで英単語を書いてよいことにしていますが、英語の苦手な生徒が、その5つの単語をどれにしようか悩み、書いたり消したりして試行錯誤する様子は「学び」が彼の中で起きている証拠だと思いました。

生徒に配付したワークシートです。生徒は絵一枚につき、5語まで英単語を加えることができます。そして、この絵を見ながらretellingするのです。下の表は評価基準で、録音したretellingをALTが評価して赤丸をしています。

さて、実際に生徒はどんな英文をretellingできたのでしょうか。

教科書の原文は以下の通りです。
My host family was an elderly couple, Mr. and Mrs. Wilson. They didn’t watch TV or have video games. I got bored at night because I had nothing to do. One day, I asked Mrs. Wilson, “Why don’t you pay a card game or something?” Then, she taught me a word game. It’s one of her hobbies. We enjoyed playing games together after dinner. Leaning new words was fun. After all, staying with a host family was a great experience. Sometimes we couldn’t understand each other. However, I kept trying to speak in English and they listened to me carefully. Both Mr. and Mrs. Wilson were very kind. I want to visit them again in the near future.

ある生徒のretellingを書き起こしたものです。
This is Kaito. His host family is an elderly couple, Mr. and Mrs. Wilson. They didn’t watch TV or have a video games. He got bored because he had nothing to do. He wanted to do something. One day, he asked Mrs. Wilson, “Why don’t we play a card game or something?” Then she taught him a word game. It is one of her hobbies. They enjoyed playing the game together after dinner. Leaning new words was fun. After all staying with his host family was a great experience because he kept trying to speak English. Both Mr. and Mrs. Wilson were very kind. He wanted to visit them again in the near future. I want to homestay someday. If I can homestay, I want to have a kind host family. (太字はオリジナルの文)

原文と同じ部分が多いのでretellingと言うよりはreproductionの要素が強いですが、2年生でこのぐらいの英文を絵を見ながら言えれば、なかなかのものだと思います。

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