見出し画像

(連載小説)「代表選挙~党内戦争~」最終話(全4話)

畠山が官房長官執務室で業務を行っている。先ほど代表選挙国民投票という発表をしてから、マスコミは大騒ぎだ。
つまり党だけの話でもなくなり、国民に首相を決めるという大規模なことをするんだからだ。
すると品川がノックをして入ってきた。

「どういうつもりだ」

品川は凄い剣幕で言った。だが畠山は少し冷静な顔で

「どうかされたんですか?」

「どうかしましたかじゃないよ。国民投票の件だよ」

「あぁその件ですか」

すると品川は少し怒鳴った感じで

「しらばっくれるな。お前の策略か、それともあの水田の小僧の仕業か」

畠山は立ち上がり、少し微笑みながら

「いいんですか?敵の陣地に足を踏み込んでも、後悔しますよ?」

「どういうことだ」

品川はあまりの怒りに少しトーンを落としながら言った。しかし畠山は自信を持っていたのか、少し微笑みながら

「あなたは、たとえ総理と副総理が支持に付いていても、こっちには私と島田幹事長が付いています」

「だから何だ」

「分かりますか?派閥の権力も実力も経験も私たちの方が上なんです。例え総理・副総理だからって、汚職を隠しちゃね。それも独自で」

品川は少し怯えた顔になり

「な、なんでそれを」

「ご存知だったんですか?品川さん」

少し品川に近づきながら言う。微笑んだその顔はダークヒーローそのものだった。
少しとぼけながら

「し、知らん。そんなこと」

「まぁ知っててもおかしくないですよ。だって民主日本党の副代表ですもん。でもこれが世間にばれたら、あなた終わりですよ。どうします?このまま引き下がるか、それとも負け覚悟で挑むか。どっちにしろ、あんたは負けだよ」

少しトーンを落としながら言った。すると品川は少し嫌な顔をしたが、何も言わずにその場を後にした。
実は畠山にも策略はあった。本当は水田に好きで支持しているわけではなく、勝てそうだから付いただけだった。
ご存知の通り、総理と副総理には汚職や隠蔽など黒い部分が隠れている。そのため確実に負けるからだ。勝ったとしてもこれが世に出たら、間違いなく巻き添えを喰らう。それは避けたい。
そのため、何にも汚職もないクリーンな人物と言ったら水田しかなかった。そして自分は水田内閣で副総理になる。恐らく水田は感謝のつもりでそうするつもりだ。そしたら次期総理は自分になる確率は高い、そういう策略だった。

その頃水田は告示を過ぎたため、選挙演説に向かうため、防衛省で準備をしていた。すると秘書官の沖田が

「あっ大臣」

振り返り、少し気になった顔で

「なんだ」

「あっいや、絶対勝ってくださいね。応援してます」

自分は何か企んでるのかとつい心配になったが、誰が企んでいたって勝てればそれでいい、総理になれば権限は自分にあるんだからと、少し野心を思っていたため、少し微笑みながら近づき

「なんか企んでいるのか?」

沖田は少し戸惑いながら

「いえいえ、そんなこと思ってませんよ」

「冗談だよ。絶対勝つからな。そしたら良いポジション用意しておくからな」

すると沖田は笑顔で

「あっそれだったら、自分を総理補佐官にしてください」

自分は予想外の言葉に少し驚きの顔をしながら

「え?」

と言うと、沖田は少し微笑みながら

「私は、2年間水田大臣の傍にして分かったんです。この人こそ総理に相応しい人物だって。政策論も思想も本当に日本を思ってのことですし、なんも悪いケチなところはない、そんな人の傍にしていつかは支える立場になりたいなと思って、だから総理補佐官になって、水田大臣をお支えしたいです」

これは驚いた。本当だったら官房長官や副総理になりたいと言うのかなと思いきや、自分の補佐官になりたいと言った人は、恐らく人生で初めてだと思う。
この男は少し頼れるなと思い、笑顔で

「分かった。私をしっかりサポートしてくれな。沖田補佐官」

そう言って部屋を出ていった。沖田の笑顔はやがて涙に変わっていった。

しばらくして畠山と合流し、いよいよ演説に向かうのであった。すると車内にて自分の電話がかかり

「はい。水田です」

「俺だ、畠山だ」

「あっどうかされたんですか?」

電話の向こうでは、明らかに畠山が困った声をしている。そして

「大変だ。1時間後に同じ場所で品川副代表も演説をする」

「え?まさか」

驚くのも無理はない。元々品川は新宿近くで演説を行う予定だった。当然そこには支持している松尾総理・稲川副総理が応援に来る。自分たちの後に来るとなると、稲川はまだしも松尾は総理大臣、確実に知名度は高い、正直先ではなく後になると印象は後の方が強い、そのため、畠山が少し戸惑いの声を出しながら

「良いか、今回の演説は今後を左右する重要な場面だ。言いたいことを言え、俺がサポートする」

「分かりました。任せてください」

そして場所は東京駅近く、なぜここを選んだかと言うと、実は自分は元中央区議員を務めた事のある、ゆかりも深い場所だ。
自分はしっかりと演説するために、選挙カーにて演説を始めた。当然自分は防衛大臣のため、少し若者が多く集まっていた。
そしてマイクを握り

「こんにちは!!防衛大臣を務めさせてもらってます、水田信弘でございます。私は、この民主日本党の変えたいです。私には畠山官房長官・そして島田幹事長という圧倒的な味方がいます。古い官僚を優先する政治を潰し、若者が有利である、そんな党を作りたいです」

畠山は隣で少し笑顔で聞いていた。こいつかっこいいなと思っていたからだ。周りの演説を聞いてる人々も少し安心そうに聞いている。
そして自分は続けて

「そして私が代表、そして総理大臣になったあかつきには、防衛政策・経済政策・福祉政策・医療政策・社会政策、全て政策において、抜本的な改革を行います。もし、品川副代表が総理になれば、この世は戦前の大日本帝国になります。確かに今の国際情勢を見れば、国を守るために先制攻撃・核武装は検討しなきゃいけないかもしれません。でも私は、極力それは避けて、でも日本を守るためにも、緊急事態の武力行使を有りにする法律を作ります!!皆さん安心してください。緊急事態ですから、例えばミサイルが飛んできた、こちらに危害を加える状態になりそうだ、そうなれば、武力行使・防衛手段を駆使し、日本を守ります。これが私の考えです」

すると周りが大きな拍手が起きた。そして「もっと言え」「勝てよ」という嬉しい言葉などが聞こえてきた。しかし反面ヤジもあったが、自分は気にせずに

「それでは、自分の最強の味方をご紹介しましょう。畠山官房長官です!!」

畠山がマイクを握ると、大きな拍手が起きた。

「こんにちは!!内閣官房長官を務めています畠山輝彦です。私はこんな立派な考えを持つ、水田大臣を是非総理にさせてあげたいです。私は彼と同じ考えでも、総理になる自信は正直ありません。でも彼なら実現できます!皆さん、この才能あふれるこの男を、総理の椅子に座らせようじゃありませんか!!」

大きな拍手が起きて、自分はこの光景を見て思い出した。自分は総理大臣を目指すために立候補し、連続当選を果たしている。その時に自分を応援に駆けつけてくれたのが、当時の官房長官だった。
少しあの時を思い出し、涙が出そうだったが、この光景を見て強気でいなきゃと思い、堪えていた。

その後、演説を終えて沖田にその場に残るよう伝えて、防衛省に戻った。品川の演説状況を知りたいからだ。
防衛省で執務を行っていると、電話がかかってきてそれに出る。

「はい。水田です」

「私です、沖田です」

「あっどうだった?」

「確かに総理と言うことで、人の数は多かったですけどヤジばかりです」

自分はこれを計算していた。当然松尾は部下の汚職で総理を辞めるわけだから、そんな良い顔する人なんてあまりいない。だから自分の後に演説をするということも、あまり驚きはしなかったのもその理由だ。
だから微笑みながら

「よし、ありがとう」

と言って電話を切った。確かに畠山が言った通り、事態は上手く進み、投票日まで人気は落ちることなく、結果を防衛省で待つことにした。隣には畠山の姿もあったが、笑顔で携帯を見つめていた。
しかし、少し気になることがあったため

「あの、畠山さん」

「なんだ?」

「私を最初から利用しようと思ってましたね」

畠山が驚いた顔で見つめる。

「気づいてたのか?」

自分は微笑みながら

「何年共に政治家やってると思うんですか」

すると畠山が少し暗い顔になりながら

「どうする?俺を切るか?」

「そうですね。官房長官としては畠山さんはないですね」

畠山は完全に暗い顔をしながら

「そっかぁ。ばれちゃしょうがないよな」

「話をよく聞いてください。官房長官としてはです」

「え?」

「もし、私が勝ったら、副総理に任命しますよ。もちろん兼任は防衛大臣です」

「防衛大臣?」

自分は思っていた。思想も政策論も同じ畠山を防衛大臣に任命したかったことを、そうすれば、世も安泰だし、信用できると思っていたからだ。そのため自分は

「だって、私と同じ考えなんですよね。そしたら防衛大臣として、自分をサポートしてください」

畠山は微笑みながら

「お前も立派な政治家だな」

すると沖田が部屋に入ってきて

「やりましたね。水田総理!!」

これはつまり当選確実という報告だ。二人は見つめ合い少し笑いながらも、畠山が

「よし行くとしますか」

「そうですね」

そのまま扉の向こうに歩いて行ったのだった。

~最終話終わり~

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?