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(連載小説)「代表選挙~党内戦争~」第1話(全4話)

とある日の事だった。民主日本党の代表で現内閣総理大臣・松尾慎太郎は会見を行っていた。
松尾内閣は4年前に発足してから、人気を維持し、消費税増税・金融新政策・防衛新予算案・経済水域拡大などの政策や法案を誕生させ、反発の声もあったが、松尾の温厚な性格と圧倒的実力などで選挙も2回勝ち、無事この4年間日本を平和にそして、安心な世の中に成長させた、ある意味の恩人的立場だ。
しかし、最近では自分が所属している派閥「小野派」の議員である・牛田経済産業大臣の汚職が発覚し、それどころか他の官僚・閣僚などでカネの問題が発生したため、支持率も低下・不支持率上昇ということが続いたため、内閣総理大臣を辞職ということで、緊急の会見を行っていた。
松尾は少し声を冷静に保ちながらも

「えぇ、私はこの4年間、内閣総理大臣として様々な政策及び法案を立ち上げて、成立をさせてきました。それは国民の皆様の温かい応援やお言葉のおかげです。ですが、私事ではありませんが、部下の汚職、そして疑惑などが発生してしまった以上、国民の皆様に安心して政治を行っている場合ではないと思い、今回総理を辞するということに至りました。私自身、こういうことは有り得るかもしれない、でも閣僚を信頼してやってきました。正直悔しいです」

その様子を議員庁舎のテレビで見ていたのは、今回の主人公・水田信弘。
水田は第一次松尾内閣では、外務大臣を務めて、第2次松尾内閣では防衛大臣を務めた政治家であり、某国の国交正常化やアメリカ軍予算交渉などを上手くした実力者であり、松尾が一番信頼している議員である。
本来なら来月に第2次松尾改造内閣で、内閣官房長官就任を約束されていたが、このような形になってしまったため、少し残念に思っていたが、松尾の忠誠心は変わらずにいた。ちなみに派閥は無所属である。
自分はテレビの様子を見ながら、男性秘書官の沖田に

「なぁ、俺がもし総理大臣になると言ったのなら、君はついてくるか?」

すると沖田は微笑みながら

「そうですね。代表選挙に立候補するって言ったら、ついていきますけど」

自分は微笑んだ。実はこの1週間悩んでおり、松尾が総理を辞任するということを聞いてから、松尾が掲げてきたまだ成立していない法案や政策を実行するためにも、自分が総理になるしかないと思い、代表選に出馬しようか模索していた。
しかし、自分の中で決心がついた。立候補して総理になろうと。
自分は沖田に

「今何時だ?」

「今は夜の6時ですけど」

「よし、首相官邸に行く。準備してくれ」

「分かりました」

沖田が笑顔で言い、車で首相官邸に向かった。何故なら報告に加えて、代表選に出るための支持獲得のため、すぐに動かなきゃいけないと思い、出た行動だった。
勝たなきゃ選挙は意味がない、そう自分に言い聞かせながら、車から外の景色を眺めていた。野望の目をしながら・・・

首相官邸に着いた頃はまだ会見はやっており、記者会見室で待っていると、近くから民主日本党副代表・品川が笑顔で

「おっ、これはこれは珍しい人が来てるね」

自分はまさか品川が首相官邸にいるとは知らなかったため、少し驚きながら

「あっ品川さん。どうしてここに」

「実はな、松尾さんに少し用事があってな」

この男は第1次松尾内閣で内閣官房長官を担当しており、主に松尾総理の右腕として、金融新政策の一人者として有名になり、第2次松尾内閣では党内人事により、副代表にまで成長した男だ。派閥は党内2大派の一つ「品川派」の会長を務めている。
自分も一応上司のため、親交はあまりないが笑顔で

「そうですか。自分も少し総理に用事がありまして」

「そうなんだ。防衛予算の件、どうなった?」

「あぁ、あの件なら大丈夫ですよ」

防衛予算というのは、アメリカとの共同防衛練習にかかる費用の件で、野党からの反発を受け、少し期間などをずらしての検討となった。
防衛大臣の仕事はつくづく大変だなと感じるほどだった。
すると丁度会見が終わったのか、記者会見室から松尾が出てきた。自分たちに気付くと

「おっ、品川さんに水田君じゃないか」

2人が頭を下げる。すると松尾が笑顔で

「で、官邸にまできてどうしたんだ?」

自分が発言権を品川に渡し、品川が

「あっ実はお話がありまして」

「あっそうなんだ。とりあえず私の部屋で聞こう」

松尾と品川が総理大臣執務室まで向かう。残った自分は戻って出直そうかと思っていると、近くにいた内閣官房長官・畠山が

「どうしたんだ?」

と声を掛けてきた。彼は内閣官房長官であり、稲川副総理に続いてナンバー3の重鎮であり、過去内閣官房長官を5回も歴任している実力者でエリートである。
知能家でも有名であり、過去には有権者を集めようと、何度も地元の選挙では推薦人の立候補者の応援に駆けつけては、何度も当選をさせ、野党と連絡係を務めて、野党を言いくるめて、法案を通したりと、かなりの権力者であり、実力主義の男である。ちなみに派閥は「小野派」の副会長をしている。
自分はかなり親交が深かったため、少し照れながらも

「あっいや、ちょっと総理に用事が」

畠山が少し納得した表情をすると

「あっ、そういえば、残念だったな。総理がこんな形にならなければ、君に官房長官を任せられたのに」

「あっいや、逆に安心しました。これで官房長官より上を目指せられるので」

「え?」

少し自分が周りの顔を気にして、少し声を慎むと、状態を察した畠山が

「俺の部屋行こう。そこで話をしよう」

「はい」

2人は官房長官執務室で話をすることにした。
その頃、総理大臣執務室では松尾と品川が2人きりで話をしていた。少し重めの空気の中、黙々と話をしていた。
松尾が驚きの顔をしながら

「え?代表選に出馬する?」

「はい。今の松尾内閣の継承を出来るのは、自分しかいません。ですからどうかお力添えだけでも頂けたらなと思いまして」

少し声のトーンを落としながら

「つまり、支持してくれということか?」

品川が少し焦った顔をしながら

「え、えぇ」

松尾が少し微笑みながら

「そんな顔するなよ。分かった、支持しよう。その代わり絶対勝てよ。それと早めに出馬を表明しとけ、その方が効率がいいからな」

「はい。分かりました」

松尾は品川の方を叩きながら

「頑張れよ!」

その頃、自分と畠山は官房長官執務室で話をしていた。

「え?代表選に立候補する?」

少し驚きの口調で言った畠山。

「えぇ、その意向でいます」

すると畠山が困り果てた顔をした。自分はすぐに気づいた、何か動きがあると、それもこの代表選に完成する動きが発生していると、自分は少し困惑した声になり

「何かあったんですか?」

畠山が重い顔をして頷いてから

「実は、品川副代表が出馬の意向を固めたんだ」

「え?!品川さんが!?」

自分は目を見開きながら言った。つまり先ほどの総理に話があるというのは、つまり出馬の支持を獲得するため、自分は先を越されたと思い、少し悔し気な表情に変わった。
すると畠山が冷静な顔で

「まぁ、保守的な感情が一番強いお人だからな。もし品川さんが総理になったあかつきには、すぐにでも憲法改正を行い。敵基地に先制攻撃が出来る法律を作るそうだ」

自分はそれを聞いて少し声を荒げながら

「そんなことしたら日本は滅亡します。先の大戦で、どれだけの日本人が命を落としたのか。それは私だって日本を守りたいって強いです。ですから防衛大臣として様々な法案などを通してきました。でも先制攻撃なんてしたら、またあの悲劇が繰り返されます」

すると畠山が立ち上がり

「自分だってそうだ。君と同じ気持ちだ。だからこそ君に勝ってもらいたいんだ」

「え?」

畠山が笑顔で

「俺は君を支持する。私は例え松尾総理の議員歴・地位が下であっても、会派ではナンバー2だ。小野さんには支持をしてもらえるようになんとか言っておくから、すぐにでも出馬を表明しろ」

今思った。自分は畠山という大事な友人を獲得したことを嬉しく思った。この畠山の目は本気で、信用できるものだった。
自分も笑顔になり

「もちろんです」

自分の意志は実行へと変わっていったのだった。

~第1話終わり~

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