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(連載小説)「妻へ、夫より」最終話(全3話)

3日後、亡くなった仁美の告別式が執り行われていた。喪主を務めた義明はこの3日間、全く眠れず、食べれずに憔悴しきっていた。隣にいた息子の拓哉はずっと泣いていた。3歳になる息子がこんなに泣くを見たのは、赤子以来久しぶりに見る光景で、少し自分も泣きそうになっていたが、泣けないくらい落ち込んでいた。

しばらくして告別式が終わり、近くの火葬場に行き、ただ愛する妻が骨になるのを黙って待つしかなかった。すると義明の妹である和美が俯いて座っている義明に近づき

「大丈夫?」

少し笑顔で言ってきた。和美は元々明るい性格で、どんなことも落ち込まない、失恋も友情の裏切りも全て笑顔になって吹っ切れていた。そんな妹がいるといつも元気を貰える、そんな人物だった。
少し義明は涙目になりながら

「俺どうすればいいのか分からないんだよ。愛する妻をこんな早くに失ってさ。あいつ無しでどう生きていけばいいんだよ」

和美は少しため息をついて

「はぁ。お兄ちゃんさ。仁美お姉ちゃんだけなんだ」

「え?」

言ってる意味が分からずに、少し顔を上げて和美を見た。

「拓哉くんは、お兄ちゃんの眼中に入ってないんだ」

「何言ってるんだよ。拓哉は俺の息子だぞ、入ってないわけないだろ」

少し義明は強めに言った。すると和美も少し強めに

「じゃあ、生きる意味は当然あるでしょ。拓哉くんを誰が育てるの。私?お父さん?お母さん?違うでしょ!お兄ちゃんしかいないの!それくらいわかるでしょ」

確かに妹の言う通りだ。拓哉のことは正直今は考えていなかった。そんな自分に喝を入れたかったが、ただ泣くしかなかった。
それでも妹は優しく寄り添ってくれた。

葬儀も終わり、家に帰りついたとき、ふと寂しさを感じた。隣に息子がいるが、何か凄く寂しい感じがする。
すると拓哉が

「パパ」

「なんだ」

少し重い表情で言った。すると拓哉がリュックから一枚の手紙を取り出した。それは明らかに仁美が自分に当てた手紙だった。
義明が驚きながら

「こ、これどこで貰ったの?」

「ママがね、もしママが死んだら、これパパに渡してって」

封筒の裏には日付が書いてあった。亡くなる2日前だ。急いで開く、そこには必死に書いたんだろう、少し字がゆがんでたりしてる部分もあったが、ちゃんと読めた。

~義明さんへ~
この手紙を読んでいると言うことは、私はもうこの世にいないってことね。2年前、もう子供はあきらめかけてた時に拓哉が私たちのところに来てくれて、凄い幸せだった。あなたも大企業の副社長にまでなって、これからますます幸せに暮らせると思ってた。でも、まさか私が乳がんだなんて。石川先生から聞いたの、あなたがそわそわしてるから、私から聞いちゃった。凄く悔しかった。でも本当は義明さんの口から言ってほしかったな。私が傷つくと思って言わなかったと思うけど、でも残された時間、お互い知ってる中で生きたかったな。その方がお互い楽でしょ。それと、拓哉のことよろしくお願いします。私が見守ることしか出来ないけど、でもあなたは拓哉の傍にいれる、だから何があっても守ってあげてね。約束よ、愛する義明さん。
~仁美より~

涙が溢れるほど出た。それだったら本当のことを言えばよかったと、自分の中で後悔の念が溢れてきた。
すると拓哉が近づいてきて

「パパ」

と抱きついてきた。義明もすかさず抱きついた。

「拓哉、お前の事、パパが一生懸命守るからな」

拓哉は笑顔で頷いた。

~現在~

義明は青空を見上げて

~妻へ~
向こうの世界はどうですか。もしかしたら仁美が会いたがってたお義父さんとお義母さんとは会えたかもね。拓哉は3歳になって、幼稚園の年少さんとして入学することが出来ました。たまに、もしかしたら隣にお前がいるかもと思うことがあります。そう思うと、なんだか安心します。この子を何があっても守るつもりです。どうか向こうの世界でも見守っててください、愛する仁美。
~夫より~

そのまま2人は歩き始めたのだった。

~終~

結構短編って難しい(笑)

ちょっと省略しすぎた(笑)

でもご覧いただきありがとうございます。

またお会いしましょう!!

柿崎零華でした!!

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