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【歌舞伎】鬼一法眼三略巻

 2023年3月19日(日)、国立劇場(大劇場)に、歌舞伎『鬼一法眼三略巻(きいちほうげんさんりゃくのまき)』の四段目、五段目を観に行きました。3月は、「歌舞伎名作入門」と銘打っており、今年は、「入門 源氏の旗揚げ」でした。
 桜の季節。国立劇場の前庭では桜が咲き始め、「さくらまつり」が行われています。

■はじめに

(1)鬼一法眼とは

(室町時代初期に書かれた『義経記』巻2に登場する)伝説的人物。京都一条堀川に住む陰陽師で文武の達人という。牛若丸はその娘となじんで兵書「六韜三略(りくとうさんりやく)」を盗み学んだという。能・浄瑠璃に脚色される。

ネット検索・「Oxford Languages」などより

(2)『鬼一法眼三略巻』とは

・文耕堂・長谷川千四=作。1731年(享保16年)に人形浄瑠璃として竹本座で初演。(近松門左衛門没後、初期の作品)
・全五段。初段と二段目は、平清盛の権勢と武蔵坊弁慶の生い立ちの物語。三段目で、牛若丸が、鬼一が所持する中国の兵法書「六韜三略」の伝授を受けるようです。
・今回は、四段目『一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)』と、五段目『五條橋』上演されました。
・なお、吉原家三兄弟とは、長男・鬼一法眼、次男・鬼次郎、三男・鬼三太を指し、物語に絡んできます。

■四段目『一條大蔵譚』(曲舞・奥殿)

(1)一條大蔵卿とは

・一條大蔵卿は、平清盛の愛妾であった常盤御前と結婚した人物です。一条(藤原)長成。源義朝の側室であった常盤御前は、義朝亡き後、平清盛の愛妾とされ、その数年後、最も無難そうな人物であった一條大蔵卿に下げられました。
・本心を隠して、作り阿呆を二十年以上も続けているという設定で、二代目中村吉右衛門が当たり役とし、今回、中村又五郎さんが初役で挑んだようです。

(2)その他の用語メモ

・常盤御前が興じていた「楊弓」とは、遊戯用の小弓。唐の玄宗が楊貴妃とともに楊弓を楽しんだという故事があるようです。
・「ぶっ返り」とは、一瞬にして衣裳を替える「引抜」の一種です。上半身の部分を仮に縫ってある糸を抜いて、ほどけた部分を腰から下に垂らして衣裳を替えます。「見顕し」といって、隠していた本性を顕したときに使われる方法です。(文化デジタルライブラリーより抜粋)
・「譚(ものがたり)」は、源氏に寄せる本心を大蔵卿が物語るところからつけられたようです。(イヤホンガイドより)

(3)感想

・大蔵卿の「阿呆」と「正気」の切り替えに、こういう役があるのだと驚きました。喜劇とはまた違う感じがして、「阿呆」の役をやるときは、どんな心持ちなのか伺ってみたいと思いました。
・鬼次郎・お京夫婦を、中村歌昇さん・中村種之介さん兄弟が演じられていて、かっこよかったです。

■五段目『五條橋』

・牛若丸と弁慶が主従の契りを結ぶ場面です。中村歌昇さん・中村種之介さんが、今度は弁慶と牛若丸の役を演じられました。
・舞踊劇であり、私は「舞踊」の観るべきポイントをいまいち掴めていないのですが、今回は立ち廻りの要素が強く、とても面白かったです。弁慶は、隈取をした荒事風の弁慶でしたが、やっぱり、足腰の強さが重要なのだろうなと、個人的に思いました。反対に、牛若丸は軽やかでした。
・最後に、冒頭の解説を片岡亀蔵さんがされましたが、そこで取り上げられた童謡「牛若丸」を添付しておきます。

京の五条の橋の上/大のおとこの弁慶は/長い薙刀ふりあげて/牛若めがけて切りかかる
牛若丸は飛び退いて/持った扇を投げつけて/来い来い来いと欄干の/上へあがって手を叩く
前やうしろや右左/ここと思えばまたあちら/燕のような早業に/鬼の弁慶あやまった

童謡「牛若丸」

 なお、写真は「五条大橋」ではありません。夜の橋ということで、使用させて頂きました。

以上です。


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