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のらべり2原稿「会:のらきゃっと」

※この文章は主に「現実へ」のお話になるのでメタなお話含みます。ごチュウ意ください。

 本稿はC97にて頒布された合同誌「のら!ちゃん!べりべりきゅーと!2」に寄稿したものであり、掲載されたものと同一の文章です。

会:のらきゃっと


『のらきゃっとに会いたい』
そう願ったことはありませんか、ねずみさん。

 2018年春、のらきゃっとの、そしてねずみさんの世界に大きな転機が訪れました。そう、新義体導入によるVRChat進出です。それまでローカル環境で配信を行なっていたのらきゃっとに、仮想現実で会いに行くことが可能になったのです。にわかに色めきたつねずみさんたち。「Unity?Blender?」などとチュウチュウ騒いでいましたが、あっという間にたくさんのねずみさんが未知の世界に飛び込んでいきました。
こうしてのらきゃっとは会いに行けるバーチャル美少女になったのですが、のらきゃっとに会う方法は何もVRChatのような仮想現実だけではありません。のらきゃっとが活動初期の目標として掲げていた「リアルに顕現する」。これもまた我々がのらきゃっとに会える可能性のひとつです。バーチャルの存在がリアルに現れるとすれば、どんな形があるでしょうか。ここでは「フィギュア」「着ぐるみ」「アンドロイド」を例に挙げて考えてみます。

 まず最初に挙げたのがフィギュア。創作や想像の中の人物を3次元に引っ張り出す方法としてはもっとも一般的かと思います。等身大フィギュアなんてものもチラホラ見かけます。西洋の彫刻や石膏像、祭事に用いられる人形なども考えると「会う」という体験に繋がりそうですね。
ここに動きを足してみましょう。特にアニメーションのキャラクターなどを3次元に持ち込む際に用いられるのが着ぐるみ。これも比較的一般的に「会う」を実現させるものです。日曜日の朝のCMや大型ショッピングモールの広告に「○○が会いに来る!」なんて文言を見ることもしばしば。
ていうかのらきゃっとはアンドロイドだって言うし、アンドロイドで再現すればいいじゃん。ということで最後にアンドロイド。ほんとうにアンドロイドとして作ってしまおう。ひょっとするともっとも現実的かもしれない。2017年には大阪大学石黒研究室によって開発されたアンドロイドアイドル「U」による半自律会話(オペレータ操作による発話と、音声認識+学習による自律発話)ニコニコ生放送が配信されるなど、もう既に我々はアンドロイドと生きている。

 しかしながら、これらの手段でのらきゃっとがリアルに降り立ったとして、それを私たちは「のらきゃっと」として見ることが出来るでしょうか。フィギュアはものも言わずただ黙って立つのみ。着ぐるみは近くで見ると意外とデカイし貼りついたような笑顔が妙に怖かったりハハッ。アンドロイドはリアルに寄せていくといわゆる「不気味の谷」問題が立ちはだかる。現状リアルでのらきゃっとに「会う」のは困難なのでしょうか。いや、そんなことはないと言い切っちゃう。

「会う」ためには双方の情報伝達が不可欠です。あなたが一方的にのらきゃっとを見てもそれでは会ったことになりません。のらきゃっとがあなたを認めて初めて会うことが出来ます。そうなるとフィギュアは、それ自体に会うことは出来ないでしょう。どうあっても向こうはこちらを認められないのですから。つまりフィギュアというものは入り口。あなたの中ののらきゃっとを想起し対話するための交信機なのです。造形が忠実であるほどそれが容易になるのは言うまでもないでしょう。着ぐるみについてもおよそ同じですが、違うのはあなたを認識できるだろう点、それ自体で完成するものではない点です。これは演者の操演を含め、演出によっておおいにその存在は変わります。あなたの中ののらきゃっとはどう動くか。そことの相違が大きければ存在感は損なわれ、逆を行けばありありと存在させることも可能でしょう。アンドロイドとして顕現させるならば、これこそいかにのらきゃっととの同一性を保てるかが重要です。いずれにしても、相手がどんな言動をするかを考えることが「会う」ために必要なようです。

 逆に、のらきゃっとがどうやって自らをのらきゃっととして我々に認めさせているか考えてみると、その演出力が特に秀でていることに気付きます。棒立ちせず常にふわふわと動き、時には現実に即した動作を再現して見せるなど、そこに存在することを意識させる演技を細かく散りばめているのが見て取れます。さらに、言動も一貫してねずみさんにとって魅力的に映るよう意識しているのらちゃん好き。そうした演出は、行動の違和感をなくし情報伝達をスムースにします。仮想空間においても、実空間においても、「会う」ために必要なのは互いに思考しあうコミュニケーションと、それに現実性をもたらす演出なのです。

 これ、小説を読むとき、創作をするときの脳内に似てないかな。「このあとどうなるだろう」「どんな景色なんだろう」と想像を膨らませ、明瞭化するプロセスに似てないかな。創作物に触れるとき、それはきっとのらきゃっとに会う大きなチャンス。この1冊の中で、あなたがのらきゃっとにたくさん出会えることを祈っていますね。


追記:のらきゃっとに「会う」ことについて書き始めたら屋根裏ラジオ第20回でよく似たお話が出てたよ!みんな屋根裏ラジオ聞こうね。

----本文ここまで----

追記で言及してる「会う」お話はこちらですね。(56:45~)

ライブで見た、VRCで見た、創作をした。「会えた」と思える瞬間がどこにあるかわからない。でも、あなたが会いたいと思うのならば、きっと会えます。のらべりはその機会を100以上もくれるバイブル。

 初めての同人誌、初めての寄稿、初めてのコミケ。青海と青梅を間違えたり恥は掻いたがビッグサイトに捨ててきた。改めて貴重な体験をくれたのらちゃん&ねずみさんありがとう。そしてのらべり2完売&ダウンロード販売開始おめでとう!

短い拙作ですが、ここからなにか考えていただけたら嬉しい。
あ、初めましてこんきゃっと、掻き捨てですよろしくおねがいします。
それではここらへんで。また「お会い」しましょうね。のら!ちゃん!べりべりきゅーと!

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