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2020/12/19 江之浦測候所

X-Pro2の撮影会デビュー戦(というか、撮影目的ででかけたのは初めてかもしれない)の場所は、小田原と熱海の中間地点に位置する江之浦測候所となった。

江之浦測候所は、写真家の杉本博司氏の構想の下で作られた屋外美術館である。

公式サイトによれば、そのコンセプトは次のように語られている。

アートは人類の精神史上において、その時代時代の人間の意識の最先端を提示し続けてきた。
アートは先ず人間の意識の誕生をその洞窟壁画で祝福した。
やがてアートは宗教に神の姿を啓示し、王達にはその権威の象徴を装飾した。
今、時代は成長の臨界点に至り、アートはその表現すべき対象を見失ってしまった。私達に出来る事、それはもう一度人類意識の発生現場に立ち戻って、意識のよってたつ由来を反芻してみる事ではないだろうか。
小田原文化財団「江之浦測候所」はそのような意識のもとに設計された。
悠久の昔、古代人が意識を持ってまずした事は、天空のうちにある自身の場を確認する作業であった。そしてそれがアートの起源でもあった。 新たなる命が再生される冬至、重要な折り返し点の夏至、通過点である春分と秋分。天空を測候する事にもう一度立ち戻ってみる、そこにこそかすかな未来へと通ずる糸口が開いているように私は思う。

この記事を書いている今の今まで、公式サイトのコンセプトを読んでいなかったことを思い出したが、「古代人の意識」、「天空」に目を向け、原点に立ち返るための「冬至」、「夏至」であったのか、なるほど。


「看板」

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海沿いの車道から急峻な坂を駆け上がると、江之浦測候所の青い看板が出迎えてくれる。


「夏至光遥拝100メートルギャラリー」

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ギャラリーも兼ねた100mの廊下。ギャラリーには、世界各国の海の写真(撮影:杉本博司氏)が飾られている。廊下の一側面を構成するガラス面には、庭園が写り込む。正面を向けば海が、横に目を移せば草木が目に飛び込んでくる。


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ギャラリーの反対側面は、大谷石の石垣である。1つ1つの石のざらつきと、タイルの滑らかな表面とのコントラストが効いている。


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ギャラリーの先端は、海に向かって空中にせり出した形になっている。ギャラリー内の進んでいくと、海と空が出迎えてくれる。


「冬至光遥拝隧道」

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冬至の日の出の方角に向かって開口する金属製のトンネル。トンネルの入り口からは薄っすらと光が見える。暗闇のトンネル内を進んでいくと、光が大きくなり、最後には海が出迎えてくれる。


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トンネルの出口は、これまた海に向かって空中にせり出している。江之浦測候所は、このような「空中にせり出す形」の設計が随所に盛り込まれていた。


「光学硝子舞台」

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冬至光遥拝隧道の脇には、ガラス製の舞台が置かれている。目の前を遮るものがないので、清水の舞台よりも恐怖心を煽られる。冬至光遥拝隧道の上も歩けるようになっている。「さぁ、空と海を感じてみろ」という強烈なメッセージが刺さる。


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ガラス製の舞台を支えるのは木材。ガラスの透明色と、木材の自然色が、いくつもの表情を感じさせる。


「止め石」

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江之浦測候所は、各所に立ち入り禁止区域が設定されている。立ち居入り禁止区域は、文字ではなく、石が教えてくれる。石はとても小さく、ついつい見逃してしまいがちだが、「自らの意思で止まれ、そして、そこですべてを味わってみろ」と語りかけてくる。



「鉄灯籠」

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鉄製の灯籠には、三日月型のスリットが空いている。スリットの反対側は格子になっているので、奥に広がる森林の落葉が透けて見える。


「数理模型0010」

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双曲線関数を具現化したオブジェクト。両側を木で囲まれたスポットに突如現れる造形物の先端は、空を指し示している。


(まとめ)

生まれて初めて、撮影目的で遠出をし、そこで撮った写真に不慣れなレタッチを施してウェブに公開した。どうやって見せるかを考えながら撮る写真は、たしかに、ただ記録するための行為ではなく、何かを表現するための所作なのだと感じた。

さて、次はどこを撮ろう。


江之浦測候所(公式サイト)

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