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映画ドラえもん 42作 振り返り


■まえがき

ドラ映画を1期から3期に分けて、鑑賞した。
その都度活躍度や好みをメモしてみた。
以下に42作まとめた表を示す。

自分で言っておきながら、活躍度って何よ。
と思わないでもないが、せっかくなのでいくつか所感を書いてみる。
今回は以下のような表記をする(「のび太」を省略)。

○1期
01 の恐竜
02 の宇宙開拓史
03 の大魔境
04 の海底鬼岩城
05 の魔界大冒険
06 の宇宙小戦争
07 と鉄人兵団
08 と竜の騎士
09 のパラレル西遊記
10 の日本誕生
11 とアニマル惑星
12 のドラビアンナイト
13 と雲の王国
14 とブリキの迷宮
15 と夢幻三剣士
16 の創世日記
17 と銀河超特急
18 のねじ巻き都市冒険記
○2期
19 の南海大冒険
20 の宇宙漂流記
21 のび太の太陽王伝説
22 と翼の勇者たち
23 とロボット王国
24 とふしぎ風使い
25 のワンニャン時空伝
○3期
26 の恐竜2006
27 の新魔界大冒険~7人の魔法使い~
28 と緑の巨人伝
29 新・の宇宙開拓史
30 の人魚大海戦
31 新・と鉄人兵団~はばたけ天使たち~
32 と奇跡の島
33 のひみつ道具博物館
34 新・の大魔境~ペコと5人の探検隊~
35 の宇宙英雄記
36 新・の日本誕生
37 の南極カチコチ大冒険
38 の宝島
39 の月面探査記
40 の新恐竜
41 の宇宙小戦争2021
42 と空の理想郷

■ドラ活躍作品 7作

○1期
13 と雲の王国
○2期
23 とロボット王国
25 のワンニャン時空伝
○3期
33 のひみつ道具博物館
36 新・の日本誕生
37 の南極カチコチ大冒険
42 と空の理想郷

「ドラえもん」の主役はドラなのかのびなのか論争は終わることはあるまいが、少なくとも映画作品においてはのびに譲った形。
そもそも「のび太の」何々、なのだから、ドラは後景化して然るべきなのだ。
そんな中でもドラが躍り出る作品はあり、そのどれもが個人的に好ましい。
特に「ワンニャン時空伝」は、大山ドララスト、芝山努ドララストで、チャンバラ! というド真ん中にして変化球。よかった。
わさドラの柔らかいドラ作画はあまり好きじゃないが、「ひみつ道具博物館」のドラを見ることができて、ドラ柔らか路線も悪くないと思えた。

■のび活躍作品 21作

○1期
01 の恐竜
02 の宇宙開拓史
05 の魔界大冒険
07 と鉄人兵団
09 のパラレル西遊記
10 の日本誕生
11 とアニマル惑星
13 と雲の王国
15 と夢幻三剣士
17 と銀河超特急
○2期
19 の南海大冒険
21 のび太の太陽王伝説
25 のワンニャン時空伝
○3期
26 の恐竜2006
27 の新魔界大冒険~7人の魔法使い~
29 新・の宇宙開拓史
31 新・と鉄人兵団~はばたけ天使たち~
33 のひみつ道具博物館
36 新・の日本誕生
37 の南極カチコチ大冒険
42 と空の理想郷

圧倒的主役感。
たまに存在感のない作品もあるが、おおむね座長の役割を果たしている。
気付いたのは、のび単独で輝くというより、のびー美夜子、のびーリルル、のびーティオ、のびーしず、のびードラ、など、他者との関係においてのびの魅力が発揮されるということ。
が、3期の涙鼻水垂れ流し路線は、あまり好きじゃない。

■しず活躍作品 13作

○1期
03 の大魔境
04 の海底鬼岩城
06 の宇宙小戦争
07 と鉄人兵団
12 のドラビアンナイト
15 と夢幻三剣士
○2期
なし
○3期
27 の新魔界大冒険~7人の魔法使い~
30 の人魚大海戦
31 新・と鉄人兵団~はばたけ天使たち~
34 新・の大魔境~ペコと5人の探検隊~
38 の宝島
39 の月面探査記
41 の宇宙小戦争2021

F先生が原作漫画シリーズにて、のびしずの関係を描写することに注力していたことは夙に知られている(ライバルとしての出木杉を登場させたことから遡及的に確定できる)し、「宇宙小戦争」の巨大しずを執拗に描き直したことからも、こだわりのキャラクターであることは間違いないが、
なんと2期では存在感を発揮しない(主観です)。
そこからまたも遡及的に考察するのだが、「夢幻三剣士」でのびしずを描き切ったのではないか。
興味深いのは3期においてしずが再度フィーチャーされるのは、百合的文脈において、ということだ。
大きなお友達となったアニオタへのサービスでもあるのか。

■ジャイ活躍作品 4作

○1期
03 の大魔境
○2期
19 の南海大冒険
24 とふしぎ風使い
○3期
34 新・の大魔境~ペコと5人の探検隊~

ジャイ映画だといい奴説は、巷間取り沙汰されること引きも切らない。
頂上は「大魔境」、そこからくだる勾配の8合目6合目などのポイントに各作品が位置するわけだが、取り上げたいのは「南海大冒険」。
映画ドラに限らず、おそらく全ドラ作品において、ジャイが異性に好かれたのは、唯一なのではないか。
似た人物構図と誤解されがちな「キテレツ大百科」の熊田薫は、ブタゴリラという酷い渾名を与っているにもかかわらず(アニメ版で)生来の親切性と勤勉性を発揮した結果、桜井妙子というガールフレンドを得たのに対し、ジャイは徹頭徹尾非モテキャラだったのだが、本作のベティはジャイの歌声に、素で聞き惚れる。
wikipediaの脚注に、〈映画ではうっとりした表情で「タケシの歌って素敵だね」と言うだけだが、原作ではジャイアンに抱きついて「感動した、しびれが止まらない」と泣きながら言う。〉とまで書いたウィキペディアンは、どこかしらジャイに入れ上げているのであろう。
原作漫画のジャイのTシャツに「レッド・ツェッペリン」と書かれていることから、アシスタントが好きだった説を越えて、実はジャイの歌って洋楽由来であって、ロックやメタルを聞き慣れていないのびたち観客の未成熟が原因で音痴という誹謗を被っているだけ説。
また、原作に「ロックはきらいなんだ。歌謡曲いれろ。」というジャイの言説もあるので、結論は出ない。
さらには空き地リサイタルゆえの音響設備の不備という説もあって、ジャイ歌については結論が出ないのだが、ベティがジャイの歌を気に入って「ここに残って一緒に海賊やろう」と誘うのは真実である。
ジャイが残れば、剛田商店のそばに(コストコっぽい)「スーパージャイアンズ」を展開する未来(「ドラミちゃん ミニドラSOS!!!」)もなかったわけだが、すべてを擲ってでもベティに突貫しなかったのは、ジャイの現代人的センスゆえか。

■スネ活躍作品 5作

○1期
06 の宇宙小戦争
08 と竜の騎士
○2期
24 とふしぎ風使い
○3期
39 の月面探査記
41 の宇宙小戦争2021

ドラメンバービッグ5の中で、個人的に一番面白みを感じるのが、スネ。
身体的貧弱さにおいてはのびとの対比、頭脳においては出木杉>しず>スネだろうけれども、出木杉が発端部にしか出られないために、そしてしずの頭脳は学校お勉強に費やされているために、ドラ映画的マニアックな雑学においてはスネの優位が目立つので、結果的に比較的頭のいいポジを獲得することになる。
が、スネの映画的美徳はバランス感覚にある。
世の人は、あるいは映画だからと気張っているドラメンバーその他4人は、臆病と謗るだろう。
しかし5人全員が勇猛果敢になっては、ドラマツルギーなど生まれ得ない。
スネは甘んじて臆病なストッパー役を演じることで、映画にダイナミズムを生み出しているのである。
原作漫画「動物型逃げ出し錠」で、カメレオン能力を得たのは、伊達や酔狂ではないのだ。

■ゲスト活躍作品 19作 ※3人に限定

○1期
02 の宇宙開拓史 ロップル/チャミー/ギラーミン
04 の海底鬼岩城 エル/水中バギー/ポセイドン
05 の魔界大冒険 美夜子/大魔王デマオン/メジューサ
07 と鉄人兵団 リルル/ザンダクロス=ジュド/ミクロス
09 のパラレル西遊記 リンレイ/三蔵法師/牛魔王
10 の日本誕生 ククル/不死身の精霊王ギガゾンビ/ツチダマ
12 のドラビアンナイト ミクジン/シンドバッド/奴隷商人アブジル
18 のねじ巻き都市冒険記 パカポコたち/種まく者/熊虎鬼五郎ら
○2期
20 の宇宙漂流記 リアン/フレイヤ/アンゴルモア
21 のび太の太陽王伝説 ティオ/ポポル/レディナ
24 とふしぎ風使い フー子/テムジン/フーガ
25 のワンニャン時空伝 イチ、ハチ/シャミー/ネコジャラ
○3期
27 の新魔界大冒険~7人の魔法使い~ 美夜子/メジューサ/デマオン
31 新・と鉄人兵団~はばたけ天使たち~ リルル/ピッポ=ザンダクロス。
33 のひみつ道具博物館 怪盗DX/クルト/ジンジャー
37 の南極カチコチ大冒険 カーラ/パオパオ/巨兵ブリザーガ
39 の月面探査記 ルカ/ムービットのノビット/ウサギ怪獣
41 の宇宙小戦争2021 パピ/姉ピイナ/ドラコルル

個人の感想を数値化して分析しているので牽強付会の感は否めないが、下に示す好みと、相関関係がありそう。
ゲストが活躍しているから好き、というよりは、作品全体の魅力がゲストの活躍を大きく見せているということではないか。

■ほとんどの人の活躍度が低い作品 4作

○1期
16 の創世日記
18 のねじ巻き都市冒険記
○3期
28 と緑の巨人伝
32 と奇跡の島

「緑の巨人伝」は好みもワーストだし、「奇跡の島」は単純にいまひとつだと思うが、「創生日記」と「ねじ巻き都市冒険記」は異様。
どちらもF先生の創生テーマで駆動していく話だが、ドラえもんという枠とはマッチしづらいのか。
ただし熊虎鬼五郎というやけくそなキャラクターは忘れがたい。

■好みについて

単純に、
1期はAが多い。
2期はBが多い。
3期はA、B、C入り乱れている。
1期は「日本誕生」までが脂ののった時期、後半は陰りが見えてくる。
というより、自分がドラから離れつつあった時期でもある。
2期は混迷。
3期は大人になってから冷静に見ているので、本当に出来不出来が激しいということではないか。
あるいはこういうのを老害というのか。

■好みAピックアップ

○1期
02 の宇宙開拓史
04 の海底鬼岩城
05 の魔界大冒険
06 の宇宙小戦争
07 と鉄人兵団
09 のパラレル西遊記
10 の日本誕生
13 と雲の王国
15 と夢幻三剣士
○2期
24 とふしぎ風使い
25 のワンニャン時空伝
○3期
27 の新魔界大冒険~7人の魔法使い~
31 新・と鉄人兵団~はばたけ天使たち~
33 のひみつ道具博物館
36 新・の日本誕生
37 の南極カチコチ大冒険
39 の月面探査記
41 の宇宙小戦争2021

この項は特に言うことなし。
1期の好みは身体に沁みついて憶えているので、2期3期の備忘録として。

■好みCピックアップ

○3期
28 と緑の巨人伝
29 新・の宇宙開拓史
30 の人魚大海戦
32 と奇跡の島
38 の宝島
40 の新恐竜

この項について詳述するとただの雑言になってしまうので、控える。

■あとがき

全作鑑賞して感じたのは、ドラ映画は一作ごとの良し悪しや好みだけでなく、アニメーションの歴史の中で意義を持つのではないかということ。
まず、絵柄の流行の変遷。
特に静香ちゃんの顔。
筆っぽい主線や、カラーコーディネートも。
次に、アニメ技術の向上と変質。
特にセルアニメが豪華で美麗になっていく過程が見られる。
またドラ映画はCG導入にも積極的で、アニメ業界に還元されているのではないかと勝手に推測している。
そして、作り手と視聴者の価値観の変容。
ポリコレ云々もそうだが、経済発展、バブル崩壊、低迷、さらに戦争、暴力、いじめといった概念へも。
ドラえもんはそもそもがスラップスティック日常SFの魅力もふんだんなので、ジャイアンのめり込みパンチは楽しみたいのだが、修正はあるだろう。
特に結論も考察もないのだが、いろいろ考えてみた。

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