柿村将彦

ファンタジーノベル大賞2017受賞 『隣のずこずこ』

柿村将彦

ファンタジーノベル大賞2017受賞 『隣のずこずこ』

最近の記事

メロンパン

 かれこれ十年ほど、私はメロンパンと絶縁関係にある。こっちから一方的に絶縁状をたたきつけたのだ。以来一度も口にしていない。  高校生だった頃のことだ。当時、私はメロンパンが大好きだった。安価の割に巨大なフォルム。馬鹿な舌でも喜ばせてくれるわかりやすい味。どれをとっても高校生にはぴったりだ。私はメロンパンが与えてくれる幸福に酔いしれ、またその優しさに甘えきっていた。  ある日、チャリを漕ぎながら、私は非常に空腹だった。昼飯を食べ損なったせいで、それこそ目眩がするような空腹を感

    • プロフィール画像について

       一年ちょっと前に撮った写真である。  場所は南長崎のあたり。なぜか不意にヌテラが食いたくなって、目白駅近くにあるスーパー目指してチャリをこいでいた途中のことだった。目白通りを東へ入った、両側に民家の裏口が並ぶ狭い道だった。  遠目にこれを見つけたとき、まず「猫か?」と思った。ちょうどそれくらいの大きさだったからだ。だが近づくにつれてだんだんそうでないことがわかってきた。「じゃあ犬か」。猫でなければ犬というのは我ながら短絡的だが、身近な哺乳類といえばそのくらいである。野良猫に

    メロンパン