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#日モヤ 執筆を支えた文章術 〜専門用語編〜

お久しぶりです。かきもちです。
8月末に単著を出させていただいてから、2ヶ月が経とうとしています。

(省略のため、以下では愛称の『日モヤ』とさせていただきます。)

おかげさまで高校生からシニアの方、科学関係者の方から科学はちょっとという方まで、広く読んでいただけているようです。ありがとうございます。

執筆中、あまり振り返りをしていなかったこともあり、この辺りで執筆に際して気をつけていたことなどをまとめてみようと思います。今回ご紹介するのは、専門用語を使うときに考えていたことです。

どうして専門用語を使うのか

日モヤには、「遺伝子組み換え」や「全数調査」「トランス・サイエンス問題」などの専門用語が出てきます。遺伝子組み換えは生命科学、全数調査は数学や統計学、トランス・サイエンス問題は科学コミュニケーションの専門用語です。

専門用語は、一般向けの科学書籍や新聞記事では敬遠されます。なぜなら、主な対象となる読者は専門用語の意味を調べなければ文章の内容がわからないと考えられるからです。文章の内容を理解するために、文を読むことにプラスして調べるという手間がかかります。

一方で専門用語は、読者にとって便利な検索ツールにもなり得ます。遺伝子組み換えの記事を読んで、もっと遺伝子組み換えのことを知りたいと思ったら「遺伝子組み換え」という用語で検索することができます。比喩や画像は理解には有用ですが、現状ではまだ、専門用語を知っていた方が知識を広げやすいでしょう。

というわけで日モヤでは、日モヤを起点として検索が広がるように、専門用語も入れて文章を構成しています。

どのように使うのか

さて、検索に便利というのはあくまで、その単語に興味をもった人にとっての利点です。突然脈絡なく知らない用語が出てきては、読者は白けてしまうでしょう。サイエンスに限らず、日頃のコミュニケーションも同様です。初対面の相手との雑談で、相手にしかわからない内輪ネタが始まるようなものです。(うっ頭が)

ですから、専門用語を出すときにはなんらかの形で説明が必要です。専門用語と説明をセットにする方法は、以下の2つに分けられます。

① 専門用語の直後にかんたんな説明を入れる(解説型)
② 一通り現象や概念を説明し、その専門用語名を述べる(名付け型)

①はオーソドックスなやり方です。先に専門用語を出し、後から定義や意味するところをかんたんに説明します。説明が抽象的になる場合には、その後に具体例や比喩、目的を補足し、イメージを捉えやすくします。

例えば日モヤ1章1節ではこのように説明しています。

食品添加物とは、食品を作る過程で食品の加工、保存などの目的で使用される物質のことです。見た目や香りをよくするもののほかに、食品の栄養が長く守られるようにするためや、食べやすく、飲み込みやすくするために使われます。

先に食品添加物の定義を述べ、後からその目的を補っています。パソコン関係でいうと、圧縮ファイルを解凍するイメージです。

出したい専門用語がキャッチーであったり、多少一般的であったりするときに特に有効です。難しい用語をあえて出して説明する文章が少ないから、こちらがオーソドックスなやり方としてよく使われるのでしょう。

それでは②も見てみましょう。

① 専門用語の直後にかんたんな説明を入れる(解説型)
② 一通り現象や概念を説明し、その専門用語名を述べる(名付け型)

②は理科の教科書的なやり方です。先に内容を説明し、後からそれを専門用語でまとめます。理科の教科書から用語の一覧を作ろうとすると、こういう書き方があることに気づきます。

例えば日モヤ3章6節ではこのように説明しています。

現代では、医学や科学技術の発達によって延命治療という治療の選択肢があります。科学的に患者に延命治療を施すことができたとしても、実際にそれを選ぶかどうかは医学や科学には決めることができません。医学や科学にも限界があるのです。こうした「科学に問うことができても、科学に答えることはできない問題」のことをトランス・サイエンス問題と呼びます。

先に具体例を出してイメージを演出してからそれに名前をつけています。パソコン関係でいうと、フォルダの内容を一瞥してフォルダを圧縮するイメージです。

イメージが先行するので、耳慣れない言葉が出てくるときに特に有効です。だから、理科の教科書はこうした書き方をするのでしょう。

まとめ

日モヤでは、専門用語の検索における便利さを評価して文中で専門用語を使用しています。ただし使用する際には説明とセットにし、読者の興味をそそるよう工夫することが必要です。

日モヤ執筆の際に、編集の方から「いい本はその一冊だけで完結する本である」と教えていただきました。説明を丁寧に、かつ簡潔に行うことでしっかりと情報を届け、さらなる読書や体験への起点となれるものを作りたいと思っています。

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