6月某日、二日酔い日誌
飲みすぎた日の翌朝は、なぜこんなにも世界が繊細なのだろう。
ビジネスホテルの浴室は薄暗く奇妙だったので、シャワーは浴びなかった。
ホテルを出ると、しんしんと降る雨がしっとりとした涼しさを生み出していて、雨も悪くないな、と思わせる。傘を持っていくのはめんどうくさいけれど。
駅に向かってとぼとぼ歩き、残高不足で改札に引っかかる。その度に「早くオートチャージの手続きをしなきゃ」とぼんやり考える。多分、今日もやらない。
昨日喜んで大量摂取したワイン達が私の体内を駆け巡って苦しめる。しかも昨日は、一度だけ日本酒くんに浮気をした。回数の問題ではない、一度だって浮気は許されることはないんだと、後悔の波が私を押し寄せる。バチが当たったのだ。
足元に気をつけながら階段を降りると、さっきまで気持ち良いと感じていた涼しさも寒さに変わった。ホームの柱で風を凌ぎながら、下りの電車を待つ。
電車に乗る。
希望していたはじっこの席に座れなかった。
今この電車に乗っている人の中で絶対私が一番体調悪いし、この電車の中で絶対私が一番はじっこに座りたいって思っている自信があった。だんだんはじっこへの愛が憎しみに変わり、はじっこに座っている人たちを恨んだ。
念が通じたのか、あるはじっこの民の一人は次に到着した駅で降りて行った。はじを狙ってたんだなと、周りの人に思われたくないので、あえてゆっくりと移動する。だがわざわざはじの席に移動している時点で、きっと気づかれているだろう。
iphoneの電池が4%からいつのまにか0%になり、そして消えた。
画面越しに映る自分の顔を見て、「今私、顔も心もめちゃくちゃブスだな」と悟る。電車に揺られる感覚が、余計に気持ち悪さを倍増させて吐きそうになる。早く着かないかなぁ、と、それしか考えられなかった。
自宅に着くと、絶対太ったはずなのに体調が悪いせいで痩せたように感じる。
げっそりした状態でシャワーを浴び、ラーメンを食べるか食べないかギリギリまで悩んで、結局眠りについた。
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