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【評価・感想】GTA6開発元がかつて手掛けた『マンハント(Manhunt)』レビュー

『Manhunt』は、2003年に発売された「Manhunt」シリーズの一作目です。「Grand Theft Auto」シリーズの開発元として知られる「Rockstar North」が手掛けたステルスアクションゲームです。

ストーリー:謎の人物により、Carcer Cityに解き放たれた死刑囚の主人公。その人物は、人質として囚えている主人公の家族の解放を条件に、主人公にスナッフフィルムの撮影に協力するよう求める。

本当の意味で”暴力的なゲーム”

2001年に発売された『Grand Theft Auto III』。
”現実世界をモデルにしたリアルな仮想空間で、好き勝手に遊んで良い”という自由を実現したこのゲームは、多くのゲーマーを虜にし、世界的な大ヒットへと繋がりました。
しかし、その内容ゆえに、ゲームが持つ暴力的な側面に批判的な声が集まってしまい、以降、GTAにおける暴力的な表現の是非は、ホットなテーマになってしまいました。

GTAの暴力的な表現が問題視される中、ある意味、”Rockstarなりの回答”とも言える形で登場したのが、今回取り上げる『Manhunt』です。

『Manhunt』は、GTAの暴力的な部分をじっくり煮詰めたようなゲームです。
本作は、「出来る限り残虐な方法で敵を処刑して、ハイスコアを狙う」ことが目標のゲームになっており、暴力から逃れることはできません。
GTAでは、ストーリーを進めなくても、ただ車を運転する、街を観光すると言った楽しみ方ができましたが、本作の場合は、あえて言えば、そうした逃げ道が存在せず、ストレートに暴力的なゲームになっていると言えます。

その上で、本作は避けては通れない暴力を、(当時としては)強烈な描写で表現しており、その執拗とも言える暴力への拘りが、このゲームを特徴付ける要素になっています。
敵にヘッドショットを決めた際は、何やら見えてはいけないものが見えますし、周囲に飛び散る血痕も、ゲームっぽい真っ赤な血の色ではありません。また、ステルスキル(処刑)時は、手に持った武器を器用に使った”クリエイティブ”なキルを何通りも見ることができ、その確実に敵を仕留める攻撃の数々が強烈な存在感を放っています。

本作では、暴力を避けられないものとし、その暴力を徹底的に描いています。Rockstar Games作品ならではの丹念な仕事が、本作では暴力的な表現の面で発揮されており、飾り気のない暴力性がゲーム全体を覆っています。

イージーなステルス、ハードなアクション

プレイ部分に絞って書くと、本作は、ステージクリア型のゲームです。
Carcer Cityと呼ばれるイカれた都市が舞台になり、その中にある墓地や刑務所、地下鉄の駅などがステージになっています。各ステージは、ほとんど一本道な作りですが、複数のルートが用意されていたり、エリア内を探索することができたりなど、少しだけ広がりがある点が特徴です。

また、ジャンルとしては、ステルスアクションゲームです。
発見されると、そのまま倒されてゲームオーバーになるほど難しくはないのですが、相手が複数だったり、銃を持っていたりすると、かなり厳しい戦いになるので、基本的には、ひっそりと行動することになります。
そのステルスプレイは、そこまで難しくありません。暗闇にいれば敵に発見されないことを利用して、わざと音を立てて敵を誘導して、やってきた敵を順番に片付けていくだけで、そのエリアを制圧できてしまうくらい簡単です。
敵をステルスキルする際、敵を長くロックオンすることで、もっとも残虐な方法で処刑できるのですが、そのために待っている時間が、本作のステルスプレイで、一番スリルを感じた瞬間でした。
あくまでも、ゲームの目的は敵を処刑することなので、簡単に敵を誘き寄せられるようになっているのだと思います。そうしたゲームなので、ステルスゲームとしては、かなり割り切った作りをしています。

ゲームの後半は、敵との撃ち合いが増えてきて、もっぱらTPSと言える状況になってきます。
まず、TPSとしては、2003年発売ですが、肩越し視点やカバーシステムなど、今のTPSと非常によく似た作りをしており、本作でも、カバーを上手く使って敵と戦っていきます。
ただ、ステルスプレイとは異なり、撃ち合いは難しい方であり、ここはサバイバルホラー的であり、古の洋ゲー的なバランスです。
全体的に被弾ダメージは高めで、身を隠して、しっかり狙い撃つことが生き抜く上で重要です。終盤になると、重武装の敵がまとまって出て来るため、地形や行動パターンを考慮して、賢く立ち回る必要も出て来ます。また、一度に所持できる武器には制限があるため、状況に合わせた銃の選択と使い分けも意識させられます。本格的なサバイバルホラーと比べると、甘いバランスではありますが、程よく締まったサバイバル感を楽しむことができるゲームになっています。
それとは別に、古の洋ゲーっぽさ全開のゲームでもあります。
前半とは異なり、後半は、初見泣かせな敵の配置が目に付き、何度かやり直してパターンを覚えて対処するという遊び方になりがちで、覚えゲー的な側面が強くなります。特に銃撃戦では、進行ルートを誤ると瞬殺されます。そうしたゲームですが、セーブはひとステージ内で2,3回しかできないため、場合によって、また長い戦闘をやり直すこともあり、かなり根気よく遊ばないといけません。
個人的には、銃撃戦には緊張感があり、慎重にクリアリングして進んでいくのが面白いと思いましたが、それにしてもシビアな銃撃戦になっています。

ゲームとしては、ロケーションが多彩で、最後まで遊ぶと「Carcer Cityとはどんな街か?」が分かるようになっている点は非常に良いですし、肝心のプレイ部分も手堅い作りで、初見泣かせな部分を考慮しても、しっかりした出来で、良いゲームです。

あと、書ききれなかったのでここに書きますが、「敵を処刑する理由は”撮影”のため」「ロケーションがコロコロ変わるのは様々なシチュエーションで”撮影”するため」というように、ストーリーとゲームプレイに一貫性があり、非常に完成されたフォーマットが存在することも、本作の優れた点として挙げておきたいです。

総評

本作は、堅実なステルスアクションゲームです。
このゲームは、暴力的な部分がよく話題に上がるため、暴力的なゲームの文脈で語られることが多いですが、意外にも(?)、ステルスやアクションの完成度が高く、ステルスアクションゲームとしても、十分楽しめるゲームになっていました。

本作は、Rockstar Gamesのもう一つの名作です。

Rockstar Gamesネタも見所?

同じくRockstar Gamesの『Max Payne 3』で主人公が着ていたアロハシャツによく似ている…

『Manhunt』は、Rockstar Games作品やGTAを遊んだことがあれば、色々と発見があるゲームです。

例えば、GTAと同じ世界(※GTA3~GTA VCSまでの3D Universe)を共有しているので、GTAに登場するブランドがこちらの世界にも存在します。
それ以外にも「GTASAのステルスミッションは、Manhuntのものが流用されていたんだな」とか「このステージはGTA4のあるミッションとほとんど同じだな」とか、そういう発見もあります。あと、これは偶然の一致なのか、それとも参照元になるのか、一部の敵の服装が『Max Payne 3』のMaxのそれとほとんど同じデザインだったりもします。

Rockstar Games作品を遊んだことがあると、そうした楽しみ方ができるゲームです。

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