#9ぶどう山椒の夜明け「研究分野から農業の発展を目指す」

古来、山椒は薬として利用されてきました。
その辛味成分「サンショオール」の機能性成分を研究しているのが和歌山大学の三谷隆彦客員教授です。三谷先生はすでに山椒の塩味増強作用について研究されており、現在は商品化に向けてサンショオールを安定化させる研究に注力されています。

三谷先生は長年、梅ポリフェノールの研究をしていました。山椒の存在は知っていたものの、特別な関心は持っていなかったのだとか。ところが、ある山椒取扱業者との出会いをきっかけに、山椒の文献を調べると、薬理成分を豊富に含有していることがわかり、「単に香辛料として留めるにはもったいない産物だ」と、大きな可能性を感じたそうです。

山椒と向きあった三谷先生ですが、研究当初は苦労が絶えなかったと当時を振り返ります。和歌山県は全国6割の山椒生産量を誇りますが、生産状況と裏腹に基礎的な成分研究がほとんどなされていなかったそうです。そのため、基礎研究に多くの時間を割くことになりました。また、毎年の研究費を確保することが難しく、協力者からの支援を受けるなどして、なんとか継続してこられました。

多くの苦労がありながらも、研究は今年で8年目となり、サンショオールを安定化させる技術を確立しつつあります。実用化できると、山椒特有の辛味や香りをより長く保つことができ、商品バリエーションの広がりが期待できるため、医薬品への展開も考えられるのだとか。三谷先生は「この研究が和歌山の農業発展につながれば」と語ってくれました。

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