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【初心者向けミリタリー】戦車の歴史あらかると/Panzer022【AMX30戦車】

(全2,222文字)
皆さんこんにちは。
毎週木曜日は、かけうどんの趣味の軍事・ミリタリーに関連する記事を投稿する日にしています。

この『歴代戦車あらかると』シリーズでは、世界各国の歴代戦車を”単品”で取り上げてみたいと思います。

今回はフランス製主力戦車『AMX30』について書きたいと思います。

過去のミリタリー関連記事はこちらのマガジンにまとめています。

【AMX30戦車】


1.概要

AMX30戦車は、フランスのイシー・レ・ムリノー工廠(AMX)で開発された第2世代の主力戦車です。

1959年、試作車設計開始
1960年、プロトタイプ完成
1963年、正式採用

財政難などを理由に1965年以降に量産化にこぎつけ、1974年までの間、製造が続けられました。

フランスでは、戦車開発の技術やノウハウが、第2次世界大戦開始早々にドイツの占領下になってしまったことによって、その多くが失われました。第2次世界大戦後、フランス軍は、戦時中に米国から供与されたM4シャーマン戦車や、戦後供与されたM47パットン、ドイツ軍から鹵獲したパンター戦車などを一時的に運用していたこともあります。

戦後それらの装備は時代の流れに追い付けませんので、おのずと自国での戦車開発を再始動することになります。

そんな折、西ドイツも新型戦車を開発しようとしていた時期でもあり、1957年に両国の間で共同開発の話が持ち上がります。『標準戦車計画』としてスタートし、フランスとドイツ両国の要求仕様にもとづいて、それぞれの国で戦車を開発し、試験結果から良い案のほうを両国で採用しようといった計画でした。最終的に計画は白紙となり、フランスはAMX30を、ドイツはレオパルト(1)を採用することになります。

NATO標準規格の戦車は、ほぼレオパルトにゆずってはいますが、AMX30を採用している陸軍は存在し、スペインでライセンス生産されているほか、ギリシャ、キプロス、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、ベネズエラなどに輸出されています。

2.構造・機能など

(1)構造機能

AMX30の特徴的な外観の一つに、戦車長用の展望塔が独特な形状をしています。これは、敵を発見するための機能を重視したつくりになっているからと言われてもいます。

戦車と言う兵器は、敵に発見されにくいことが被弾率を下げますので、つとめて車高を低く設計するのがセオリーとなっています。ですがこれは、視察装置なども同じく低くなってしまうことから、敵を発見しにくくなってしまうというデメリットも生じたりします。

(2)火力など

NATOの主力戦車の多くが英国製L7A1/105mm戦車砲を装備していたのですが、本車は同じ105mm級でも、(*)フランス製のオリジナル戦車砲を搭載しています。

(*:『G弾』と言う特殊なHEAT弾を使用するために開発)

非常に高火力だったのですが、砲弾1発あたりのコストが高く、ライフル砲で射出しても旋回しない仕組みの分、砲弾の直径が小さくなると言う本末転倒なことになってしまい、後に専用のAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)も開発されています。

この戦車砲のユニークな仕様に、エアーコンプレッサーを用いた排煙装置があります。通常、戦車は射撃直後に砲身内部に有毒な火薬の発射ガスが充満するのですが、これが戦闘室内に逆流すると乗員にダメージを与えてしまいます。このため、エバキュレーター/排煙装置というものが設置されるのが一般的でした。AMX30の排煙装置は、これを圧縮空気で強制的に砲身外部に吐き出させるというものでした。

(3)機動力

今では一般的になっている水平対向エンジンですが、この戦車のエンジンも水平対向エンジンを採用しています。敵に発見されないよう、また、被弾面積をできるだけ小さくするため、車体の高さを低く設計するために採用したと思われます。

フランス国産のイスパノ・スイザ液冷多燃料ディーゼル12気筒エンジン。初期型の馬力は680hp。AMX30B2型は約700hpに性能向上。

3.運用実績・近代化改修

過去記事と重複しますので、あえて細かくは書きませんが、中東戦争をはじめとした世界各国の戦争・紛争地帯で、本車は実戦に投入されています。ここでは、近代化改修の内容について、いくつか説明しておきます。

【AMX-30B2】

1982年から配備開始。166両が新規生産されているほか、既存車両のうち、約500両弱がB2仕様にアップデートされています。

○主砲同軸12.7mm重機関銃を対空用20mm機関砲に換装
○射撃統制装置を新型に更新
○エンジン・トランスミッション等を交換、馬力が約700hpに向上
○NBC防護装置を強化
○白色光/赤外線サーチライトを抵光量TVカメラに変更
○アクティブ赤外線暗視装置から、熱感知方式のパッシブ暗視装置へ交換
○1990年代中半、第7機甲師団内の3コ戦車連隊のみ、ERA/爆発反応装甲を装着(通称『ブレニュス』)

4.最後に…

フランスとドイツ。第二次世界大戦まで、ずっと敵対してきた国同士が手に手をとって主力戦車を共同開発する。長い歴史の中で多くの戦争を体験してきた、欧州ならではの話なのかなと、個人的には思えなくもありません。

毎度のことながら、なにしろ素人が書いている記事です。諸所分かりにくいところもあるかと思いますがどうかご容赦ください。

最後まで読んで頂いて、ありがとうございました。

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