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【初心者向けミリタリー】戦車の歴史あらかると/Panzer021【BMPT戦闘車】

(全3,333文字)
皆さんこんにちは。

毎週木曜日は、かけうどんの趣味の『軍事・ミリタリー』に関連する記事を投稿する日にしています。

この『歴代戦車あらかると』シリーズでは、世界各国の歴代戦車(等)”単品”で取り上げてみたいと思います。

今回は露製の『BMPT戦闘車』について書きたいと思います。

(本日のネタは正式な主力戦車ではなく、装甲戦闘車両になります。)

過去のミリタリー関連記事はこちらのマガジンにまとめています。

【BMPT戦闘車/テルミナートル】


1.概要/誕生の経緯など

BMPT/テルミナートルは、『戦闘支援車両』のロシア語読みの頭文字をとったもので、英語だと『ターミネーター』となります。T-72戦車の車体をベースにつくられた本車は、対歩兵戦闘用に開発されたもので、対人戦闘をメインに考えられた装備がふんだんに搭載された「戦車支援用戦闘車両」と言う比較的新しいカテゴリーに属する兵器です。(現段階でこの区分に該当するものは本車のみ)

第1次チェチェン紛争の教訓から、市街地での戦車の脆弱性があらわとなり、その結果として導きだされたのが、本車BMPTの運用コンセプトになります。

市街地は高層ビルを含めた様々な建物が密集しています。

よって、市街地戦闘では、その立体的な環境の影響を受けることから、地上部隊は前後左右だけでなく、上下方向にも連携力が分断されることになり、『互いの死角をカバーしながら前進する』と言う『陸軍本来の戦い方』に環境的に適しません。

現代戦では市街地を避ける訳には行きません。陸戦ではエリア制圧には欠かせない歩兵戦力と、その歩兵の天敵となる戦車/装甲戦闘車部隊をいかにして有機的に連携させるかが難しい課題にもなっていました。

戦車は文字通り、『陸戦の王者』なのですが、そんな戦車の泣き所は、近距離から不意に襲ってくる敵歩兵の対戦車火器には意外ともろい。というのが、これまでの近代戦史でわかっています。

本来、戦車の近くには友軍の歩兵が展開していて、敵兵が対戦車火器を撃ち込めるチャンスはそんなには無いともされてきましたが、前述した市街地戦闘という特殊な環境では、なかなかそう思った通りにもいかなかったのが事実。多くの戦車がビルの上から撃たれたRPGなどに泣き所となる砲塔上面の装甲が薄い弱点を突かれて撃破される例が少なくありませんでした。

市街地で敵歩兵がビルの上などの比較的高い位置に潜んでいるのが分かっていても、戦車という兵器は、砲身をそんなに高い位置を狙えるほどの角度をとることができません。戦車に随伴して、その死角をカバーすべきポジションにあるはずの歩兵戦闘車も同様の機械的構造の限界をもっていましたし、下車展開した歩兵は生身なので防護力が戦車とは釣り合いません。

そこで注目されたのが、本来、対空戦闘に用いられる『AWSP/自走高射機関砲』。実際に紛争でその有効性も確認されています。

代表的な自走高射機関砲
ZSU-23-4
23mm対空機関砲4連装
弾丸威力もさることながら
高射角射撃が可能なため市街地戦闘では有効とされた

ただし、この自走高射機関砲は、本来対空用につかうためのものでしたので、近接戦闘にはどうしても向きません。戦闘機や戦闘ヘリ相手には無双できますが、地上戦闘部隊との直接の接近戦にはやはり限界がありました。

このような流れから、戦車に随伴できる機動力と防護力をもち、戦車の死角をカバーできる歩兵制圧能力の高い火力をもった戦闘車両の必要性が明らかとなります。そして誕生したのが、戦車でもない、歩兵戦闘車でもない、BMPTと言う全く新しい概念の運用構想のもとに設計された戦闘車両でした。

2.構造・機能など

(1)構造機能

基本的に、車体は既存のT-72/90戦車のもの、その上に新規設計の無人砲塔を搭載しています。

当初は、車長、操縦手、機関砲等のウェポンシステムを取り扱う照準手・兼・砲手、索敵とグレネードランチャーを操作する2名の、合計5人乗りとされていました。

BMPT-72型(T72改造モデル型)では、T72戦車の車体をそのまま流用する関係上、グレネードランチャーと2名の索敵要員がオミットされ、3人乗りに変更されています。

本車には索敵用の各種センサー類が複数搭載されており、本車の使用目的に合った情報収集能力が付与されています。

また、主力戦車並みの火器管制システムを搭載しており、高い行進間射撃が可能で、兵器ショーでのデモでは砲塔を一定の方向に照準したまま超信地旋回(車体を同じ位置にキープしたまま左右のキャタピラを逆回転させて方向変換する操作)をするなど、高い射撃能力があることをアピールしています。

戦車に随伴して火力支援を行うという役割から、敵歩兵が持つ対戦車火器に照準させるいとまを与えずに反撃する必要があることから、このような性能が必要だったのではないかと個人的には思います。

(2)火力など

無人砲塔に2連装2A42/30mm機関砲を搭載。その基部に7.62mmPKT機関銃を同軸装備。砲塔左右に2基づつ9M120アタカ対戦車ミサイルを搭載。たいへん重武装ですが、いずれの兵装も射撃角度を大きく上向きにすることができ、市街地戦闘を意識した性能を持ちます。

対戦車ミサイルは通常のHEAT弾のほか、サーモバリック弾(金属粉末を一瞬で高温燃焼させる、対人殺傷効果が非常に高い弾頭)も使用可能とされ、対戦車戦闘よりも対人制圧能力を重視していることがわかります。

砲塔後部の車体に直接360度全周方向への旋回が可能な複合型視察装置が装着されており、索敵と同時に兵装の照準やミサイルの誘導が可能。砲塔前部左側にも同様に固定式複合サイトが装着されています。

その他、戦闘車両には必須の発煙弾発射機も当然ながら搭載しています。

(3)機動・防護力

ベースとなるT-72/90戦車と同等の機動力があると推測されますので、機甲部隊への随伴には問題ないものと考えられます。

車体前面に増加装甲が装着されており、側面にはT90のゴム製のものとは異なり、装甲板型のサイドスカートが装備されています。

ビジュアル的に顕著なのが、車体後面に対HEAT弾用のスラットアーマーが装着されています。尚、これらの上からERAの増加装甲の追加装備が可能とされています。

戦車の支援戦闘を行うという性格から、対戦車火器に使用される各種レーザーを感知・警告するセンサーも複数装着しています。

3.運用実績など

市街地戦闘などで、戦車2両に対してBMPT1両が随伴して運用されるのが基本的なパッケージ。優秀な索敵用センサーを複数装備しているので、従来の戦車や歩兵戦闘車では泣き所だった、近距離からの不意急襲的な敵対戦車火器による攻撃に十分対応する能力をもつとされます。
夜間暗視能力が通常の戦車よりも高く、周囲すべてに睨みが効くのが特徴。

ロシア陸軍では、機甲部隊に装備される主力戦車と混合運用することを前提としており、2010年頃からの配備を予定していましたが、諸事情により配備計画が中止されています。

2017年、BMPT-2がシリアの内戦地域に投入された実績があり、ロシア軍における再評価の末、同年採用がふたたび決定されてもいます。

(ウ戦における情報は不確定なものが多いため割愛)

4.最後に…

戦術の変化によって新しい兵器が誕生した例は過去にたくさんありました。

BMPTはその中でも近代戦史の中で登場した比較的新しいものですが、この兵器のことを書く前にAPC(装甲人員輸送車)や、FV・ICV(歩兵戦闘車)などを先に整理した方が良かったかも知れません。

WW2後の第1世代~第3世代までの世界各国の戦車ラインナップももうすぐ埋まりそうですので、合間に戦車以外の、その他の兵器に関する記事をちょいちょい挟むかも知れません。

それはそうと、このシリーズをやってて、いつも思うのですが……


更新のネタに困ることがほぼ無いので大変助かります(笑)


毎度のことながら、なにしろ素人が書いている記事です。諸所分かりにくいところもあるかと思いますがどうかご容赦ください。

最後まで読んで頂いて、ありがとうございました。

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